浦原喜助の兄に転生して夜一の許嫁にされた俺の話   作:ちーむ

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逃亡した紫流の話

 

また虚を片付けた時()()()()がして咄嗟に頭を下げると

真上をブゥン!!っと風を斬る音を立てて何かが通り過ぎる。

 

パラパラと自分のオレンジ髪が地面に落ちたのを見て冷や汗が流れる

 

「何すんだ!!てめぇ!」

咄嗟に振り向くと

 

「ありゃ?」っと首を傾げた子供

 

「お前……死覇装!?」

意外と身長が低くて驚くが、キョトンとしたその子供の服は確かに死覇装を着ていた

 

「そーだよ、今更?ってか誰?」

 

「こっちのセリフだ!!!」

 

「うるさ」

っとわざとらしく耳を塞ぐのをみてイラッっとする

 

「なんなんだてめぇはいきなり!名も名乗らずに刀振り回しやがってあぶねぇだろ!」

 

「あん?てめぇ俺の事知らねぇのか!泣く子も黙る俺は護廷十三隊六番隊、次期隊長!!朽木紫流だ!!」

 

「朽木……!?」

 

「はん!やっぱり朽木の名を聞いて怖気付いたか!謝るなら今だぞ!」

 

「んだよ、ルキアの兄弟かなにかかよ、んなら最初からそう言えよ」

頭をかいた一護はため息を吐く

「んでルキアおばさんを呼び捨て……っておい!持ち上げるな! ギャァァー!!

ひょいっと肩に担いで猛スピードで走る。一護に悲鳴を上げる紫流。

 

あっという間に家に着き、

 

「あっもう帰ってきたのかよ」

っと自分の体が起き上がる。

名はコン。改造魂魄で色々事件はあったものの、なんだかんだ住まわせてる住人。

普段はぬいぐるみに入れている。

 

「どひゃぁ!」

ポイッとベッドに下ろすと顎からベッドに落ちた紫流

 

「何しやがる!派手髪野郎!」

 

「おいルキア!お前の知り合いが来たぞ!」

 

スパンっ!っと襖が開きルキアが顔を出すと目を見開く

 

「なっ、紫流?何故ここ(現世)に!」

 

「ルキア叔母さん!んでこんな派手髪の所に……もしかして彼s「断じて違う!」なんだよ」

っとルキアに遮られてつまらそうにした紫流は足を組む

 

「叔母さん……?甥っ子か?」

 

「あぁ、兄様と姉様の息子だ」

 

近親婚……?っと思ったがさすがに口にはしなかった。

 

「んでその甥っ子がなんでこんなとこにいんだよ、そもそもなんでおれに刀振った!」

 

「いやだって珍しい髪を見たら斬りかかりたくなるじゃん」

何を当たり前なというように首を傾げる

「なんねぇよどんな教育してんだ」

っとすかさず突っ込む。

 

「ズラかなって思ってさ」

 

「ちげぇよ地毛だよ地毛!」

グイッと自分の髪を引っ張り見せるが、ふーんっと今度は興味無さそうに鼻を鳴らす

マイペースにも程がある

 

「紫流、そもそもどうしたのだ貴様はまだ現世任務に配属されておらぬだろう」

 

「勝手に来た!」

「馬鹿者!兄様と姉様に心配をかけるな!」

 

「んでだよ!俺だってもう一人前の死神だぞ!それに父ちゃんが俺の心配なんかするかよ」

つーんっとそっぽを向く紫流

 

「いいか、紫流はまだ知らぬかもしれぬが無断で現世に来た場合隠密機動が動く。紫流伝令神機は持ってきたのか?」

 

「持ってくるわけないじゃん追尾機能ついてるから置いてきた」

って言った紫流に顔を真っ青にする

 

「貴様……!本当に違反者になるぞ!兄様にどれだけの__」

 

「みんなして!父ちゃん父ちゃんうるせぇ!俺は俺だ!!俺だって1人でなんでも出来るんだ!それを証明しに来たんだよ!!」

っと怒鳴る紫流に言葉がつっかえたルキア

 

「俺自身を見てくれるのは……お師匠さんだけだ……。みんな迷惑をかけるなとか……。もううんざりなんだよ!!」

 

「……先生が何番隊かわすれたのか紫流」

「っ……お、お師匠は……」

その言葉にハッとする紫流

 

たまにルキアの口から出る先生という言葉。

伝令神機を作ったのも先生だと自慢していた。

話の内容からお師匠と先生というのが同一人物だろう

 

「今戻ればまだ許されるぞ紫流!今すぐ戻るのだ」

「いやだ!戻んないぞ俺は!」

っとまた口論になりそうなところで

 

ふと、春の暖かい風が窓から流れると同時に

「ありゃ、修羅場?」

っと声がした

 

一護は咄嗟に振り返る

いつから?いつから居た__?

