浦原喜助の兄に転生して夜一の許嫁にされた俺の話   作:ちーむ

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志波一心にとっての師範と消えた霊刀の話

 

俺は志波一心。

 

十番隊の末席に入隊した。

院の頃から始解が出来たということで人目置かれていて。

 

「一心はもう席官になれるなぁ!それだけ実力あるんだからいけるだろ!」

 

「はは!なってやるさ」

 

貴族の名しか見ない連中と違いちゃんとした同期や友人に恵まれてた__

 

そう…恵まれてたんだ。

自惚(うぬぼ)れてた、始解も強くて鬼道もある程度できる。霊力にも自信あるし医療の心得もあるし…いつか上に立てる人間に__なんて…

 

 

「おい、起きろよ…!」

友人が血濡れて倒れる。雨のせいか血がぬかるんだ地面に広がっていく

周りには先輩や__席官までも…

俺らは虚討伐の班に配属されて、虚を倒す予定だった…予定だったのに。

 

「なんで…こんな強えんだよ!」

 

虚はケラケラ笑いながら俺の斬魄刀を避ける。

ようやく隙を狙い腕を切り落とす__はずだった

 

キィン

甲高い音が響いて俺の刀が弾き返される。

 

ドシャッ…っと、ぬかるんだ地面にしりをつく…斬魄刀は飛ばされ後ろの木に刺さった。

ダメだ…だめだ、背中を向けたら死ぬ…

 

死ぬ…??

こんなに__俺は弱かったのか…手も足も出ずに、自分の力を過信して…。

 

 

───あぁ、俺死ぬのか

 

 

 

「待たせたね」

 

 

 

 

 

ザンッっという斬撃音と共に

───空が晴れた

 

 

珍しい髪色の男が俺の方を振り返り

淡い空色の瞳が細められ、男の背後で虚が塵になって消えていく

 

かっこいい…素直にそう思った。

誰も手も足も出ずに傷1つ付けられなかった虚を一刀両断し天をも切り裂いた。

 

俺に手を差し伸べる男。

俺は咄嗟に聞いてしまった。

 

「あんたの…名は?」

キョトンっと首を傾げた男はふっと笑った

 

「俺は浦原__浦原維助」

 

「うらはら…いすけ」

 

 

 

幸い死人はおらず、四番隊で治療を受けた俺ら

俺はあれから1週間検査をされて退院できることになった。

 

「うらはら…いすけ」

忘れぬように口で呟くと。

 

「あら、浦原維助がどうかしましたか?」

っと優しい声で問われた。この人は確か…四番隊隊長の卯ノ花隊長。

 

「いえ…、助けられて…」

 

「あら、そうでしたか…ならば二番隊に行くといいですよ。彼は二番隊第四席ですから」

 

「二番隊…」

二番隊はたしか隠密機動の隊だった…よな?

 

「よし!」

 

「あら、どこに行くのですか?」

 

「弟子入りしてきます!!」

俺は走って二番隊に向かった

 

 

「あらあら…」

っと言う声は聞こえなかった

 

───────────

 

二番隊の門…

 

1歩踏み出した瞬間に首筋に刀が添えられる

 

「一般隊士が何用ですか」

 

「門番か…」

そりゃ情報機密を扱ってる所だ、そりゃいるよな

 

「頼みます、俺は浦原維助に用があって来た」

 

「今浦原四席は不在です。お引き取りください」

 

「お願いします!浦原維助を出してください!」

 

「ですから浦原四席は不在で…」

 

 

「お願いします!!浦原維助をだしてください!!」

 

暴れる俺を羽交い締めにする、だが俺は諦めない─!絶対に弟子入りする!!

って興奮状態になっていると

 

「はーい、解散解散」

っと…声がした、あの時の声。間違いない。

 

隊士をかき分けて来たのはやはりあの男で。

 

 

「んで何用だっけ」

っと俺のことは忘れているようだった。

 

「弟子にしてください!!」

 

「えぇ」

っと、あからさまに嫌そうな顔で後頭部を掻く

 

それから断られても1週間待ち伏せして、その度に

 

「お願いします!弟子にしてください!!」

っと懇願しまくった。

 

ため息を吐いた浦原維助は

 

