遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする   作:なーお

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第十四話

 決闘場での騒動の後、俺とアリアは俺の部屋に帰って来た。

 

「ねえキンジ、喉乾いた。コーヒーがいいわ。エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオ。砂糖はカンナで! 一分以内!」

「……エスプレッソ・ルンゴでいいな。――へい、どうぞ」

「――うん、美味しいわね。なによキンジ、コーヒーのことも分かっているじゃない!」

「まあな」

 

 俺の部屋のソファに我が物顔でドカッと座ったアリアはコーヒーを味わいながら飲んでいる。実に平和な光景だ。

 しかし、すぐさまアリアは再度の要求を投げかけてくる。

 

「ねえ、キンジ。お腹空いた。何か無い?」

「……昨日『たまたま』買った松本屋のももまんが冷蔵庫にあるから、それでよければ」

「――っな!? ももまん!? しかも松本屋の!? 食べるわ!」

「へいへい、ちょっと待ってな」

「――ふーん。松本屋のももまんを買うなんてキンジ、いい趣味してるじゃない!」

「まあな」

 

 俺は、アリアから要求が来る前に『既に』レンジでチンしていたももまんを取り出す。それを「ほれ」とアリアの前に差し出す。

 アリアは、ももまんを前にして目を輝かせると「あちちっ」と言いながらももまんを手に持ち、もきゅもきゅと夢中になって食べだした。

 ももまんを口に入れる度に頬に手をあてて恍惚とした表情を浮かべるアリア。

 

 ……ペットに餌をあげている時もこんな気分なのかね。

 

 お嬢様の世話を一通りを終えた俺はソファに腰掛けて、自分用に入れたコーヒーをずずずと飲む。

 アリアの我儘対策の為に全力を出した甲斐があった。流石にアリアが何のコーヒーが好きかまでは覚えていなかったので、どんな要求が来ても対応できるようにしておいた。松本屋のももまんだって昨日わざわざ買いに行っておいた。

 

 俺はアリアに尻に敷かれる気はないが、対策可能な部分で突っぱねる気は無かった。アリアは貴族様だから多少の我儘は受け入れるしかないだろう。今更アリアも性格を変えることは難しいだろうし、最初からそう割り切った方がこちらも精神的に楽というもの。

 勿論理不尽な要求が来たら反抗するつもりだ。 

 とはいっても、今の俺とアリアの関係性は考え得る限り最高のものだと思っている。お互いが実力を認め合っているからな。アリアも俺を無下にはしないだろう。

 

 ……それにしても白雪遅いな。

 

 空腹を感じ始めた俺がぼうっと、そんなことを考えながら、ももまんを食べるアリアを見つめる。俺の視線に気付いたアリアが目をギラリとさせて、ばっとももまんを隠してくる。

 

「……とらねえよ。ゆっくり食えよ。美味しそうに食べるなって見てただけだよ」

 

 俺が呆れながらそう言い、コーヒーカップを口元まで運び、コーヒーを一口流し込む。

 ……ううむ、我ながら美味い。アリアに不味いって言われるのが嫌で練習した甲斐があった。

 「ふぅ」と一息つきながらコーヒーカップを下ろすと、視線に気付く。

 

 見ると、アリアがじっとこちらを見つめていた。

 そのアリアの表情は、どこか疑わし気で不思議そうである。

 

 

 

「――やっぱり、違和感があるわ」

 

 

 

 そして急にこんなことを言ってきた。

 さらにアリアが、がたっと急に立ち上がり、こちらにずんずんと距離を詰めてくる。

 ――なんだなんだ!?