気配も感じない、虚のような霊圧も

窓枠に膝を立てて座っている男__

 

バチッっと目が合うと男は目を見開いた

 

「あは、大きくなったな」

っと意味のわからないことを言われて思考が停止する

 

まるで昔から知ってるかのような口ぶり

 

すると、目を細めた男はギンッっと紫流を睨みつけ

紫流は肩を跳ね上がらせる

 

「せ、先生」

ルキアは顔を真っ青にしていて

 

「大丈夫。ルキアのことは知っている尸魂界に報告はしないさ安心しな。今回は紫流を捕まえに来たんだ」

 

「お、お師匠!!俺は帰らねぇぜ!」

 

「何故?」

 

「お、おれは父ちゃんを見返すんだ!1人で虚退治もできる……!

覚悟だってある!死ぬ覚悟で任務を遂行するんだ!!」

 

っと言った瞬間空気が冷たくなった

 

「死ぬ覚悟……?」

 

「そ、そうだぜお師匠!俺は……」

その言葉は続かなかった

 

紫流の首筋に銀の刃

 

「(いつ抜いた……?)」

瞬きをしていないはずなのに、まるで映画のカットのように気づいたら紫流の首筋に斬魄刀が添えられていた

 

「死ぬ覚悟……?俺その言葉大嫌いなんだよね。やる気を表す表現かもしれないけど、死んだら意味ないじゃん。その言葉軽く感じる。死なないために死なないように鍛錬して生きているのにそんな言葉を使ったら……ねぇ?

紫流、戻るよ」

説明がめんどくさくなったのか途中で言葉を濁した男は

斬魄刀を鞘に収め手を差し伸べた

 

 

────が、それを勢いよく払った紫流

 

ポロポロと涙を流す紫流だが、それを乱雑に拭って鼻声で言い放つ

「いやだ!俺は!!戻らねぇ!!!」

 

すると。

「そうか……」

っと低く呟いた男

 

「お、お待ちください先生!!紫流の無礼は私がお詫びします!」

っと紫流を庇うように手を広げたルキア

 

「ルキア叔母さん……」

 

すると、冷たい空気は何処へやら

花が咲きそうな程に二パーっと笑った男

 

「何もしないって〜紫流の覚悟はわかったよ。俺の殺気を感じながらも自分の意思を伝えた……うんうん、大きくなったなぁ!こりゃ白哉坊ちゃんも喜ぶぞ」

 

ポカン……っとする3人とコン

 

かァァァ!っと言ったコンは男に飛び蹴りを食らわす

「あいたぁ!」

「なんなんだテメェ!驚かせやがって!!」

 

っとコンがブチギレる

 

「まぁまぁ、」

足を掴んでコンを軽く抑えると男は紫流の方に向いた

 

「現世任務がしたいんだな?」

「あぁ!俺は現世で虚を退治して父ちゃんを見返してやるんだ!」

 

「わかった、わかったけど内緒で行くのはどうなんだ?」

っというと

 

「うっ…それは……」

 

「人に迷惑をかけたら?それにいきなり人に刀を振るっちゃダメって言っただろ?なんて言うんだっけ」

 

って言ったところで最初から見てたのかよっと、一護は心の中で突っ込む

 

「ごめん……なさい。内緒で出てきて……」

 

そして一護のほうに向くと不服そうな顔をしながらも頭を下げた

 

「いきなり刀を振ってごめんなさい」 っと謝った

 

「あぁ……まぁ怪我してねぇしいいぞ、つーかなんか先生みたいだな」

 

「だから先生だと言っておろう!」

 

 

____________

 

机の上に座った男。

 

「俺の名は浦原維助、よろしく。黒崎一護」

 

「お、おぉう」

 

「とりあえず、紫流がこっちで働く為に色々手続きはやってやる。あと白哉坊ちゃんも説得してやるよ」

 

「本当かお師匠!」

 

「ただ、その代わり」

っとルキアの方にむくと。ルキアは俯いた

 

「……私の事を話せと言うことですね」

こくんっと維助は頷いた

 

