遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする 作:なーお
……そう言えば玄関のドア無くなったんだよな。
白雪の背中を見送りながら戦争が勃発しなかったことに安堵し、ぼんやりとそんなことを考える。
どうせすぐに白雪がドアの修繕手配をするだろうけど。いつものことだ。
白雪を睨みながら見送ったアリアは俺に向き直る。
「それじゃあ、あんたとあの武偵殺し――峰・理子・リュパン4世のことについて教えてもらうわよ……ってキンジ、その右手大丈夫なの? 火傷したのは見てたけどその指折れてない?」
白雪がいなくなったのを確認したアリアは俺の火傷と刺し傷と骨折で酷い有様の右手を見てギョッと目を見開く。
「ああ、ちょっと色々あってな。まあ、これくらいの怪我はいつものことさ。骨も綺麗に折ったしすぐに治るさ」
「折った……? まさか自分で折ったの? ……はあ、よく分からないけど
”私のパートナー”という部分を強調しながらそう言ったアリアは部屋を出て行き、暫くすると包帯やらの治療道具を携えてリビングに戻って来た。
まさか、治療してくれるつもりなのか……? いや、アリアって治療できるのか?
「特別に治療してあげる、
またも”パートナー”を強調しながらそう言って俺の元に来たアリアが甲斐甲斐しく治療を始める。だいぶ雑ではあるが応急処置を淡々と進めていくアリア。
そのアリアは不機嫌とご機嫌が混ざりあったようなよくわからない様子に見える。何がなんだか……。
それにしても正直信じられない。アリアってこんなに世話を焼いてくれるような子だっただろうか……?
「……キンジとあの峰・理子との関係性を聞かせてくれるかしら? あいつはママを陥れた……、それに私達一族の宿敵でもある。ママの件は身を引くみたいなことを言っていたけど信じられない。それに……まあ、これはいいわ」
アリアは治療の手を止めずにそう問いかけてくる。
さきほどまでの怒りに身を任せずに落ち着いた様子での質問。だがその言葉の端々から伝わってくる重みからその真剣さは痛いほど伝わってくる。
「……分かった。話すよ」
俺は理子について、理子の尊厳にかかわる部分は隠しながら理子との関係について話し始めた。
アリアは時折相槌を打ちながら最後まで静かに俺の言葉に耳を傾けてくれた。
「……ふーん」
一通り俺の話を聞いたアリアは頬を膨らませて不満気な様子である。
アリアの母親の件は絶対に理子は言ったことを実行すると俺が力強く言った辺りからこの様子だ。
「随分信用しているのね……。そしてキンジ、あんたの夢であるその……女の子と……イ、イチャイチャする対象の一人が理子ってことなのね」
「そうだ!」
迷いなくそして力強く答える俺。
いらっとした様子のアリアはじっと俺を睨みつけてくる。しかしその瞳には不安が見え隠れしている。理子が去り際に言っていたことを気にしているのだろうか。
「だけどな、さっきも言ったが俺のパートナーはアリアだ。それだけはこの先も変わらない」
アリアは心が見透かされたと言わんばかりにその小さな顔をぶわっと赤面させ「う、うるさい! 聞いてないわよ!」と喚く。
そしてばっと回れ右してこちらに背中を向ける。アリアは両手を顔にあてぐにぐにとしている。
何をしているんだ……?
数秒後再びこちらに向き直るアリア。きりっとした表情を浮かべているが、その両頬は少し赤くなっていた。どうも頬をぐにぐにしてそうなったらしい、理由は分からん。
「まあ、話は分かったわ。今これ以上どうこう言っても仕方ないし本当に司法取引を行うか様子を見ることにするわ。捕まえようにも逃げ足が速くて困難だし」
そう言って疲れた様子のアリアは「ふー」と息を吐きながらソファに腰掛ける俺の横に座ってくる。クチナシの甘い香りがふわりと漂ってくる。
さて理子のことはいったん納得してくれたな。
……次はジャンヌだ。
……どうするか。
頭が痛い。
個人的にはアリアに伝えておきたいところだが、ジャンヌにはだめと言われている。
ここでアリアに話してジャンヌの信用を失うのは避けたいところ。
だが勘のいいアリアだ。黙っていても気付くだろう。
黙っていたとあっては後々ややこしくなる。これもアリアからの信用を失うことに繋がりかねん。
……なら伝えられる範囲で伝えるしかないな。
「それともう一つ報告しておくことがある。先ほどある者から接触があった」
俺は慎重に言葉を選びながら切り出す。
「誰?」
アリアが即座に反応し瞳を向けてくる。
「それは言えない。向こうの要求だからだ。言えば面倒なことになる」
アリアは俺から視線を外さず考えを巡らせるように一瞬黙ると「……続けて」と一言。
「明日その者と直接会うことになった。それを伝えたかった」
「……」
アリアは相変わらずその力強い瞳を俺から外しじっと見つめてくる、俺の意図するところを探るように。勘のいいアリアだ。俺が誰と会うのか何となく察しているのかもしれない。
「つまり私には手を出すな、そう言いたいのね」
「……そうだ」
俺もアリアの瞳をまっすぐに見つめ返しそう答える。
暫し無言のまま見つめ合う俺達。
やがてアリアが口を開く。
「……分かった。キンジを信じるわ。何があったかは後で話してくれるのよね?」
「ああ、勿論だ」
「ならいいわ。私も戦闘準備はしておくわ。困ったら連絡してくること。いいわね?」
「ああ、ありがとう」
「ふふ、当然じゃない。だって私達
アリアはウインクしながら笑顔を零す。
――――。
不覚にも少し心臓が高鳴った――気がした。
「……そうだな、良いパートナーと出会えてよかったよ」
アリアの瞳が一際大きく見開かれる。
俺は照れくさくなったのでアリアからそれ以上の反応が返ってくる前に「……コーヒーでも入れるか」と台所に向かった。
「ほら、キンジ! 学校行くわよ」
朝のドタバタで時間の無かった俺達は手早く朝の支度を済ませた。
武偵校のセーラー服に着替えたアリアは浮足立った様子で俺を急かしてくる。早朝に理子を追いかけまわしていたはずなのに元気なこった。
「はいはい、今行くから待ってくれ」
「ふふ、はやくはやく」
俺とアリアは肩を並べて登校することになった。気恥ずかしかったので時間をずらして登校することを提案したが秒で却下された。パートナーだから、とのこと。
……しかし、滅茶苦茶見られてるな。
通学中。俺とアリアが決闘後にパートナーを組んだ噂が広がっているらしく、武偵校の生徒達が俺達を見てひそひそと話している。ま、ランクSの二人がパートナーを組んだのだから無理も無い。
「よお、キンジ。昨日面白い事してたらしいじゃないか、そういうことは言えよなー」
「おはよーキンジ。パートナー組む気があるんだったら私が組んであげたのにー」
「昨日のこと詳しく教えてよ」
そして同級生たちからはこんな風に絡まれる始末。
が、その度にアリアが俺の腕の袖を強く引っ張り無理やり引き離されてしまう。そんな俺達を見た同級生たちのヒューヒューとからかう声がうざい。
「時間がもったいないから早く行くわよ」
そう言って俺の腕を引くアリアは逃げるようにぐんぐんと進んでいく。
そんなに焦らなくても遅刻しないと思うのだが……。
そんな俺の心の中のぼやきなどお構いなしに、どこか楽しそうな足取りでアリアは俺の手を取り進み続けた。
久しぶりの投稿に関わらずたくさんの感想ありがとうございました<m(__)m>
引き続き投稿頑張ります!