遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする   作:なーお

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第二十四話

 静寂な朝の室内に白雪の興奮を帯びた吐息が溶けていく。

 

 ――大人のキス。

 

 なんて……、

 なんて甘美な響きなのだろうか……。

 全身が期待と興奮で熱を帯びていく。

 知識だけはある。

 あれだよな?

 舌をその……色々する、でぃーぷなキス、で合ってるよな?

 

 白雪と俺が……。

 

 

 

 ――ドクン

 

 

 

 ……あっぶね、想像しただけでヒステリアモードになりかけた。

 想像力豊かなのも考えものである。

 

 咄嗟に先ほど火傷した手に爪を立てて痛覚を与えることで理性を保つことに成功する。血が滲みだしているが些細な問題だ。

 

 ――グッ

 

 白雪が俺の肩を掴みながら力を込めてくる――俺をソファ上に押し倒すように。

 

 ……あぁ。

 

 こういう時どう立ち振る舞えばよいのか分からない。俺はされるがままに押し倒される。今の俺は情けない顔をしているに違いない。押し倒されて尚、火傷した手に食い込ませる爪は立て続ける。これが俺の生命線だ。

 そのまま白雪は俺の体を抑え込むように上半身と下半身の丁度中間あたりに跨ってくる。

 白雪のマシュマロのように柔らかい安産型のお尻の感触がほどよい重さと共に伝わってくる。

 ここまでの白雪の動きはまるで何度もシミュレーションしていたように滑らかかつ迷いのないものだった。 

 

 やばいやばいやばい。お尻がむにゅってなってるううう。

 

 ――ドクン、ドクン。

 

 お、俺が俺じゃなくなる……。

 

 血流は激しさを増していき最早痛覚だけでは誤魔化しが効かなくなってきた。

 ……ぐ、耐えろ。

 まさに今、夢が叶おうとしているのだ。

 俺は火傷した手に食い込ませている爪にさらに力を込める。

 

 そんな煩悩と必死に戦う俺に白雪が迫ってくる。

 荒い呼吸を繰り返し頬を紅潮させ熱を帯びた白雪は完全に発情していた。

 ――むわぁ、と汗ばんだ白雪から発せられる麻薬のようなフェロモンが俺を包み理性を刈り取らんとする。

 白雪が桜色の唇を突き出しながら、この瞬間を噛みしめるようにゆっくりと俺の顔に近づける。

 たまらず俺の血流が最高潮に達っ……しようとした時、

 

 ――バキッ!

 

 迷いは無かった。

 俺は左腕を音速を超えない程度に加速させ――右手の指の一本をへし折った。

 激痛が俺を襲うがおかげで血流が引く。

 何かを得るには何かを犠牲にせねばならない。

 安いものだ、指の一本くらい。

 なるべく音が出ないように折ったので白雪も俺の行動には気付かない。

 さあ、準便は整った。

 

 

 

 ……あぁ、白雪。可愛いよ、白雪。

 

 

 

 俺がゆっくりと目を閉じようとしたその時。

 

 

 

「あぁっ!!!! もうっ!! あの泥棒猫っ!! 逃げられたっ!!」

 

 

 

 発する言葉とギャップのある可愛いらしいアニメ声が俺と白雪が作り上げた甘い空気を根元からへし折る。

 どたどたとわざとらしく大きな足音を踏み鳴らしながらまっすぐにリビングに向かってくるアリア。

 俺と白雪が固まっているとアリアがリビングに入ってくる。

 

「キンジ!! あの泥棒猫とどういう関係か洗いざらい――って、あ、ああああああんた達、なにしてるのよ!!」

 

 アリアが俺達を発見するや否やツインテールを跳ね上げさせ顔を茹蛸のように真っ赤にして喚きだす。

 ギャーギャーと騒ぐアリアを見たことでこれから起ころうとしていた夢のようなイベントが白紙になった事をここでようやく理解する。

 

 

 

 …………あ。

 ………………あ。

 …………………あああああああありぁああ!?

 

 俺の性にまみれた純情が音も無く崩れ去っていく。

 

 どうしてだよおおおおおお。

 タイミングううう。

 指まで折ったのにいい。

 

 

 ――ホロリ。

 

 

 

 俺の瞳から一滴の涙が静かに伝う。

 

 だが、

 それでも、

 俺の瞳に宿る光は消えない。

 

 ……はは、そうだよ。次があるさ。俺は諦めないぞ。

 

 そう自分を鼓舞し切り替える。これしきのことで折れてたまるものか。

 こんなこと原作でもお決まりのパターンだった。想定済みだ。

 

 ……そう、なんともないさ。……ぐすん。

 

「アリア……。多分だけどアリアのご想像の通りだよ。言っただろう、これが俺の夢なんだ」

「あんたね……。だ、だからってもっと時と場所を選びなさいよ!! この部屋には私もいるのよ!」

 

 ……それはごもっとも。

 でもここ俺の部屋だし、アリアは無理やり泊ってるんじゃん……というセリフはに心にとどめておく。

 でもどこならいいんだ?