 俺が慌てていると、アリアは俺の正面に立つと、座っている俺に顔をぐいっと近づけてくる。

 

「ねえ、キンジ。キンジは私にとってあまりに『理想的』すぎる! 今までそんな人なんていなかった。――――キンジ、あんた何者?」

 

 こんなことを聞いて来た。

 ――あからまさに原作知識を披露しすぎたか。

 理子に続き、だな。特に勘のいいアリアが気付かない訳も無いというわけか。

 まあ、別に悪いことだとも思っていないし、これからも原作知識はガンガン活用させてもらうけど。

 しかし、どう答えたものか……。そのまま話しても信じてもらえんだろうし。

 俺が頭を悩ませていると、

 

「……話しづらいならいいわ。……急にこんなことを聞いてごめん。――でも、パートナーのことを理解しておきたいのよ。『ようやく』見つけたパートナーのことをね……」

 

 そう言うアリアはどこか余裕が無く、慌てているように見える。

 アリアのこの態度の背景にあるのは、母親である『神崎かなえ』の存在だろう。

 イ・ウーによって、罪を被せられた彼女は確か懲役数百年といった状態。

 アリアはそれらは全て冤罪だとして、真犯人であるイ・ウーのメンバーを武偵として捕えようとしているのだ。

 考えてみれば酷いことである。

 

「――キンジ、まだ出会って一日も経っていないけど、私はキンジのことを信用している。信用に足る人だって思っている。さっきの戦いや話していてそう感じたし、何より私の『勘』がそう言っているの!」

 

 アリアはそんな恥ずかしいことを言ってくるが、その切羽詰まったその表情を向けられると、こちらも黙って聞き続けるしかない。

 

「だから、キンジには私のことを話すわ。……どうして私がパートナーを求めていたのか。――それからキンジも私に自分のことを話すか決めてほしい」

 

 そう言って、本当にアリアは自分のことを話してくれた。

 まず母親が大変な目に遭っていること。そして、それを何とかするために活動していること。

 しかし、イ・ウーは強敵であり、今のままでは不利なこと。これを打破するためには、自分がベストパフォーマンスを発揮する必要がある。そして、その為にはパートナーが必要なこと。

 流石にホームズ家であるという部分はぼかしてきたが、自分の先祖には代々優秀なパートナーがいたこと。そしてパートナーと共にベストパフォーマンスを発揮したご先祖様は数々の偉業を成し遂げたことなんかを話してくれた。

 自分もそんなご先祖様に負けないように努力をしてきたことを。

 

 

 

 アリアが話し終える頃、とっくに俺のコーヒーは冷めきっていた。

 アリアは私が話せることは話したわよと言うように、俺の方を窺うように見つめてくる。そのアリアは緊張と不安を抱えているようだ。

 

 ――まあ、普通はいきなりこんなこと言われても混乱するだけだよな。

 

 が、しかし。原作知識のある俺は驚くことはない。寧ろ、こんなにも早く自分のことを話してくれるまで信用してくれていることが嬉しかった。模擬戦は無駄ではなかったらしい。

 個人的にはちょっと不安になるくらいの速さで信用されてる気もするけど。

 

 ……なら俺も話すしかないよな。

 

 理由はどうあれ、アリアが自分のことを話してくれたならこちらから話さない訳にはいかない。

 

「――ねえ、キンジ。キンジの強さは並大抵のものじゃないわ。戦いの節々からも感じた。キンジの果てしない努力を。きっとそこにはなんか大きな目標があるんじゃないかしら? 私は自分のことを話したわ。次は、――キンジがそこまでして強くなった理由、まずそれを聞かせてくれないかしら」

「……分かった、話すよ。アリアも話してくれたからな」

 

 俺がそう答えると、アリアはゴクリと喉を鳴らす。その表情を緊張で包み俺の言葉聞き逃さまいとしてくる。

 

「俺が、今の実力を手に入れた理由。そして今も昔も変わらない目的、それは――」

 

 

 

 

 

「――――女の子とイチャイチャする為だ」

 

 

 

 

 

 圧倒的沈黙。

 耳が痛くなるような静寂が室内を満たす。

 アリアは、真面目な顔をしたまま、固まっている。

 

「…………ごめん、キンジ。ちょっと聞こえなかったからもう一度言ってくれる?」

「女の子とイチャイチャする為」

「…………一応もう一回確認。もう一度だけ言ってくれる?」

「女の子とイチャイチャする為」

「もう一度いっ――」

「女の子とイチャイチャする為」

 

 

 

 

 

「…………は?」

 




今更ですが、毎回誤字報告頂いている皆さま方ありがとうございます。
(まじで助かってます)
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