「おかぁぁぁぁさぁぁあん!!! 」
「遊子、夏梨……大きくなったわね」
ベッドで上半身を起こした状態の真咲に遊子が抱きつく。
「遊子。そんな大声出したら怒られるぞ。一応ここ病院」
「がりんじゃん……ヒック、うっ」
ポケットティッシュを遊子に押し付ける夏梨。
「あらあら、どっちがお姉ちゃんかわからないわね。ほんと……大きくなって」
4つだった、遊子と夏梨が大きく育ったことに嬉しく思う真咲は2人をそっと抱きしめた。
「ええ話やぁ」
扉に寄りかかっていた一心が袖で目を覆う
「どこの関西人だよ」
っと呆れたようにジトーっと一心をみた一護。
すると、ふと顔を上げた真咲が一護と目が合い、一護はスッと、目をそらす。
「遊子、夏梨一緒に車から母さんの荷物運ぶためのカバン取りに行こう」
「うん!行こう夏梨ちゃん」
「えぇ、ヒゲ1人でやれよ」
「お父さん腰死んじゃう……」
パタパタと3人がいなくなり。
一護と真咲が残される
「一護」
「お……おう」
気まずい雰囲気の中真咲は横の椅子に手を伸ばした
「おいで」
そう言われ渋々と椅子に座る一護。
「母さんね、びっくりしちゃった。お父さんが老けちゃったし、私も老けてた。夏梨も遊子も大きくなっちゃって__。
そして一護、貴方も大きく育って……母さん嬉しいよ」
約10年眠りについていた真咲は、世間からも家族も急に変わってしまったような感覚に陥っていた。
「俺があの時__」
そう言いかけた一護の頭を手を伸ばして撫でる真咲
「ずっと、ずっと悩んでたんだね。一護、泣き虫なのは変わらないね」
「な、泣いてねぇよ」
目元に涙は見えないが、真咲は首を横に振った
「泣いてる。母さんわかるもん。」
っと綺麗な笑顔で笑いまた一護の頭を撫でた。
「大丈夫、一護のせいじゃない。本当よ?母さんは貴方を守れた事が嬉しいの。私はこうして生きてるし話せる、私の方こそ……遊子や夏梨、一人で家を守ってくれたお父さんに、妹の世話をしてくれていたであろう一護……みんなに申し訳ないよ」
「申し訳ないなんて……俺は当たり前のことを」
「そう、当たり前、母さんが貴方を守るのも当たり前なの。母さんが好きでやったのよ、それを責めないでちょうだい」
「っ……あぁ……お袋……ごめ」
っと、謝ろうとした一護の頬を優しくつねる真咲
「こういう時は?」
「……起きてくれて、生きててくれて、助けてくれて……
ありがとうお袋」
「ふふ、本当に……大きくなっても泣き虫なのは変わらないわね」
しばらくのリハビリと、身体の調子を整え退院することになった真咲
「お母さん、本当に大丈夫なの?たった1週間だよ?」
「ええ、看護師さんが体を
夏梨と遊子に挟まれながら歩く真咲は、自分の家に帰ってきて、懐かしむように扉に触れた。
「なんだか……私は寝て起きての感覚だったけど。こうしてみると時間が経ったことがわかる。置いていかれちゃったみたい」
っと、椅子に座った真咲が呟く。
体力はあまり戻っていないせいでフラフラしていた真咲を夏梨と遊子が無理やりリビングで休ませているのだ。
せっせとご飯を作るのを見ている真咲
「そっかぁ、遊子が私代わりに頑張ってくれてたのね。そうよねこのヒゲが家事なんて出来ないよね」
「ヒゲ!!母さん酷いッ!お、俺だって自分の服を洗濯機入れるぐらいできるし!」
「それは家事とは言えません!!また靴下丸めて入れてるんじゃないでしょうね?」
「うっ」
「入れてるよこのヒゲ。」
っと、遊子と一緒に手伝ってた夏梨が話を聞いてたようでそういい放つ。
「ゴミは出さねぇし、掃除もしないし。たまーに食器洗うぐらい」
「うっ……夏梨ちゅわん……」
「全く……変わらないわね。……そして。あの壁のポスター何!?」
っとでかでかに貼られた真咲の写真を指さす。
「あ、あれは寂しくて!!真咲も一緒にご飯食べてる気分になってたし。寂しかったんだもん!!!」
「いい歳したおじさんがだもんとか気持ちわり。」
っとお茶を飲んでた一護が突っ込むと
「なんだとぉ!俺は真咲に対しては純粋無垢の乙女だぞ!」
「 ダァァ!アブねぇお茶こぼれるだろうが!!純粋無垢とか誰がだよ気持ちわりぃ!」