「分かった。お前が満足するまで付き合ってやるけど、俺は言った通りあんまり時間がない半分は弟が相手すると思うけどそれでいいな?幼い頃から俺と戦ってる弟だから弱くはないよ」

 

っと…ようやく承諾してくれたのだ。

嬉しかった…心の底から

 

「本当ですか!!ありがとうございます師範!!」

 

それからは弟という浦原喜助。彼に俺の癖を直してもらった。

刀が振りやすく軽い力で斬れる形に直して貰いその型を崩さぬように素振りをする。

 

 

 

「俺が教えるのは『受け身』『避け方』『攻撃』『反撃』

全て模擬戦で叩き込む。後は適当に必殺技作ろう」

 

「はい!!」

俺は斬魄刀、対して師範は木刀。

最初は戸惑ったし躊躇した。けれど彼なら大丈夫だろうという何かそういう確信があった。

 

それからは地獄だった、打ち合って打ち合って打ち合って、

殴られ殴られ、吹き飛ばされて

 

身体中が痛かった。胃の中がからになるほどに吐くほどに体力は限界を迎えて次の日もまたその繰り返し。

 

「はい、しんだー」

っと何度目かの宣告。

首筋には木刀が添えられている

 

「もう一度!」

 

「そうこなくちゃ」

本当にその細身のどこから力が出ているのか不思議なぐらいに強かった、型は確かに自己流だけど、それが更に厄介だった。

読めない太刀筋、たまにフェイントも入れてくるし少しでも思考がそれに引っ張られると腹に蹴りが入る。

 

だが続けているうちに受け身からの立て直しが早くなるのを感じる。

あぁ、こうすれば痛くないしすぐに反撃できる。

 

思考を逸らすな、真っ直ぐ敵を___。

剣術の他に白打を学んだ、っと言っても殴り合い蹴り合い。

俺は全然当てられなく逆に俺の顔は痣だらけ

 

「せい!!」

全身全霊を込めた拳もパシッと受け止められたかと思うと、

腕を引っ張られて足を引っかけ腕を捻じ上げられて俺は地面に沈む。

相手の勢いと力を利用して沈める技。俺もできるようになりたいな…

 

 

 

「鬼痛デコピン…!!いいですね師範!かっこよくてわかりやすい!」

 

「だろだろ?」

必殺技を作れと言われて考えて末に、霊圧を一点に収束させ手放つデコピンの技を作った。

不意打ちとして有効で虚を倒すことも出来た。

 

鬼道も浦原喜助から学び、俺は確実に強くなった。

だが過信はしない…俺はまだまだ、そう思うよ

 

あの天を割くような彼のようになりたいと。

 

そういう俺も末席から副隊長、隊長に昇進した。

師範は隊長になっていた。

 

 

 

「死なない為に死ぬほど努力する。」

 

「死なない為に死ぬほど準備する」

 

そう浦原維助と浦原喜助は俺にそう言っていた。

さすがは兄弟だ…って思ったね。

 

特に維助師範は口癖のように言っていた。

 

汗ひとつ流さずにまたいつものように俺をのした師範は口を開く

「死なない為に死なないように努力する。俺が大切な人を守れなかった時、きっと後悔する。あの時俺が__ってな、そんなのは嫌なんだよ」

 

強く木刀を握りしめる師範。

部下からの信頼は高くおちゃらけている時もあるがやる時はやる男。

あぁ、かっこいい。

 

いつも思う、この人の弟子になれて俺は幸せだ。

 

─────────

 

浦原喜助から聞いた話だと、師範は昔からガラクタ集めるのが好きでそれを合体させて動くカラクリを作ったりしてたそうだ。何でもロボット?って物が部屋の中のゴミを自動で片付けてくれるらしい。

 

そんな師範が作った伝令神機。副隊長時代に作ったそのカラクリは目を張るものだった。

どうして触れてるだけなのに中の映像が動くのだろうか…。

 

配られた時は正直扱いに困ったが使い続ければなれるもので今では院でも扱い方を学ぶ講義があるそうだ。

 

 

「隊長は浦原維助隊長の事をどう思ってるんですか?」

 

そう冬獅郎に聞かれた

 

「そりゃ尊敬するすげぇお方だよ。俺は死ぬほど彼に鍛えられて俺は強くなった。これからも強くなれると思う。師範のようになりてぇっていつも思ってるよ。ってあれ!?俺の饅頭は!?」

 

棚にしまっていたはずの饅頭がなく慌ててると

 

「饅頭なんてどうでもいいでしょう?ご馳走様でしたよ」

「お前かよ!!やっぱりな!!」

 

「それより2ヶ月前の鳴木市の担当死神が事故死した件で__先月分の担当死神も死亡しています」

 

「…!」

流石に偶然とは考えにくい。なにか起きている…?

