浦原喜助の兄に転生して夜一の許嫁にされた俺の話   作:ちーむ

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白哉坊ちゃんと緋真ちゃんの話

 

あれから更に数年経った。

 

「おーす、白哉坊ちゃん元気?」

「お師匠…坊ちゃん呼びはあれほど……」

 

「いや、ごめんごめん。」

素振りしてた白哉坊ちゃんが俺に気づいてムッとした表情をする、坊ちゃん呼びはお気に召さないらしい。

 

白哉坊ちゃんの父親が殉職し、彼が現当主となり副隊長になった。

あんなに小さかった白哉坊ちゃんも今ではこんな青年に。

 

熱くなりやすい性格は変わらないが、彼の父親が死んでからあまり表情を表に出さなくなったような気もする。

 

「お師匠。少し相談が…」

 

「……?」

 

相談とは珍しい…俺は坊ちゃんの後をついていき。着たのは朽木家。

 

「こちら、私の婚約者の……」

っと女の子の肩に手を乗せる坊ちゃん。

「ひ、 緋真(ひさな)です!あっ…えっと…その、婚約者です…?」

っと顔を赤くする緋真ちゃん

 

「こ……婚約者ァァ!?

 

つい大きな声を出してしまい咄嗟に自分の口を塞ぐ

 

い、いつの間に婚約者なんて…!?

2人寄り添ってそりゃお似合いだけども…!

 

「そ、それで相談って…?」

 

って切り出すと、眉を下げた緋真ちゃんがおずおずと言った感じで。

「じ、実は私は…流魂街出身で…その…お師匠様はどう思われますか…?」

っと不安そうな顔。

 

白哉坊ちゃんが俺に耳打ちしてきた

「実は、お師匠様が特別講師として忙しくしていらしたので中々お話できなく…」

つまり、まとめると俺が講師して忙しくしてる間に白哉坊ちゃんは流魂街で緋真ちゃんと出会い一目惚れ、是非妻へ!っと求婚し婚約して…。

だがお遊びではなく本気でしかも五大貴族の朽木家の妻となる。

周りの貴族からは「流魂街の住民など…」っと険悪な目で見られているという。

 

それで自信がなくなってしまった緋真ちゃんを心配した坊ちゃんは上級貴族であって信用ができる俺に話し意見を聞いてみようと。

 

「なるほどね、確かに貴族ってそういうのめんどくさいよな。白哉坊ちゃんは当主になったばかりだし、いきなり流魂街の婚約者連れてきましたーって言ったら周りも困惑する。」

 

「そう…ですよね」

っと悲しそうな顔をする緋真ちゃん

 

「あぁ、勘違いしないで?俺は反対側じゃないから。俺は信用と気持ちがあれば結婚出来ると思うよ」

 

「信用……」

「気持ち」

っと繰り返す緋真ちゃんと坊ちゃん。

 

「そう、昔から育ってきたとはいえ当主になったばっかりの白哉坊ちゃんはまだ貴族らに信用があまりない、まずは信用を作る。

そして同じく結婚の意思も伝え続ける。必ず反対派ってのはどこにもいるものなんだ。まずは周りを納得させる、無理に結婚したとして緋真ちゃんへの当たりは変わらないと思う、それか益々強くなる。うーん…ちょっと結婚とは違う例え話だけど。」

 

っと言うと2人して首を傾げる

 

「こういうの俺説明苦手だけど…ぽっと出のヒョロ細の死神がいきなり隊長やります!しかもそいつは呑んでばっかで遊び歩いてます!って言われていい印象ないだろ?

でも実は実力があって仕事もちゃんとやってから遊んでる。

そういうのって話だけ聞くと印象悪いけど、きちんと絡んできちんと相手を知ってさ。

あぁ、この人なら仕事なんでも任せれるし遊んでてもちゃんとしてる人だから大丈夫って周りから信用ができるんだ。

だからそうやって白哉坊ちゃんも緋真ちゃんも認めさせてあげなよ。

流魂街出身が嫌われる理由って学が無いって言われてるのと常識がないと思われてるのもあって良い印象が無いからなんだ」

 

まぁ霊力うんぬんもあるけど…

 

「だから緋真ちゃんはそこら辺の奴らとは違うってのを見せつけてあげな、白哉坊ちゃんは当主として周りの外堀を埋めていく。そうして結婚すればいいんじゃないかな。」

 

