遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする   作:なーお

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第二十話

 永遠にも感じる理子とのキス。

 やがて、名残惜しそうにゆっくりと理子が自らの唇を俺のそれから離していく。

 それでも理子は俺との距離を至近距離に留めたままに、俺に熱っぽい眼差しを向けてくる。

 

「――ふふ、理子のファーストキスあげちゃった。キンジ、感想はどう?」

 

 顔を真っ赤にしながらも、男を惑わす小悪魔のように妖しい笑みを浮かべてくる。

 そんな理子に対し俺は、

 

「――偶然だね。俺もファーストキスだったんだよ。理子のような素敵な女の子にファーストキスを捧げられた俺は、世界一の幸せ者だな」

 

 なんて言葉を、俺の人差し指を理子の柔らかい唇にそっと添えながら、優しい口調で返答する。

 

「うぇっ!? キ、キンジもファーストキスだったの?」

 

 なんとか余裕を保とうとしていた理子。しかし、俺の返答内容と指を唇に当てられたことで一瞬で余裕を失い慌ててしまう。限界だとばかりに、距離も一歩分ほど俺から空けてくる。

 

「ああ、そうだよ」

「……あ、そ、そう。てっきり他の女と済ませているのかと思った……」

 

 しどろもどろにそう言う理子だが、自然と口角が上がっている様子を見るに嬉しく想ってくれているようだ。

 そんな可愛い理子の様子を見つめていると、

 

「――――キ、キ、キキキキンちゃん様がががが、ほ、他の女と、キ、キス……」

 

 絶望が入り混じった白雪の震えまくった声が聞こえてくる。

 

 ――しまった。

 

 理子のあまりの可愛さに、ヒステリアモードになって尚、今の状況を忘れていたが、白雪も見ているのだ。白雪がこのような光景を目の前で見せられて平常でいられるはずがない。

 急いで白雪の方に視線を向けるが時すでに遅し。

 俺が白雪を視界にとらえた時には、白雪が――ガンッと鈍い音を立てて、後頭部からモロに床に仰向けになる形で倒れるところだった。その瞳は虚ろであり、焦点が合っていない。

 

 ――――なんてことだ。

 

 全身に冷水を浴びせられたような感覚に陥る。すぐに白雪を介抱しなければ。

 しかし、理子に「――キンジ、今は少し時間を頂戴。あの女は心身ともに丈夫だから心配ないよ。私の話の後で白雪をフォローしてあげればいいから。……本当は縁を切ってほしいけどね」とお願いされる。

 そう言う理子はふざけているわけではなく、いたって真剣そのもの。

 確かにここから見る限り、白雪の呼吸は安定しており、健康上の害は特に無いように見える。

 ……すまない、白雪。少し待っていてくれ。

 不本意ではあるが、ここは理子の話を聞くことにする。白雪に何か異変があればすぐに対応できるように、白雪の方にも意識を向けておく。

 俺の様子に満足した理子は微笑みながら「ありがとう、無理言って」と言い、視線を別方向へと向ける。

 

 その視線の先にいるのは、――――アリア。

 

 アリアは、白雪のように気絶はしていないが、湯気が出るのではと疑うほどに顔を真っ赤にしている。そして、「――キ、キ、キキキス、し、した。――こ、こここどもが……」なんてことを呟いている。

 

「――アリア!!」

「――――っ!?」

 

 理子の怒鳴りにも近い呼びかけにアリアが我に返る。それでもまだ動揺が解けないのか、そのカナリア色の瞳にいつもの力強さは感じられない。

 一方の理子は、アリアを前にして先ほどまでの動揺は一切無く、鋭い視線をアリアに向けている。

 余裕を感じさせ、妖艶なその様子は、完全なリュパン家の女としての姿。

 

「――――こうして話すのは初めてだな、『オルメス』。改めて、自己紹介をするよ――」

 

 そして理子は告げる。

 

 

 

「理子・峰・リュパン4世――――それが本当の理子の名前」

 

 

 

「――リュ、リュパン!?」

 

 アリアが驚愕する。

 しかし、すぐに驚きを引っ込めて犬歯をむき出しにし理子を睨みつける。

 

「――そういうことだったのね。ママを酷い目に合わせた武偵殺しの正体はリュパン家の人間だったのね……。許さない……」

 

 底なしの怒りを表面化させるアリア。

 理子はアリアを見据えながら一歩前に進み出る。

 対するアリアも理子からの攻撃に備えて構えを取る。完全な臨戦態勢。

 空気がピリピリと張り詰めていく。

 ……まずいな。

 俺は、いつ二人が戦いを始めても止められるように意識を集中させる。

 しかし、

 

