遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする 作:なーお
理子とアリアの気配が遠ざかっていき、完全に消える。
理子は逃げる達人。アリアが理子を捕らえることはないだろう。
アリアと理子の一件はひとまずは保留扱いでいいだろう。
それよりも今は――。
俺は気絶して倒れてしまった白雪の元まで駆け寄る。
白雪は、「……う、ううん、わ、私がもっと早くに勇気をだしておけば――」と悪い夢でも見ているのか苦しそうな表情を浮かべてうなされている。
だが呼吸は安定しており、目立った外傷等も無い。ひとまずは安心だ。
しかし、悪夢にうなされている白雪をこのままにしておくわけにはいかない。
……よし、ここは。
やっべ……。
この状況はまずい……。
俺は人知れず、葛藤していた。
リビングまで白雪を丁寧にお姫様抱っこで運んだ俺は、ソファの上に優しく寝かしつけた。
――俺の膝枕付きで。
ヒステリアモードの俺は、白雪に膝枕してあげながら、優しく頭を撫で続けた。しかも「白雪は頑張り屋さんだ」、「白雪はとても魅力的だ」なんていう甘い囁きのおまけつきで。
その効果なのかすぐに白雪は悪夢にうなされなくなった。今では穏やかな表情を浮かべた白雪の小さな寝息の音が室内に響いている。
火傷をした右手は氷を入れたバケツに突っ込んでいるので恰好はつかないが……。
問題は今のこの状況。
ヒステリアモードが解けた俺の膝の上で絶世の美女が眠っているのだ。白雪が起きる為、この態勢を変えることは不可能。
改めて白雪を見つめる。
巫女装束に身を包まれてなお分かるそのスタイルの良さ。
そして、白雪が静かに呼吸をする度に上下する二つのお山。
…………エッ〇いなぁ。
ゴクリと喉を鳴らす。
理子にあそこまでのことをされた直後に白雪にこんな感想を抱くのは自分でもどうかと思うが、仕方ないじゃないか。男だもの。
白雪が可愛すぎなんだよな……。
――ちょっと触ったらだめだろうか?
白雪なら許してくれる……、というか寧ろ喜ばれそうな気はする。
でも寝込みを襲うのは流石にな……。
俺はこのもんもんとした気持ちを紛らわす為に、これからのことについて考えることにする。
まず理子。
理子が自分からアリアの母親の無実を証明すると言った以上、原作のようにバスジャックやハイジャックが起きることは無いだろう。
とはいえ、アリアは何が起きているのか理解できていないだろう。アリアに色々と俺と理子の関係性や何が起きているのかを説明する必要がある。簡単に納得してもらえないかもしれないが、根気強く訴え続けるしかない。
その理子については、この先共にブラドと戦うことになるだろうが、作戦を練ると言っていたし、しばらくは時間がかかるだろう。
……やっぱり、次に事件が起きるとすれば白雪か。
次の原作の展開で言うと、白雪が『ジャンヌ・ダルク30世』に襲われることになる。ジャンヌは、自身をより高みの存在へと昇華するべく、『
そしてその際、仲間にならないと武偵校がある学園島を爆破し、俺を殺すと脅しをかけられるのだ。
……でも、こっちの白雪が簡単にジャンヌに屈するとは思えないんだよな。
白雪は幼少の頃から、兄さんの次に修行に付き合ってもらっていた。割合としては、兄さんが八で白雪が二くらい。幼少の頃は周囲で俺の修行に付き合ってくれるのがその二人位しかいなかったのだ。
男子禁制の星伽神社に通い詰める為に『あること』をする必要があったのだが、それだけが本当にきつかった……。
一時期それで兄さんに死ぬほどいじられたものだ……。
遠山家と星伽家は昔から繋がりがある為、別に訪問が禁止されているわけではなかった。しかしどうしても白雪以外の子達から怯えられてしまうからな……、仕方なかった。
まあ、そのおかげで俺は強くなることができたから良しとしている。
――そして、当然白雪も。
はっきり言って、白雪はかなり強い。
スタミナの問題もあるが、瞬間火力という点においては、俺と同年代では間違いなくナンバーワンだ。短期決戦に持ち込まれたら、ヒステリアモードの俺でも敗北の可能性はゼロとは言い切れない。
俺の強さをよく知っている白雪なら、俺が簡単にジャンヌに負けることは無いことは理解しているはず。俺を倒したいのなら公安0課、武装検事クラスを連れて来いってもんだ。……やめておこう、こんなこと思ってたら本当に来そうだ。流石に死ぬ。
学園島の爆破については、個人での対策が難しい為、既に手は打っている。まあ、爆破についてはブラフの可能性が高いと踏んでいるが。
――そして、こっちの白雪は星伽家へのこだわりが弱い。
理子への襲撃もそうだ。学校と星伽神社の敷地から抜けることが許されない白雪が本来、そんなことをできるわけがないのだ。これまでもなんとなく察していたが、原作の流れが変わってきたことで確信した。
今の白雪は、星伽家優先ではなく俺を第一優先で行動している。
原作では今日から、恐山への合宿に行っていたはずだが、俺の世話ができなくなるのは嫌だと、断ったと聞いている。白雪は既に必要な単位のほとんどを取っている為、俺も何も言わなかった。白雪のご飯を食べれなくなるのは嫌だったし。
……まあ、とりあえずは白雪の様子を見守りつつ、ジャンヌがどんな手を打ってくるのか様子見かね。
そう結論付けると俺の思考が終了する。
そうなるとまた状況はふりだしに戻る訳で。
白雪はまだ意識を戻さない。膝から伝わってくる白雪の体温が、やけに熱く感じる。
俺の鼓動が徐々に速まっていく。
……や、やばい。
別のことを考えるんだ……。
すると頭に浮かんできたのは、先ほど理子にキスをされた時のシーン。
正直、突然のことで夢を見たような感覚で現実味が無かった。
しかし、こうして思考する余裕が生まれてくると徐々にその現実を理解し始める。
とうとうしたんだよな、キス……。
柔らかかったなぁ、理子の唇……。
初めてキスをするのは白雪だと思っていた。
原作の流れ的にもそうだし、俺自身白雪が一番好きだったからだ。
あれだけ尽くしてくれている女の子を好きにならない方がおかしいというもの。
だが、昨日からの理子の怒涛のヒロインムーブのせいでそのあたりの気持ちが分からなくなってしまった。
……あーもう、まじで理子可愛すぎなんだよな。こんなに可愛かったっけ?
宙にでも浮いているようなふわふわした気持ちのまま、心の中でそう呟いた時だった。
机の上に置いていた俺の携帯が鳴った。
……こんな朝に誰だ? ていうか早くでないと白雪が起きるな。
なるべく白雪を起こさないように最小限の動きで携帯を取って、画面を見つめる。画面には非通知のメッセージが表示されていた。
訝し気に思いつつも、電話に出る。
「はい、もしもし? どちら様ですか?」
小声でそう問いかけると、数秒を置いて理子が操っていたセグウェイにも採用されていた機械質の音声で返答が返って来た。
「――――初めましてだな、遠山キンジ。……『