っと励まして上げると、パァァァっと顔を明るくした2人

 

「わ、わかりました…私頑張ります…!」

っと拳を握って意気込む緋真ちゃん。

 

「もし朽木家の使用人が嫌がらせしてくるとかそういうのあったら俺が信用してる家庭教師がいるから、その人から芸や作法を学ぶといいよ。俺が紹介してやる」

 

「ほ、本当ですか?」

その感じだと嫌がらせされてるのか。

 

「お師匠、是非お願いいたします」

っと、白哉坊ちゃんと緋真ちゃんが外堀を埋めていくのを見守ることになった。

 

 

あれから数ヶ月、緋真ちゃんはあまり体が強い方じゃないけど自分の体に相談しながら作法や貴族の常識を学んだ、挨拶は誰からするとか、箸の使い方とか姿勢とか。

白哉坊ちゃんは白哉坊ちゃんで父親の仕事をきちんと引き継ぎ周りの貴族からは賞賛の声が上がるぐらいに当主らしくなった。

 

 

「白哉様と緋真様がいれば安泰だな…… 蒼純様*1が亡くなった時はどうなる事かと……」

「そうだよな、わけも分からない女を連れて結婚すると言った時はもう終わりか……と思ったが、緋真様も貴族じゃないのがおかしいぐらいに良いお方だ」

 

という、朽木家に献上している貴族からの声が多くなった。

何より何より。

 

 

───そして今日また遊びに来た時に別の相談があると呼ばれたのだ。

「あ、あの浦原様が指揮する隊は流魂街にも行く事があると伺いました」

 

「うん、そうだな俺の隊は流魂街の虚討伐もやってるし」

 

「実は……」

 

緋真ちゃんが話した訳は、数年前に貧しさから赤ん坊であった実の妹を置き去りしていて、たまに探しに行ってるのだが見つからないという。

もし見かけたら教えて欲しいという話だった。

 

「うん、わかった見つけたら報告する。それに探しに行ってるって……流魂街は虚が出やすい、霊力のあるあんたは格好の餌だろうよ。不安なのはわかるが命を大切に。」っと軽く注意する。

 

あまり期待はしないようにと前置きして、教えてくれた場所にドローンを多く導入した。

 

 

そして___

 

「おめでとう、緋真ちゃん、白哉坊ちゃん」

 

「ありがとうございます、浦原様……!」

 

「お師匠のおかげです」

───2人はついに結婚した。

 

周りも厳しい声から祝福する声に変わり、白哉坊ちゃんと緋真ちゃんはちゃんと外堀を埋めることに成功したのだ。

 

 

夫婦の誓いを意味する 三献の儀(さんこんのぎ)が行われてるのを会場から離れた場所で見守る俺。

 

白哉坊ちゃんも緋真ちゃんも幸せそうだ。

 

俺はついつい伝令神機を取りだしてある場所に掛けた

 

プルルル

ピッ

 

つい、無意識というか、掛けちゃってなんだけどワン切りみたいに切ってしまった……

その瞬間__

 

プルルル

っと折り返し電話がかかってきて頭を抱えた。

仕方なく出る

ピッ

 

「あー、もしもし?あー……その間違えたというか」

 

”『んなわけないでしょう、何用ッスか?兄サン』”

っと、数十年会っていないが定期的に連絡してる喜助

 

「いやぁ……白哉坊ちゃん今日結婚したんだよ」

 

”『そうなんスか?朽木サンが……いやぁ夜一サン驚かれるでしょうね』”

 

「あぁ……あんなに小さかったのにな…んで…その」

 

”『……夜一サンは元気ッスよ』”

っと俺の聞きたいことを先に言ってしまった喜助につい苦笑いしてしまう。

分かってたのか

 

「よかった、夜一さんは相変わらず散歩か?」

 

”『えぇ、最近は現世の街並みを見るのが好きみたいで1度出かけたら数日は帰ってきませんよ、よっぽど楽しいんでしょうね』”

 

「はは、自由で夜一さんらしいや。喜助も元気か?無茶してないか?」

 

”『大丈夫ッスよ、あの件もなんとかなりましたし、店も構えられて兄サンの仕送りのおかげで生活も安定してきましたし』”

 

「そりゃよかった、また何か欲しいもんあったら言えよ。」

 

そう言って切る。

元気なら何よりだ。

 

*1
白哉の父親


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