っと飛び蹴りしてきた一心の足を抑える一護
「まったく……」
っと言った真咲がポスターを剥がす
「あぁぁ!俺の母さんがァァ!!」
「私はここにいるでしょ?私じゃダメ……?」
っと言えばニヘラァっと顔を歪めた一心が
「母さんしかいません!!!!母さん〜!」っと抱きつきに行こうとする首根っこを掴む一護
「グエッ!何しやがるこの野郎!」
「こっちのセリフだ!その勢いで抱きついたらお袋が潰れるだろ!病み上がりつーもんを考えろ!」
「ぐぬぬ」
っと唸る一心に、クスッと笑う
「賑やかになったわね。この家も」
______________
「うっ……」
「どうした〜一護」
「いや、なんでも」
「そう……か、じゃぁ続きやってくぞ、10ページの__」
いつもの教室、いつもの授業時間。
黒崎真咲が退院して普通の日常が戻ってきた、はずだった__
「(やめろ……もう。
白哉との戦いで一瞬でてきたあの変なやつ。
直ぐに消えちまったのに、最近はあいつが俺を呼ぶ声が聞こえる)」
チラリと、維助は冷や汗を流す一護を見て。考えるように顎に手を添えた
その夜
「たーだいま。」
っといつものように浦原商店の玄関を開けて帰る
「おかえんなさーい」
っと奥から喜助が出迎えた。
「それで兄サン。ちょっとお願いが」
懐から取り出したチラシを指さす喜助
「この、最新のヒーター乾燥機付きのドラム式洗濯機がほしくてぇ……!少し大きいんスけど。あたしら人数も増えたしどうかなって……!」
「あぁ……」
「そこをなんと……えっ?兄サン?」
「あぁ」
「…どうかしました?」
何か上の空の維助が、自分のこめかみを人差し指で叩くのを見て、
「(あぁ、何か考え込んでる癖ッスねぇ……いつも機械ぐらいしか悩まない兄サンが)」
「なぁ喜助。」
「はいな」
しばらく黙ってた維助が顔を上げる
「霊刀、あれって一護に吸い込まれたって言ったよな真咲ちゃんの半分」
「そうッスねぇ」
「それで虚化を抑える力があると」
「まぁ、ちゃんと調べられてるわけじゃないんスけど。一応」
「1つは、霊刀の抑える力より虚の力が
虚と死神の境界を無くすことで絶大な力を得ることが出来る。
もしかして__っと考え始めた維助
「黒崎サンに何かありました?」
「あぁ、息子さんの方でな。たまに虚の気配を感じるんだ。霊刀の力か弱くなったって線も考えられるし、もし魂魄と感情で霊刀が変化するなら、あえてって考えてな」
「さて……どちらでしょうねぇ……どちらにしても。平子サンらは動くでしょうね。」
「だろうな。まぁいいか。」
「いいんスね」
「あぁ、俺が首突っ込む問題じゃないなーって」
靴を脱いで上がる維助
「(考えた末にめんどくさくなっただけだなこの人……)」
「それと洗濯機?ヒーター式って……いいよ、俺がヒートポンプ式の洗濯機作るから。それにドラム式って掃除めんどいし、生地が痛みにくいけど洗浄力落ちるしな……後でけぇ」
「へぇ、尸魂界で使ってたんスか?」
っとまるで使ってたかのような口ぶりに首を傾げる喜助
「まぁな、
「まぁ、兄サンの事だから洗濯機が尸魂界に普及しててもおかしくないッスけど」
確かに尸魂界には洗濯機が導入されていた。
「俺が作るからいいよ、洗濯機。明日ぐらいでいいか?」
「えっ」
「とりあえず乾燥機が欲しいんだろ?電気代も全然使わねぇし。縦型の洗浄力プラス容量もあるやつで乾燥付きにしてやるよ、尸魂界の連中は太陽の光の方が〜とか言うからあんまり使ってない様子だけどな」
「ほんとッスか!!鉄斎さーん!」
っと喜んだ様子で奥に歩いてく喜助。
「虚……ね」
ワイシャツを脱いだ維助が呟く。
「なんっか。嫌な感じがするんだよな」
挿絵はいる?
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あった方がいい
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無くてもいい。
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どちらでも