「俺は浦原維助、よろしく」
我流の構えをした維助がニヤリと笑う
ヴァストローデとは、虚の中で1番上に位置する虚の呼び名である。
大太刀を構えた少し小さなヴァストローデ。
ボサボサの白髪に目元には目隠しがされていて顔はよく分からない
「まっ……先生!」
何かを言いかけた恋次は次の瞬間の轟音によりかき消された
霊圧同士の衝突__
地が割れヒビが入っていく
「織姫ちゃん、なんか守系の技使えるんでしょ?悪いけど皆のことよろしく」
「は……はい!」
押しつぶされるような霊圧に本来なら怯えるはずなのに何故か維助の後ろは安心感があった。
「うらは……らさん……俺も加勢を……っ」
地面に這いつくばっている一護、白哉との戦闘で疲弊している
「ばーか、その状態で戦えるかよ。援護はいらない休んどけ」
次の瞬間地面を蹴りあげた維助は空中で刀を軸に回転し上から叩きつけるように振り落とした
それを大太刀で受け止めるが、地面が耐えきれずに割れる
「なっ……崖が……!!」
足元ギリギリで崩れた崖に青ざめる雨竜
維助は被害を考えヴァストローデの腹に膝を入れ空中に吹き飛ばす
「あんた戦闘慣れしてないだろ中級より弱いぞ」
斬魄刀を肩に背負いトントンっと叩く維助。
違和感__そう、違和感を覚える。
小さな人のような体に収束した霊圧は底知れず。
力はただのヴァストローデに類似しているが、知能が見当たらない。
本能のままに暴れる下級の虚のよう
それに死覇装を着ていて___まるで死神のような__。
虚が死神化したもの……か?
それとも平子隊長……平子さんと同じ死神が虚化したものだろうか。
「まぁ、
でも相手が悪かったな。さようなーら〜」
刀を振り下ろす_
──瞬間ピタリと手が止まった
「どうしたの恋次」
恋次の眉間スレスレで止まった斬魄刀に恋次は冷や汗を流す。
恋次が虚の前に手を広げて維助を止めたのだ。
「先生!こいつ……ただの虚じゃない!!こいつは……」
ハッっとした維助が恋次の胸ぐらをつかみ後ろに引っ張り硬化した足で虚の刀を止めた。
すぐに距離を置いて恋次を立たせる
「なんだ、あいつ知ってんのか…?」
「一瞬しか見えなかったんスけど……あいつの手甲に__
朽木家の紋様が」
「…………まじ?」
コクンっと頷く恋次。
そんなの全然気にしていなかった、維助はふと__ひとつの可能性が頭を
「あの身長……紫流と同じぐらいだよな。」
「えっ?」
恋次は虚を見つめる
「紫流から連絡は?」
「ない……です」
「まさかあれが紫流だったりする?」
「……」
黙りこくった恋次。
髪色も霊圧も別物……紫流には見えない。だが__
「仕方ねぇ目隠しとるか」
「なっ……無茶ですよ!って早!」
維助は刀を仕舞うとヴァストローデに向かう、
大太刀を薙ぎ払うようにして横に振ったヴァストローデ。
だがその刀を腕1本で止める
ギチギチっと筋肉が軋む音がヴァストローデから聞こえてくるがお構い無しに維助は顔を鷲掴みするように握ると目隠しを剥ぎ取った。
「……」
拳を振るわれその手を離し恋次の隣に戻る
「おいおい……まじかよ紫流」
緋真ちゃんにも白哉坊ちゃんにも似た目。間違いない紫流がそこにいた。
焦点は合っておらず、まさに死人の目
───────────────
その瞬間パチパチパチっと拍手が聞こえた
「…惣右介」
「さすがだよ、最上位大虚の斬撃を腕1本無傷で止めるなんてね」
俺の方を見上げる惣右介はニヤリと笑う。
「なっ……ルキア!」
そう声を上げたのは恋次で
惣右介の傍にはルキアがへたり込んでいて、惣右介の霊圧に当てられていた。
「恋次。ルキアをよろしく俺はこっち何とかするから」
向かってくる紫流を吹き飛ばす。
っと、ぐっと、紫流を見たあとルキアをみて恋次はルキアの方へ飛んでいく。
さて……どうするか。殺す訳にも行かない。