ルキアは紫流に死神の力を失ったこと、一護が代行として虚を退治していることを伝えた

 

「死神の力を分ける……?それって違反だろ?」

 

「あぁ……」

っとつぶやくルキアに顔を青くする

 

「……なるほどな、だからか。父ちゃんが最近ピリピリしてるわけだ……んで隠密機動のお師匠は捕まえないのか?」

 

「捕まえない捕まえない、確かにそういう任務は来てるけど俺はしばらく手を出さない……けれどあいつらはせっかちだそのうち追っ手を放つぞルキア」

 

「……分かっております先生」

 

「ならよし、とりあえず紫流の現世滞在の手続きをやってくるわ」

 

「お師匠珍しいよな、現世嫌いなのに直接来るなんて、それに霊圧も気配も感じないし……新しい機械?」

 

「そっ、大正解。霊圧、霊力、気配を感知させない遮断結界機を俺の肉体に纏わせてるんだよ。それなりに制御難しいけどな」

 

 

「んで現世が嫌なんだ?」っと一護が疑問をなげかける

 

「そりゃまぁ、会いたくないやつとか会っちゃいけないやつとかいるからなぁ、ほら俺隠密機動だし!」

 

「その、隠密……なんとかってなんなんだよ」

 

「うーん、言うなれば裏組織?違反者の捕縛投獄監視から暗殺まで、虚退治から死神侵入者までなんでも担当する組織さ。簡単に言うとね」

っと笑う男にどこか下駄帽子に似た何かを感じる。

 

髪色が似てるからだろうか、それとも胡散臭い雰囲気を感じるからだろうか。

 

 

「とりあえず一旦戻るわ、紫流はルキア捜索兼、ルキアの引き継ぎの虚退治って任務担当にしとくからよろしく〜」

 

ふと窓枠に足をかけたと思えばそのまま飛び降りた。

下を覗くも誰もいない

 

「なんだったんだ……つーかお前ここに住むのかよ」

 

「あぁ!住まわせろ!」

 

「嘘だろ__」

一護は頭を抱えた

 

___________________

 

俺は断界内をゆっくり歩く。

 

よりによって紫流の逃げた場所が空座町とは_

喜助が居る場所もたしか空座町だったからまぁ遮断装置をつけてきたのは正解だな。

 

腕から装置を外し懐にしまう。

黒崎一護、一心の息子がいるというのは昔から知っていた。

 

お祝いにと匿名でプレゼントを送ったがきっと一心は俺からだとわかっているだろうな。

 

帰ったら坊ちゃんの説得に手続きに__あぁ、大変だ。

 

その後白哉坊ちゃんを無理やりに説得させて手続きをおわらせた。

 

__________

 

 

”『兄サン町に来てたんスか、穿界門開いたのに何も感じないからおかしいなぁーとは思ってたんスけど……なら会いに来てくれればいいのに』”

 

「仕方ねぇだろ、察知されたら困るだろ俺もお前も。」

 

俺は紫流の補助を頼むために喜助に電話していた。

 

”『朽木サンの息子さんねぇ……話には聞いていましたけどまあ黒崎サン並に霊圧ダダ漏れッスね』”

 

「はは、まぁ発展途上だよな。とりあえず制服用意してやってくれ」

 

”『えっ、学校に通わせる気ッスか?』”

 

「そりゃその方が面白いだろ?」

 

”『……はぁ、分かりました手続きしときます』”

 

「助かる、あと紫流はそこそこ鋭いからお前は会うな、会うなら夜一さんか鉄斎さんを通しな。俺とお前が兄弟だってバレる」

 

”『さすがにダメっスか〜叔母の方は鈍かったんスけどねぇ』”

 

「お前そもそもなんで浦原で商売してんだよ、俺が困るだろ」

 

”『大丈夫ッスよ〜商売相手はきちんと選んでますし』”

 

「まぁ、もう今更か……黒崎一護……ね」

 

”『黒崎サンがどうかしました?』”

 

「……喜助。ルキアになにかしたんだろ」

 

”『そうッスね……』”

 

「……ルキアが罪人として捕まったら俺は規定側に着くと思う。」

 

”『わかってます』”

 

「……ならいい。なるべく時間は稼ぐが……まぁあまり期待はするなよ」

 

”『……はい』”

 

ツーツーつと音を立てて電話は切れる

 

さて、めんどくさい事になるのは確実だな……


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