 

 

「――――理子は、もう『武偵殺し』としてアリアと敵対する気は無い」

 

 

 

「…………は?」

 

 理子が放った言葉にアリアがポカンとする。

 対する俺も理子の発言に驚きを隠せない。思わず理子の方に視線を向ける。

 俺の視線に気付いた理子は、ウインクをしてくる。

 ――見ておいて。

 そう言っているようだった。

 

「……確かにアリアの一族は宿敵。そして、理子は理子の存在価値を証明する為にお前に打ち勝ち、曾お爺さまを超える必要があった……」

 

 理子から語れる内容が理解できないアリアは、不可解な表情を浮かべている。

 

「……でも、もうその必要は無くなった。理子のことを大切だと言ってくれる人がいるから。その人となら今の状況をきっと乗り越えられる――いや絶対に乗り越えられる」

 

 そう言った理子は、くるくると楽し気に回りながら俺の胸に背中を預けるようにポスッと飛び込んでくる。

 そして、――まるでアリアに見せつけるように挑発的な視線をアリアに送り、「――ねえ、キンジ? 理子のことを大切に思ってくれるよね?」と甘えた声で質問してくる。

 

「――そうだね、理子は俺の大切な存在だ。……でも、喧嘩はよくないよ?」

 

 俺のキザッたらしい言葉を聞いたアリアは、俺がヒステリアモードになっていることに気付いたのか、ハッとした様子を見せる。そしてその可愛らしい表情を険しいものに変え、ギリッと歯軋りをして、ギンッと理子を睨む。

 しかし、そんなアリアに一歩も引かず、理子は俺の胸から離れて再びアリアに向き直る。

 

「――これから、司法取引の手続きを進めるつもりだ。アリアの母親の無実を証明するつもり。……自分のことで精一杯だったとはいえ、宿敵だろうと親を利用するなんてこと、するべきじゃなかった。……親に会えないのは寂しいよね。私自身がその痛みを知っているはずなのに……。お母さまとお父さまもきっと怒っている。こんなやり方、誇り高きリュパン家の顔に泥を塗るだけ。……本当にごめん」

 

 そして、なんと理子はアリアに――頭を下げた。

 

 ……まさか、理子がアリアに謝るとは。

 理子がその表情に影を落としてそう言う姿から、本心からその言葉を発しているのだと分かる。

 俺が驚くのだ。事情を知らぬアリアは理子の言ったことを理解できないようで、「……え、え? え?」と戸惑っている。

 

「――けど、アリアがキンジのパートナーになったことは認められない。……本当、色んな女に手を出して困っちゃうよ。……でも、私は絶対キンジの一番になってみせる。……ファーストキスまで捧げたんだもん。きっと今、キンジは私にメロメロだよ。このまま必ずアリアからもパートナーの位置を堂々と実力だけで奪って見せるからね――」

 

 

 

 ――覚悟しとけよ。

 

 

 

「……でも、今日はもう疲れた。服もボロボロ。そこの巫女のせいだ。これは、――にも忠告しておこうかな。……まあ、とりあえず今回はここでいったん退かせてもらうよ」

 

 ため息をつきながらそう言った理子は、服の下からガス缶を取り出し、それを床に落とす。ガス缶から大量の煙が吐き出され、廊下を埋め尽くしていく。

 アリアが、「なっ!? くっ、これは――」と慌てている。理子がここで毒系のものを使用するわけがない。ただの目くらましだろう。

 視界が白い煙に覆われていく中。

 

「――じゃあね、愛しのキンジ。例の鬼退治のことだけど、しばらく作戦を練るから数日後にまた会おうね」

 

 そんな理子の言葉が俺の耳をくすぐり、すぐに理子の気配が遠のいていく。どうやら外に逃げたらしい。

 

「なっ、ま、待ちなさい!!」

 

 状況は理解できないものの、このまま理子を逃がすわけにはいかないと判断したのか、慌てたように廊下の壁に何度か当たりながら後を追うアリア。

 

「キンジッ! あんたも増援――いや、やっぱりいい! あんたはそこの白雪を家から追い出しておきなさい!」

 

 そう言い残し、アリアも寝間着姿のまま家から出て行ってしまった。

 

 ……それはできない相談だよ、アリア。

 

 そして、奇跡的に原形をとどめた俺の部屋には、気絶した白雪と俺だけが取り残された。

 




すみません、また更新が遅くなりました。最近あまり時間が取れず、しばらく更新が遅くなりそう……。
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