これが平子隊長と一緒のやり方で虚化したなら俺はお手上げ、喜助に聞かなきゃわかんねぇ。
仕方ねぇ──
俺は向かってくる紫流の霊刀を抑え引っ張りながら俺は相手をひっくり返し腕を足で押さえつけて首に腕を回す。
首の骨を砕かないように気をつけながら締め続けると暴れる暴れる。
だが赤子のように軽く抑え続けるとふっと力が抜けた。
あれ、死んでないよな?って思ったけど大丈夫だったらしい。
紫流を俺の帯で縛り付ける、まぁこんなの蜘蛛の糸のようにちぎられるだろうけど念の為念の為。
織姫ちゃんの隣に下ろす。
「いやぁ手こずった手こずった」
「君……尸魂界一の剣術使いなんだよな……?ほぼ力でのゴリ押しじゃないか」
っと呆れたような顔をする雨竜ちゃん
「いやぁだって斬ったら傷ついちゃうじゃん。切り傷ってお風呂入る時痛いんだよ」
「そういう問題なの……か……?」っと頭を抱えた雨竜
「さて、惣右介。ルキアを離しなよ」
「ふっ……いいさ離してあげよう」
首輪を掴んでいた手を離すと、ルキアの
惣右介の手には__なるほどな
「それが崩玉……ね。喜助の」
「そうさ、君は初めて見るのかな」
地面に這いつくばっていた一護が唸る
「浦原さんの……?」
うわ、腹パカってきれてるじゃん瞬殺されたのか。痛そうあれ風呂しみるよ
「死神の虚化……限界を超える力を手に入れることが出来る。浦原喜助が作ったのは瞬時に虚と死神の境界を取り払う物質。名は__崩玉。彼も危険なものだと判断したんだろう。破壊を試みたが失敗した__いずれ彼が考えた方法。崩玉そのものに防壁をかけ他の魂魄の奥底に埋め込んで隠すという方法だ」
ふと、ルキアに目を向ける
「もう分かるだろう?その隠し場所に見つけたのが朽木ルキア……君さ。」
すると俺の方を見た惣右介
「最初は
リスク……ねぇ、俺が悪用すると思ったのか。それとも……まぁ喜助の考えることは何となくわかる、恐らく色々考え想定できる全てをリスクと考えたんだろうな。
あと俺が崩玉を生産し始めないかとか考えたのかな。さすがにしないって。多分
「魂魄に直接埋め込まれた異物質を取り出す方法は二つしかない。双極のように熱破壊能力で外殻である魂魄を蒸発させて取り出すか、
そういえば俺に喜助が埋め込んだのはなんだったんだ……?*1
「これは君にあげよう、もう用済みだからね」っと投げられたものをキャッチする。
ふぅん、
「どーも、それで。紫流に何したんお前」っと親指で紫流のほうを指す
「まさか最上位大虚が失神するなんてね。私は君の研究から疑似的な霊刀を生み出した。周りの霊子を吸い取り溜め込む……だが、意思のある生物から溢れる霊子を吸い取ると霊刀に意思が宿るという性質を見つけたのさ。やはり君のように霊刀は上手く作れず魂魄の方が耐えきれなくなってしまうけどね」
「勝手に人の道具パクるのやめてもらっても??」
「意志を持った霊刀……それを魂魄に埋め込むと宿り主の力の魂魄環境と感情により変化する……!そう。そして朽木紫流は進化に成功したのだ」
「……へぇ進化ねぇ」
楽しそうに笑う惣右介
「そう、進化……彼の強さへの執着、強い憎しみに霊刀が共鳴し、魂魄が虚のように変化した_だがそれは虚であり虚てはない、死神であって死神でもない存在……まったく
「とどのつまり、霊刀を埋め込んで実験したのね」
「ただ、成功したと言っても知性の問題や制御の問題なんかもあるからね、まだまだ試作段階……第1歩ってところかな」
シュッ__っと惣右介が消えすぐに現れる
気絶した紫流の襟を持って__
失神している紫流はダランっと力が抜けた状態で引きずられていた
「だが、調整するにも、もう霊刀は浦原喜助の技術を持ってしても外せないようだ。もう用済みだ、ギン」
ギンが脇差を構えた
なるほどね、道具は使えないから俺に渡したのか。