 

「すまんかった……」

「そ、それにそもそも――」

 

 アリアが言葉を続けようとするがもごもごと言い淀んでいる。

 どうしたんだ? と思いながらふと黒いオーラを感じ取り、その発生源に視線を移す。

 

 ――ゾッ

 

 全身に冷たいものが走る。

 触れるものすべてを凍り付かせるような冷たい瞳をアリアに向ける白雪がいた。

 怒っている。

 これまでにないほど。

 

 本気でアリアを〇しかねないぞ……。

 

 原作でも俺とアリアがパートナーを組んだことを知った白雪は刀と鎖鎌振り回してたし。

 暴走一歩手前の白雪を止めるべく意識を切り替える。とりあえず喚くアリアを何とかしないと。これ以上白雪に刺激を加えるのはやばい。

 

「キンちゃん様……」

「はい」

 

 感情が抜け落ちたような口調で呼びかけられた俺は即座に返答する。

 白雪の返答を待つこの僅かな時間が永遠にさえ感じる。それほどの重圧。

 

「まだちゃんと聞けてなかったけどどうして神崎アリアがここにいるの?」

 

 俺に視線を向けた白雪は笑顔だ――目以外。これはやばい……。

 

「昨日からパートナーになったんだ。……俺から申し出た。アリアの武偵としての技量に惚れたんだ」

 

 一瞬迷いつつも正直にそう答えた。

 俺の言葉を聞いた白雪が動揺したようにその綺麗な瞳が僅かに揺れる。

 視界の端に映るアリアはまだ怒りながらもその口端が緩む。

 

「…………」

 

 俯く白雪。微動だにせず重い沈黙が続く。

 やがてゆっくりと顔を上げた白雪はやはり笑顔だった。その瞳にも光が戻っていた。いつもの白雪。

 

「…………そっか。キンちゃん様が決めたことなら私は何も言わない……今は

 

 戦意や殺意は感じられない。

 ……これはセーフ……なのか……?

 でも最後にぼそっと「今は」って言った?

 

「……そろそろ帰ろうかな。突然押しかけて迷惑をかけてごめんなさい。すぐに治療の手配もするね」

「そうか、助かるよ」

 

 俺は少し迷ったものの、意を決してタッピングで白雪に緊急事態がある旨を伝える。

 魔剣(デュランダル)の件だ。

 こんな状況だが白雪に伝えない訳にもいかない。事前に作戦の共有も必要だろう。

 しかしアリアに聞かれるわけにはいかない。アリアにジャンヌのことを言う事は禁じられている。

 白雪は俺のメッセージを理解し、同じくタッピングで「了解、後で」と伝えてくる。

 これで学校で会いに行けばいい。携帯とかの連絡だと盗聴される恐れもあるしな。

 

「それじゃあ私はここでお邪魔するね、また学校でね。――『続き』はまた今度ね」

 

 白雪の最後の一言は白雪が唇が俺の耳にそっと触れるほどに近づいてのもの。

 耳が一気に熱を帯びる。

 何の続きか……聞くまでも無い。

 全身に電流が流れたように身動きができない俺は「……お、おう」と情けない返事をするにとどまる。

 白雪は俺の上から退き、ソファから降りるとそのまま玄関に向かって行く。

 その道中、アリアの横を通ることになるわけで。

 白雪がアリアの横で立ち止まる。

 先ほど見せた絶対零度の目をアリアに向ける白雪。

 アリアも負けじと怒りの炎を爆発させるようにギンッと力強い目を白雪に向ける。

 俺はいつでも間に入れるように身構えながら瞬き厳禁で見守る。

 しかし白雪は何も言わずにアリアから視線を外すとそのまま玄関へ歩いていき下駄をはき、カランと音を立てて陽光の中に消えていった。

 




皆さま、お久しぶりです。本作品を覚えていますでしょうか?
前回の投稿が2023年ですので3年ぶりとなります……。
もし続きを待っておられる方がいましたら本当に申し訳ございませんでした。
頑張って投稿続けます!
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