 

縁側から飛び降りると師範が歩いてきた

 

「師範」

 

「ん?どうした慌てて…」

 

「…いいえ、少し出てきます!明後日ぐらいには戻ってきますー!」

っと冬獅郎と乱菊に仕事を押付け師範と別れて現世に向かった。

 

────────

 

「雨の日がやばいのかぁ〜」

 

っと現世の担当死神に呑気に話して安心させる。

 

雨___。

死神自体が標的か、はたまた霊圧に寄せられてるのか

 

試しにっと、抑えてた霊圧を解放する。

 

「ぐぁぁぁ!!!」

 

「っ!」

くそ…!霊圧のデカさに反応したのか?

悲鳴とともに下では無惨に殺された隊士が。

 

いつの間にか真っ黒な虚が俺の前にいた。

穴はふさがっているが霊圧は虚で間違いない

 

ただなんだ…?この妙な感じ…

 

それに__。

っとなにか引っかかる違和感に眉をひそめていると

 

青い刀と俺の斬魄刀が甲高い音を響かせる

 

「……!!!なんだ…その刀!!」

 

青い霊子がグルグルと刀を纏っている。

俺の漏れ出る霊圧を吸収している…?

 

ずくに刀を弾いて距離をとると吸収はされなかった。触れると吸収するのか?

なんだあの刀は…!

 

「それにその鍔…!!!」

 

違和感の正体がわかった。

 

その鍔の形は__師範の斬魄刀と同じ形をしていた

 

─────────────

 

女の子が俺を助けた。

だが弓のようなものを消した彼女に虚は向かっていく

 

「ばつ…なにを!!」

 

まるで誘い込むようにして手を伸ばした彼女に虚は歯を肩に食い込ませ、青い刀を彼女の腕に突き刺した。

その瞬間彼女は

 

「捕まえた」

そう言って虚の脳天を貫く…

 

だが自爆しそうな虚が膨らみ、まずいと思った俺はそれを防ぐ

俺は地面で血濡れになっていた

 

「私は…黒崎真咲…滅却師です」

 

「そうか…滅却師か、はじめてみたなぁ」

 

「ぐっ…」

彼女は刀を腕から抜こうとするが

 

「ばっ、そんな無茶に抜いたら…!」

って思ってると刀がまるで今までそこになかったかのように

 

───消滅した

 

消滅…?いや…?ちがう吸収された…?

でも彼女から何も感じないし…

 

俺はそのまま尸魂界に帰還した。

 

────────

 

「報告は以上です」

 

「あいわかった、無断出撃は罪なれど、即断速攻は隊士の犠牲は最小限に収められた、よって、こたびの隊規違反は不問とする」

 

俺は謎の虚のみの報告をした。

滅却師の事も、師範のにた刀のことも言わなかった。

 

「…」

滅却師の生き残りがいるって本当だったんだな。

 

「さて、礼にでも行ってくるかね」

 

────────

 

 

ぽっかり胸に穴が空いて、それはまるで虚のようになった彼女をみた…白髪の男に抱えられて__

言い争っていると

 

「やめましょう、ここで争ってる時間は無い」

 

懐かしい声がした

 

「あんた…」

だいぶ老けているがあの髪と雰囲気は__。

「話は後ッスよ志波サン」

 

ぐちゃぐちゃと長ったらしい説明がされた。

 

虚化とかよくわかんねぇ…!

