遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする   作:なーお

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第十九話

「え、わ、私……、も、もしかして、キ、キンちゃん様に、め、迷惑を?」

 

 白雪の顔がみるみるうちに青ざめ、全身がカタカタと細かく震えていく。

 俺は重度の火傷を負った右手を体の後ろに隠しているが、それでも周囲の状況から、白雪は自分がしでかしたことを徐々に理解し始めたようだ。

 俺としては、別に扉を斬られた事も、手を負傷したこともなんとも思っていない。そんなことは白雪と付き合っていく上での想定の範囲内の出来事だ。

 ただ、暴走のあまり理子に度を過ぎた危害を加えようとしたことについては別だけど。

 

「えーと、白雪? まず俺は大丈夫だ。迷惑だなんて思っていない。だから落ち着こう。な?」

「で、でも……、ねえ、キンちゃん様。……あの、どうして右手を隠しているの? も、もしかして……」

「あー、いや、……まあ、その」

「……キンジ、どうせばれるんだから。それに隠すのはお互いの為にもならないよ」

「あ、ちょ!?」

 

 後ろにいた理子に無理やり腕を掴まれて白雪に見えるように引っ張られる。

 俺の右手は見るも酷い火傷状態であり、ボロボロだ。正直、今も激痛の状況だ。とはいえ、痛みに耐えるのは訓練済み。なんてことは無い。

 せめて白雪があまり自分を責めることが無いように、なるべく涼しい顔を浮かべる。

 しかし。

 

「――――っ!?」

 

 白雪が俺の右手を見た瞬間、全てを理解した白雪は膝から崩れ落ちる。そのまま、流れるような動作で土下座をしてくる。

 ……やっぱり、こうなるか。

 

「ご、ごめんなさい!! わ、私――なんてことを……。封じ布を取った姿まで見られた上に、その力でキンちゃん様に危害を加えるなんて……」

「あーもう、大丈夫だから、本当に。白雪は俺を守る為にしてくれたんだろう? なら、文句なんてあるわけないだろう」

 

 そう言うと、「で、でも……」と呟きながら、白雪はガクブルと震えながら、恐る恐る涙目のその顔を上げてくる。一層と青ざめた表情を浮かべる白雪のその様子は、まるでこの世の終わりを彷彿させる。

 ――しかし、それでも。

 白雪は、自分に課せられた使命を思い出したように、その瞳に闘志の炎を灯して、よろよろと立ち上がる。

 そして、キッと理子の方を睨む。

 

「――――私、キンちゃん様へのお詫びとして切腹します。――でも、それはそこの女を殺した後で! キンちゃん様はそこの女と仲が良いようだけど、キンちゃん様は騙されている。そこにいる女は、――『武偵殺し』の模倣犯だよ! キンちゃん様を殺そうとした女だよ!」

 

 この白雪の言葉には、アリアも反応する。しかし、アリアもなんとなく感づいていたのか、驚いたというよりは確信に至ったという感じ。

 

「――あんた、さっきのキンジとの会話から何となく勘づいていたけど、『武偵殺し』だったのね! ……許さない。――そこの、確か、白雪! こいつは模倣犯なんかじゃない! 正真正銘の『武偵殺し』よ! こいつは逮捕するわ! あんたも武偵なら武偵法9条に従いなさい!」

 

 母親に罪を擦り付けた宿敵を目の前にして、怒りに燃えるアリアが、白雪に怒鳴る。

 

「うるさい!! 私たちの世界に入り込んでこないで! というかどうしてあなたここにいるの!」

 

 アリアの存在に気付いた白雪がその瞳により一層の切れ味を纏い、アリアを睨む。

 

 ……まずいまずいまずい。

 本来時間をかけて一つずつ消化していくイベントが一気に起きてる。早く何とかしないとまじで戦争になる。

 しかし、下手なことを言えばその時点でアウトな状況。

 お馬鹿な俺が、地雷を踏み抜くことなくこの状況を乗り越えられるとは思えない。

 もし、そうなったら全員が不幸になる……。

 

 

 

 …………なるしかないか、――ヒステリアモードに。

 

 

 

「はーい!! ちゅうもーく!!!!」

 

 

 

 突然、理子はこの混沌とした状況に似つかわしくない明るく元気な声で大きな声を出す。

 これには、思考に集中していた俺は勿論、アリアに白雪も理子の方に注目する。

 理子は、三人から視線を向けられたことを確認すると「ふふふ~」と満面の笑顔を浮かべる。

 そんな理子の気持ちを表すように、先ほど白雪が切り裂いて扉が無くなった玄関の入り口から、顔を出し始めた朝陽が差し込んでくる。柔らかい光が周囲を包む。

 朝陽を浴びて、理子の汚れているはずの金色の髪に当たり、輝くその様子はどこか幻想的である。

 

 …………なんだ理子。何をする気だ?

 

「――アリアに白雪、今から起きることをしっかり見ておくように」

 

 俺が内心ヒヤヒヤしていると、理子はアリアと白雪にそう言い放つと俺の方を向いてくる。アリアも白雪もきょとんとした様子で理子を見つめている。

 

 

 

「――ふふ、キンジ。しっかりと私の方を見ていてね?」

 

 

 

 手を後ろに組み、少し前傾姿勢で上目遣いで俺を見つめながら、悪戯っぽく甘えたような声色で、そう言う理子。

 しかし、いつもの妖艶さを感じさせる余裕さは感じられなく、表情もどこか固く、緊張しているように見える。

 その様子は、何か決意を固め、それを今からまさに実行しようとしているようにも見える。

 

 それに、なんか顔も赤くn――、

 

 俺がそんな感想を思い浮かべた時だった。

 

 

 

 ――――ふわり。

 理子の甘いバニラのような香りが漂ってくるのと同時に全身に軽い衝撃を受ける。

 抱き着かれたのだと理解するよりも早く――、

 

 

 

 俺の唇に柔らかい何かを押し付けられた。

 

 

 

 俺の瞳にドアップの理子の顔が映り込む。

 顔を真っ赤にして、瞳を閉じた理子の顔が。

 

 

 

 …………え。

 

 …………『キス』してる?

 

 

 

 驚いて思わず顔を動かしそうになるが、理子は両手を俺の首の後ろに回す形でがっちりと抱き着いてきており、顔を動かすことができない。

 その間にも、経験したことのない柔らかい理子の唇の感触と熱い吐息が、俺の唇を通じて伝わってくる。

  

 

 

 ――――ドクンッ。

 

 

 

 かつて経験したことのないような、強い血流の流れを感じる。

 思考する間もなく、俺の意識は加速していく。

 

 

 

 ――――これが、『キス』。

 

 

 

 ――――まさかファーストキスを『盗まれる』とは。

 

 

 

 ――――理子、この可愛さ、反則だぞ……。

 

 

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