遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする   作:なーお

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第二十二話

 ……は? 魔剣(デュランダル)

 それは、ジャンヌの通称。

 ……え、なんで? 早すぎでは……? というよりなんで俺に電話?

 色々な疑問が一気に頭に浮かぶ。

 多くの出来事が起きたが、まだ今日時点で原作が始まって二日目。本来であれば、まだ理子の正体にすら気付いていない状況だ。

 当然、ジャンヌと敵対するのももっと後になる。

 俺がこれまで接してきたヒロイン達の行動が変わるのは分かる。

 しかし、これまで一度も会ったことが無いジャンヌの行動が変わったのは、一体どういうことなのか……。

 

「……ふ、混乱しているようだな」

 

 無機質な合成音声にも関わらず、ジャンヌの俺を馬鹿にしたような表情が自然と浮かんで来る。

 

「……本当にお前は、魔剣(デュランダル)なのか?」

 

 若干イラッとしたものの、ここは情報を得るべく冷静になり質問を投げかける。

 ちなみに魔剣(デュランダル)のことは、既に学校からの周知メールによって全校生徒が知っていることだ。

 

「信じるも信じないも、お前の自由だ」

 

 そんな回答が返ってくる。

 やはりどこか俺を馬鹿にしているような雰囲気が含まれている気がする。

 ジャンヌは当初、超能力(ステルス)こそが至高と考えている節があったからな。超偵でもない、ただの武偵である俺のことを下に見ているのかもしれない。

 

 ……よし、ここはカマをかけるか。

 

「……そうか、魔剣(デュランダル)な。お前のことはよく知ってるぞ? 少女趣味にご執心らしいってなぁ? 最近買った可愛い服は何なんだ? メイド服とかか? さぞかし似合っているんだろうなぁ?」

 

 今の俺は、さぞかし下衆い表情を浮かべていることだろう。

 空気が凍り付いたように数秒ほどジャンヌからの応答が途絶える。

 

「……ちょっと待て。なぜそのことを知っている? ……おい、答えろ! ……ま、まさかリュパン四世にばれていてそこから漏れたのか……? いや、そんなはずは……」

 

 あ、これは本人ですわ。

 誰にも明かしていない秘密を突かれて、一気に冷静さを失っている。ジャンヌがあたふたと慌てふためく様子が見て取れる。うっかり理子の名前を出しているあたり、相当焦っていると見た。

 ジャンヌは、プライドが高くクールな性格だ。

 しかし、実際に接してみると天然であり、度々ぽんこつぶりを発揮していた。

 後は絵に対する美的センスが壊滅している。

 そんなジャンヌは、由緒ある家系の事情もあり、幼少から男のように厳しく育てられてきた。さらにジャンヌ自身、モデルのような長身のスラッとしたスタイルの持ち主である。

 そんな背景から、自分とは無縁であると思い込んでいる理子のような小柄な女の子が好むようなひらひらとした服など可愛いもの全般が大好きであるという秘密を抱えている。

 

 無論、そんなジャンヌは外見は勿論、性格も含めてかなり好みである。

 原作ではサブヒロイン扱いだったが、ヒロイン力で言えば、白雪や理子にも負けないポテンシャルを持っている――と思っている。

 

「……で、俺に電話をしてきた目的はなんだ?」

 

 本人確認ができたところで目的を聞き出す。

 

「……その前になぜ私の秘密を知っているか教えろ」

「嫌だね」

「……くっ」

「まずは目的を言うんだな。でないと魔剣(デュランダル)が少女趣味を持っているって、ネット上でばら撒くぞ。ついでにイ・ウー内でもそのことを広めるように理子に頼もうかなぁー?」

「き、貴様! そんなことをしたらただでは済まさないぞ! ……く、リュパン四世から聞いていた情報と違うじゃないか。もっと紳士的な奴だと聞いていたのに。……それに、そもそもなぜお前は私がイ・ウーに所属していると知っている? というより私の正体を知っているのか?」

 

 ……もう駄々洩れだな。

 もっと慎重で策略家だったイメージだけど……。

 それほど秘密の趣味がウィークポイントだったのか?

 ……まあ、でも悪いジャンヌ。

 

 

 

 ――正直、めっちゃ楽しい。

 

 

 

 電話を耳に当てながら顔を真っ赤にして慌てふためくジャンヌの姿を想像したら萌える。

 ジャンヌは弄ってこそヒロインとしての真価を発揮する。どこぞのクルセイダーと同じだ。

 

「何度も言っているが、まずは目的を言え。話はそれからだ」

 

 俺がそう言うと、数秒ほど沈黙が続き、やがて諦めたように短い溜息の後、ジャンヌが答えてきた。

 

「……分かった。では、まずは私が電話をした目的を言おう」

 

 

 

「遠山キンジ。そして、そこにいる星伽白雪、お前達二人。私の仲間になれ」

 

 

 

 ……なるほど。そう来たか。

 ……いや、どういうことだ?

