「砕蜂」
必死に刀を振るう彼女に話しかける。
だが、気づかない。
ガッっと音を立てて的が半分に切れる。
「だめだ……これでは……これでは……」
っと一人で呟く
彼女は副隊長に昇進させた。
だがそれから責任感なのか、何かほかにあるのか一人で鍛錬し続け顔はやつれてきている。
「砕蜂」
もう一度声をかけるとようやくこちらを振り向いて慌ただしく姿勢を正す。
「もう夜遅い、明日も早いだろう?」
「そう……ですね。」
っと視線を逸らす彼女。
「…………」
「…………」
しばらく無言の時間が続いたが、砕蜂が口を開いた
「……維助様は……どうして夜一様…、いいえ、元軍団長を許せるのですか?」
「許す?」
「維助様を……地位を捨て逃げた方です」
「いやそれは……」
違うと言おうとしたが砕蜂が遮った
「違わないです!維助様が……幼い頃から維助様が元軍団長の為に当主となるのを応援し続け、夕寝様がお亡くなりになった時も支え……。なのに、その地位を維助様の弟君のために簡単に捨て去った!!維助様の気持ちも知らずに……!!!」
「違う、違うんだよ……砕蜂。」
違うんだと、全てを話してしまいたかった。
けれどそれは出来ない。
俺は泣き崩れる砕蜂を抱きしめることしか出来なかった__。
───────────
「ダメだな……俺」
精神的には強い方だが、たまに寂しく思う
自分で突き放しといて女々しいやつだ……俺は。
砕蜂も砕蜂で可哀想だ、俺がいなかったら彼女はどうしていただろうか……でも彼女は心の芯は強い。きっと傷は残れど立ち直ると思う。
俺がしっかりしないと__部下が、彼女が道に迷ってしまう。
「よし、こういうどんよりした気分の時は機械いじるに限る」
伝令神機の新しい機種と、新しい機械の制作に取り掛かる。
「……様」
……
「維助様!」
「うわっ!」
大きな声が聞こえて振り向くと砕蜂が頬を膨らませて仁王立ちしてた。
「なんだよ砕蜂か、驚かすなよ……」
「驚かしてなどおりませぬ!何度お声掛けしても反応がないのでどうなされたのかと……!」
「なんだ、何か用か?今日は全て仕事終わらせたはずだけど」
「十二番隊阿近殿が維助様をお呼びです」
「えぇ?阿近が?伝令神機で呼べばよかったの……に」
って思って伝令神機を取り出すとすごい着信の数だった。
時計を見るといじり回してから8時間ぐらい経ってて。痺れを切らしてわざわざ来てくれたのかと申し訳なく思いながら席を立つ。
「行ってくるわ〜遅くなるようだったら先にみんなで食べてて。」
「はい、行ってらっしゃいませ」
すぐに門の前に行くと阿近が立っていた
「ごめん、阿近〜機械いじってたらさ」
「はぁ、だろうなとは思ってました」
さすが一緒に住んでたことはある。呆れたようにため息をはいた。
阿近も白哉と同じぐらいに成長して青年になった。
うんうん、みんな大きくなったなぁ……
「それで?なんだっけ」
「
改造魂魄。曳舟さんの義魂という概念から作られた義魂丸、
それを死者の肉体に強化された改造魂魄を入れて戦力として虚と戦わせる
「いや蒸し暑……」
水溶液が入ったカプセルが並ぶ部屋。
ひとつの機械が開かれていて修理しようとしてた様子が伺える。
「浦原隊長。」
「おー
俺は挨拶してきた由嶌に片手をあげる。
由嶌は改造魂魄の開発者で責任者だ。
「壊れた時の状況を教えて貰っても?」
「はい、改造魂魄の霊子をインポートした所急に煙が__」
俺は話を聞きながら機械を点検する
「あぁ……やっぱりか、誰かここにぶつかっただろ。パイプが曲がって根元の線が切れてんな……誰か外した後に適当に直しただろ」
っと言うと見守ってた何人かの隊士がビクッと肩を上げて、それを見た阿近が鬼の形相で怒鳴った
「てめぇらここに寄りかかって談笑するなって何度いえばわかんだ!」
「ひぃ!すみません」
っと研究員の悲鳴を聞きながら少し笑う。上司らしくなったな阿近
線を新しく取り替えパイプを治す。
「はい、多分これで大丈夫。」
ポチッと中止されてた機能を開始させると、水溶液がちゃんとカプセル内に流れ、インポート状況を知らせるバーが動き出した。
「ありがとうございます。浦原隊長」
嬉しそうに笑う由嶌。
「改造魂魄……ね」
「気になることでも?」
「……いや、なんでもないけど、バックアップは定期的に取っておけよ」
肩を叩いて帰ろうと出口に向かうと阿近が俺の横に着いた
「改造魂魄、何かありました?」
「……いーや、何かあったわけじゃないけど……四十六室のヤツらが嫌いそうな話だなと」
「…………四十六室が?」
「アイツら
「そんな事言って、聞かれたら大変ですよ」
「だーいじょうぶ大丈夫、あいつら俺に頭上げれないから」
「はは、そりゃ言えてますね。」
四十六室はウジ虫の家*1に使われてるセキュリティを彼らの居住区にも設置しろと言ってきて設置してやったのだ。隊長格と承諾したものしか入れないようにして四十六室は安心だ!っと大喜び。
ま、媚は売っといて損は無いし。別にいいけど
阿近に見送られ二番隊に帰ってきた俺は部屋に戻り続きを作り始める。
白哉坊ちゃんの妻、緋真ちゃんは身体が弱い、咳き込むのも見ていた。
俺が頼んで四番隊にも見てもらったがだいぶ進行した病らしく完全な完治は見込めないそう。
俺も医療に通じてるわけじゃないしなんなら全く知識がない。
治すことは出来なくとも進行を遅らせることは出来る。
理に反するが、体内の病の時間を遅らせるというもの。
肺炎だかなんだか知らないが、異物質を検知しその時間を操作する。
消滅はさせれないがきっとこれが完成すれば病を遅らせることができるだろう。
初めは体内の時間を遅らせるものを作ろうとしたが、ほかの細胞にも作用してしまい怪我が治らなかったりと色々問題が起きたので改善したのだ。
そして数日して完成し緋真ちゃんの腕に埋め込んだ。
咳き込んだりは治らないがこれ以上悪くなる事は無い。
「身体を強くしたりとかは無理なんだ、ごめんな」
「いいえ、ありがとうございます。」
っと嬉しそうに笑う緋真ちゃん。
病弱を完全に治すってなると、一部サイボーグ化するとかになるけど多分誰にも受け入れられないし、やろうとも思わない。
──そんなことしたら白哉坊ちゃんに命狙われるな__。