 

特殊義骸に入れば死神と人間の中間の存在になれ、彼女の相反するものになる

 

半分以上頭に入らなかったが。

つまりは___

「俺が傍でずっと守ってればいいんだろ?やるよ!やるってんだ!」

 

「未練は…ないんスね?」

 

「未練ないわけないだろ!タラタラよ!師範を超える夢だってあった、けどそれがなんだってんだ。未練に足を引っ張られ恩人を見殺しにした俺を明日の俺は笑うだろうぜ」

 

─────────

 

「ふへへへ」

なんだかふわふわと笑う彼女。

 

「おふたりの魂魄の結合に成功しました、もう大丈夫ッス」

 

っと浦原が言った。

良かった、良かった───。

 

「あっ、そうだ、あんたの斬魄刀。見せてくれねぇか?」

 

「…なんスか急に」

っと言いつつ始解斬魄刀を渡してもらい受け取る

 

「うーん」

やっぱり似てるけど、違うな。やっぱり浦原喜助の鍔じゃない

 

「なぁ、滅却師って刀を使うのか?」

 

「なんなんスか?本当に…アタシの知る限り弓しか知らないですねぇ」

 

「そうだよなぁ…なんか霊圧を吸い取る…いや霊子を吸い取ったような刀を使ってたんだよ虚が、その性質が滅却師ににててよ」

 

「虚が…?それどんな刀でした?」

 

「刀自体は直刃(すぐは)の平巻の打刀で…鍔は───師範のものと似ていた」

 

「…」

スッっと目を細める浦原に首を傾げる

 

「そうッスか、多分見間違いでしょう、兄サンの刀は乱刃模様ですし」

 

「うーん、そうか、そうだよなぁ」

 

「……その刀はどこに?」

 

「いや、この子の腕に刺さったと思ったら消えちまったんだよ。何も残らずに」

 

「……」

顎に手を当てて考え込む浦原。

 

「まっ、とりあえず今日はここで休んでください。刀の件はアタシが調べておきます」

 

「お、おう」

 

────────

 

「…」

 

2人が寝静まったのを確認して僕 ボクは電話をかけた

 

 

ワンコールで出た__兄

 

”『なんだよ、喜助からなんて珍しいな?』”

 

「兄サン。あの刀…藍染サンにあげたんスか」

 

”『…』”

兄は黙ったままだった

 

「兄サン。今回一心サンは死神じゃなくなりました。そっちでも恐らく事故という形で処理されることでしょう。」

 

”『それどういう事だ?』”

ボクは詳細を話す。

すると兄サンの事情も話してくれた。

 

「って…事です。兄サンの霊刀を持っていた…と、それが消えたと言うんス」

 

”『…消える?消えるだって?そんな機能つけた覚えねぇよ?』”

 

「そうなんスか…藍染サンが改造した可能性も…」

 

”『消えるね…うーん…証拠を残さないため…とか…?』”

 

「あるいは…虚の力と結合した__

 

ため息が電話越しに聞こえた

 

”『わりぃ…俺、やべぇもん作ったかも。』”

「何を今更」

 

今更だ、(ことわり)に干渉するものを作ったりしておいて__。

 

”『喜助。俺最近やべぇんだよ』”

 

「はい?」

 

”『作りたくて…作りたくて仕方ねぇんだ。理に干渉するものも作れる、魂魄に干渉できる物も__俺は__』”

 

「兄サン…いいんス。ボクも似たようなもんスから…」

 

”『今回、盗まれた霊刀、取り返そうとすれば取り返せた…けれど、俺はそうしなかった…きっと俺は藍染よりも黒い。よっぽどどす黒い…俺の機械で、誰かがどうなるのか見たかったんだ___そういう気持ちがあったから取り返さなかった…俺はきっと心の底では藍染に期待してたんだ。だからあいつを止めれないし…お前らを助けられなかった。』”

 

「兄サン。今回一心サンが死神じゃなくなったのは兄サンのせいではなく虚化のせい。でも…次は__」

 

”『あぁ、次は俺が…誰かを殺すかもしれない。

なぁ…喜助、俺はもしかしたら敵になるかもしれない

 

 

 

 

喜助、もしそういうことになれば___』”

 

 

 

 

 

 

「…無理ッスよ…兄さん」

 

切れた伝令神機を持つ手の力が抜ける

 

 

 

 

 

 

 

───もしそういうことがあれば

 

          俺を殺せ喜助




崩玉が危険なものと知っていながら先を見たいという
研究欲が抑えられずに作ってしまった浦原喜助。

「ただ新しい何かを造りたかった
新しい扉を開きたかった」


つくる機械がどれも危ないものだとわかっていながら
己の創造欲を満たすために作ってしまった浦原維助。

「俺の機械で世界がどうなるのか見たかった
誰かがどう使うのかを見たかった」



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