「紫流を殺すって?させると思うの」
「君は人に執着しない、利用する為に己のためだけに動く。助けられたから、恩があるから、瀞霊廷の為にという戯言を吐きながら腹の中は真っ黒……この私ですら利用する。私利私欲の為なら手段を選ばない君に__朽木紫流を助ける意味が?弟子の子だからなんて偽りの理由はいらないよ」
「はっ、俺をなんだと思ってんの?それに少し言葉が足りなかったな。紫流を殺すなんて_」
ふわりと桜が舞う__。
「白哉がさせると思ってんの?」
惣右介が片手に持っていた紫流は消える
「驚いたな__。私が斬られるとは……ね。朽木隊長」
己の手首に浅く皮膚が裂け血が流れるのを興味深く眺める惣右介。
少し離れた場所には紫流を抱えた坊ちゃんが立っていた。
「さすがは浦原維助の一番弟子。先程の阿散井くんとの戦闘は手を抜いてたようだね。」
「なんや、早いやん。見えんかったわァ〜」
っと呑気に目を擦る振りをするギン
スッっと自分の柄に手をかけた惣右介。だが__
「動くな、筋一本でも動かせば」
「即座に首を跳ねる」
夜一さんと砕蜂。お互いボロボロだが戻ってきたようだ。
惣右介の首筋に刀を添えていた
「そこまでよ、動かない事ねギン」
乱菊ちゃんも駆けつけ、ギンの首筋に刀を添える
そして総隊長や浮竹隊長京楽隊長も戻ってくる。
「終わりじゃ、藍染」
っと夜一さんが惣右介を睨みつけると
「終わり……ねぇ」
っと口角を上げる惣右介
その時__俺の伝令神機が震える
「空間裂决反応?」
近くで虚出現時にしか鳴らない反応が起きる
「!!離れろ砕蜂!」
上からの光線が惣右介らを包む。
なるほどね_もうすでに虚側についてたわけか。
上空の空には大きな亀裂が入り
そこからおびただしい数の大虚が顔をのぞかせていた
光線は
つまりは何も出来ない。
「地に堕ちたか……藍染!」
一歩踏み出しギリッと惣右介を睨みつける浮竹隊長。
「
この停滞した世界の針を動かすには誰かが天に立たなければならない」
惣右介は髪をかきあげ、メガネを外しメガネを見つめた。
ギュッと、メガネを握る惣右介は口角を上げる
「そう……進もうとしない、歴史に名を刻み続ける__1人を除いて」
そして下を見下ろし_俺と目が合うとふっと笑った
「しばらくの分かれだ。さようなら死神諸君、旅禍の少年__」
そうして空間は消え慌ただしく死神が動き始めた
「けが人を__!」
っとあっちこっち走る死神をかき分けて歩く
「坊ちゃん」
「師匠」
応急処置をされている坊ちゃんの腕の中には紫流が目を閉じていた。
「……特殊な睡眠薬を入れておくから暫くは大丈夫。紫流は俺が何とかする。しばらく任せてくれないか?」
「……」
坊ちゃんは名残惜しそうに俺に紫流を渡し、フラフラと4番隊に連れられて行った。
「京楽隊長」
「ん?どうしたんだい維助君」
「しばらく俺10日ぐらい現世に行ってくる。総隊長に適当に言っといてほしい」
「えぇ、僕が怒られちゃうじゃないの……それに紫流くんのことでかい?」
おれはコクンつと頷く。
「このまま12番隊にバラされるのも阻止したいし。四十六室が殺され機能してないけど、そのうち復活したら紫流が処されるかもしれない。体制が全然整ってない今、何とかしてくるよ」
「そう,わかった君と僕の仲だしね。山爺には適当に言っておくよ」
「ありがとう、京楽隊長」
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一護以来だろうか現世に来るのは……
紫流は眠ったまま。一応他の魂魄に影響が出ないように霊圧遮断マントを被せている。
俺はそのままひとつの場所に降り立った
「ボロくさ……」
ボロボロの店の前。
玄関を軽く叩く____
挿絵はいる?
-
あった方がいい
-
無くてもいい。
-
どちらでも