 

 原作では、無理やり白雪を仲間に迎え入れようとしていたが、超能力(ステルス)を使えないただの武偵である俺には見向きもしていなかったはずだ。

 何か、心境の変化でもあったのだろうか。

 後、なんでこの場に白雪がいることを知っているんだ?

 

「なぜ俺達を仲間に引き入れようとする?」

「お前達は、武偵校などという場所にいるべき存在では無い。私がもっと相応しいステージを用意してやろうというのだ」

「……へぇ、随分と俺のことを評価してくれているんだな?」

「……お前をよく知る人物から、お前のことを嫌と言うほど聞いたからな」

 

 俺のことをよく知る人物? 誰だ? 理子だろうか?

 

「誰だそれは?」

「――この電話でそこまで話すつもりは無い。この後メールする場所まで、誰にも言わずに白雪と二人で来てもらいたい。――言っておくがこれはお願いではなく命令だ。背けばお前の身の回りにいる人間――例えば白雪に被害が及ぶと思え」

 

 ジャンヌがそう言った瞬間。俺の中で何かが弾ける。

 

「――ジャンヌ。白雪に手を出してみろ。必ず後悔させるぞ」

 

 ビリッと俺から放たれた強烈な殺気が周囲に放たれていく。

 ここから離れた場所にいるジャンヌは殺気を感じとれないはずだが、それでも緊張したようにゴクリと息を吞むのが電話越しに伝わってくる。

 同時に俺に膝枕されている白雪がピクリと動いた気がした。 

 

「……やはり、私の正体に気付いているのか。何者だ貴様? ……まあいい、何も私もお前と敵対したいわけでは無い。白雪を持ち出したのは済まなかったが、それだけ私も本気と言うことだ。まずは直接会って話をしたい。これはお前にとってもメリットのある話のはずだ」

「メリットな……。お前はアリアの母親に罪を被せている。知っているか分からんが、そのアリアと俺は昨日からパートナーを組んでいる。そのことからも俺とお前は明確な敵対関係な訳だが、そこは理解しているのか?」

「無論だ。それも含めての話し合いをしたいと思っている。すぐにな」

 

 ……なんか変な流れになってきたな。

 それが純粋な感想だ。

 でも、イ・ウーに接触をしたい俺にとっては渡りに船かもしれないな。白雪を傷つけずにジャンヌと会えるのも悪い話では無い。

 

「分かった。その話乗ろう。だが今日は勘弁してくれ。白雪の介抱もあるし、理子と色々あって、うちのパートナーが混乱しているだろうから、その説明だけしたい」

「いいだろう。では明日だ。早い方がいい」

「ちなみに、誰にも話したらだめだと言っていたが、このことはアリアに話してもいいのか? あまり隠し事はしたくないんだ」

「だめだ。確実に事態がややこしくなる。その場合は交渉は決裂したとみなす」

 

 ……それは確かにそうか。

 まあ、会って話を聞くだけならいいか。でもアリアに勘付かれることなく俺と白雪が二人で出かけて行けるだろうか? ももまん投げつけて意識を逸らしたらいけるか。

 白雪に無断で話を進めているが、俺が行くと言えば白雪も着いてくるだろう。

 

「分かった。ならそれでいい」

「よし。……さて、私の目的は話したぞ。次はお前が私に説明する番だ。答えろ! なぜ私の秘密を知っているんだ!」

 

 シリアスな空気をぶち壊すようなジャンヌからのそんな質問。

 ……でもなんて答えたらいいんだ? 原作読んで知ったらからですと答えるわけにもいかんし。

 

「……えーと。すまん、正直なんて説明していいか分からん」

「……おい、それでは約束と違うじゃないか」

 

 電話越しにジャンヌがイラついている様子が伝わってくる。

 

「それについてはまじですまん。けどこの秘密を知っているのは俺だけだ、これは断言できる。他言はしない。後、さっきはからかうような真似をしてすまなかったが、俺はジャンヌが可愛いものを好きなのは有りだと思っているぞ」

 

 電話越しにジャンヌが驚いたように息を吞むのが分かる。

 ……これ、機械音声じゃなくてジャンヌの生声でやりとりしたかったな。

 

「な、なななにを言っているんだ! ……と、とにかくこれについてもまた詳しく聞かせてもらう。それまで絶対に、このことは他言するな! すれば、お前を氷漬けにしてやるからな!」

 

 そうして一方的に電話は切れてしまった。

 

 

 

 ……ジャンヌ。

 ……やっぱ可愛いな。

 

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