遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする   作:なーお

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第十七話

 理子のふわふわとした輝く金色の髪は見る影もなく、ぼさぼさであり、色もくすんでいる。例の武偵校の改造制服に身を包んでいるが、あちこちが破れて切り裂かれている。所々に燃えたような跡もある。

 理子自身は全力疾走した後のように、肩を上下させ荒い息をついている。その青ざめた顔からは酷い疲労を感じる。

 

 …………え、一足先にブラドにやられたのか?

 

 早朝で頭の回らない俺はそんなことを思ってしまう。

 理子が「とりあえず入れて!」と、俺の胸に抱き着くように半ば強引に玄関内に入ってくる。柔らかい感触と共に、バニラのような甘い匂いと汗が交じり合った麻薬のような芳醇な香りが俺を包む。

 しかし、流石の俺も状況が不明過ぎて興奮よりも先に疑問が浮かぶ。

 玄関の扉がガチャッと締まると同時に理子がばっと顔を見上げてくる。

 

 

 

「キー君!! あの女やばいよ!! 頭のねじがぶっ飛んでるよっ!! 絶対すぐに縁を切るべきだよ!! 確実にバッドエンドまっしぐらだよ!!!」

 

 

 

 鬼気迫るとはまさにこのこと。

 目をかっと見開いて大声でそうまくし立ててくる理子。

 なるほど、理子はやばい女に襲われていたらしい。しかもその女とやらは俺の知り合いっぽい。

 ……うむ、心当たりしかないな。

 

「……あー、その、とりあえず落ち着け理子。な? もう大丈夫だから。あ、コーヒー飲むか?」

 

 俺が何とか落ち着かせようとそう言い聞かせる。

 いや、まじ、アリアが起きてきたらさらに面倒になるぅ。

 

「そんなんじゃ落ち着けないよっ!! キー君は、日本刀と機関銃と鎖鎌持った女に一晩中追いかけられたことある?? ないよね?? 挙句の果てには丸焦げになるところだったんだよ??」

 

 涙目でそう訴える理子の様子から、その時の情景が浮かぶようだ。

 

「……えっと、一応聞くけど、……誰に襲われたんだ?」

 

 俺のその質問に、理子はイラッとした様子でその表情に冷酷さと怒りを込めていく。

 ――これは裏の顔の理子。

 

 

 

 

 

「『星伽白雪』に決まってんだろうがっ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 キレた理子が大声でそう叫んでくる。

 その勢いの前に俺は何も言えない。理子は裏の顔を保ったまま決壊したダムのように続けてくる。

 

「あいつなんなんだよ!! 『キンちゃん様を傷つける者は、コンクリに詰めて東京湾に沈めてやる』とか言いながら、殺意バリバリで急所ばかり狙って攻撃してくるわ、躊躇なく機関銃ぶっ放して来るわ、銃弾を刀剣で弾いてくるわ、奥の手で攻撃しようとしたら、髪の毛ごと燃やそうとしてくるわ!! 化け物かよ!! それであいつ武偵法9条知らねえのかよ!!! 普通に殺しにきてたぞ!! 目も完全にイッテたし!!! 生徒会長だろうが!!! 優等生しとけよ!!!」

 

 いや、爆弾魔の君がそれを言うかね。

 ……それはそうとよく生きてたな。まだまだ元気っぽいし。

 まあよく考えたら理子も原作では、俺とアリアを相手に張り合ってたからな。

 十分に理子も化け物なんだよな……。

 その理子を一方的に追い詰めてたっぽい白雪は一体……。

 改めて思うけど、この作品に登場するヒロイン達、強すぎじゃね?

 

「……それは大変だったな。……なんというかすまん。でもなんで白雪は理子が俺を襲ったって分かったんだろうな?」

「知るか!」

「……ちなみに理子がここいるってことは白雪ももうすぐここに来るってこと?」

「――いや、それはない。完全に撒いた上でここに来たから。白雪は魔力の消費でかなり体力を消耗してた。そこに一撃入れて逃げてきた。しばらくは来ない……多分」

 

 ……よかった。これで白雪まで来たら男子寮が崩壊しかねんからな。

 しかしよく考えたら白雪、理子に『禁制鬼道』まで解放したのか。あれも遠山家の技と一緒で門外不出系じゃなかったっけ?

 なんかこのまま『ジャンヌ』も勝手に一人で撃退しそうだな。

 ――そうはさせんけど。

 

 ひとしきり愚痴を吐き切った理子が、それでもまだ怒りを滲ませつつ、裏の顔のまま俺をじっと見つめてくる。冷たいその瞳に俺の顔が映る。

 唐突に理子は、そのまま俺の胸倉を掴んで強引に引っ張り、俺との距離を一気に縮めてくる。

 理子の長いまつ毛やら大きな瞳やら、きめ細かい肌が至近距離に近づいて来て俺の心臓が跳ねる。

 

 

 

「――キンジ。昨日はああ言ったけど、やっぱりすぐに『理子』にしたほうがいい。あんな女とつるんでいると碌な目に遭わない。理子はキンジだけを愛す。キンジの為なら命だって賭けられる。キンジの望むことならどんな恥ずかしいことだってしてみせる。理子はキンジの体質も理解してる。多少の浮気も許す。――こんな都合のいい可愛い女の子は他にいないよ?」

 

 

 

 芯の通ったその言葉には、強い男に甘える女性の弱さ、そして男を惑わす色気を孕んでいた。

 そんな女性としての魅力を膨大に含んだ理子を前に俺がどうにかなろうとした瞬間。

 

 

 

「――ちょっとっ!! 朝からうるさいわよっ!! 何時だと思ってんのよ!!」

 

 

 

 バンッ!! と、寝室のドアをハイキックで開け放った寝間着姿のアリアが、怒り心頭なご様子でズカズカと廊下に突き進んできた。

 

 

 

 

 

「――――は? ――――なんで『オルメス』がここにいるの?」

 

 

 

 

 

 アリアを見た理子が、瞳から光を消し、聞く者が震えるような冷たい口調でそう問いかける。

 

 

 

 

 

「――――は? オルメス? ――――あんた誰よ」

 

 

 

 

 

 一方のアリアも、『オルメス』というホームズ家を指すその言葉に反応し、理子に負けない覇気を纏う。

 

 

 

 

 

 …………さて、どうしよう。

 

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