遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする 作:なーお
昼休み。
学校に着いてからもずっと俺の傍にいたアリアだったが、
アリアを見送った俺は携帯を取り出しメール文を手早く打ち込んでいく。
白雪に明日のことを相談する為だ。メール送付して10秒も経たないうちに白雪から返信が来る。
今は生徒会室にいるとのことだったので購買で購入したパンを片手に生徒会室に向かう。
そして到着したわけだが。
……めっちゃくちゃ気まずい。
今朝あんなことがあった為どんな顔をして白雪に会えばいいか分からない。
白雪の柔らかい全身の感触、艶かしい唇……その全てが新鮮な記憶として脳内が侵食される。
パンを握る手が汗で湿っていく。
……ええい、うじうじするな! 男の子だろ!
とテンパった俺はそんな風に自身を奮い立たせ扉をノックする。
どうぞ、と白雪の柔らかい声が聞こえる。
「……お邪魔しまーす」
意を決して扉を開く。緊張のせいでいつもは言わない言葉使いと共に部屋に足を踏み入れる。
室内に視線を向けると机に向かって勉強をする白雪がいた。白雪以外には誰もいない。
朝と同じ二人きり。……そう朝と同じ。
白雪は顔を上げ俺を見るとにこっと柔和な笑みを浮かべて歓迎してくれる。
……やはり抜群に可愛い。
血流が少し勢いづくのを感じる。
「よお、昼休みまで勉強か?」
気を紛らわす意味も込めてそんな質問を投げかけながら机を挟んで白雪と対面にある椅子に座る。
「うん、昨日の夜勉強できなかったから……」
あはは、と乾いた笑いを浮かべながら恥ずかしそうにそう言う白雪。その様子は可愛いらしいが、昨日の夜は理子と命を懸けた(懸けていたのは理子だけだったが)鬼ごっこしてたということを考えると素直に可愛いとは思えないのが辛いところ。
というか昨日はほぼ寝ていないはずなのに凄いな……。ちなみに理子は今日休んでいた。
しかし良かった。思ったより白雪の様子は普通だ。これで白雪が恥じらおうものなら俺の精神はやられていただろう。他の指を犠牲にしないといけないところだった。まだ9本ある為、余裕はあるが痛いものは痛いのだ。
とはいえ、俺の心は落ち着かないままだ。この状況は童貞には辛い。ここは手早く用事を済ませてしまおう。
「そうか、なら邪魔しても悪いし、早速本題に入らせてもらう」
俺がそう切り出すと白雪の表情が変わる。緩めていた表情を引き締め真っすぐに俺を見つめてくる。
「……
「……うん」
驚くかと思いきや冷静にそう相槌を打つ白雪。まるで
まあ、冷静なら話がはやく進むからいいが。いつもみたいに過剰に心配されるよりはな。
「でだ、その
そう言いながらジャンヌから送られてきていた味気の無いメール文面が表示された携帯を白雪に見せる。
「……カフェ。
「分からん。ただ敵対したいわけではないと言っていた。だが勿論警戒は必要だ」
白雪は考え込み、そして意を決したように立ち上がる。
「そうだね、
と、やる気十分すぎる様子で白雪が力強くそんな宣言をする。
いつもの白雪に見えるが、力がはいりすぎているようにも見える。
そしてよく見ると白雪は僅かにふらついている。やはり無理をしているのだ。一晩中魔力を使いながら理子を追いかけのだ、無理も無い。
「白雪、頑張るのはもちろんいいことだが休息も必要だ。昨日はほとんど寝ていないんだろう? 少し休んだ方がいい」
「ううん! 全然平気だよ、それで明日はどうする? 奇襲を仕掛ける? それとも正面から叩く? あるいは――」
白雪は意気揚々と机に乗り出しながらそんな提案をしてくる。攻撃する事しか頭に無いらしい。
「……いや、向こうは一応話し合いを望んでいる。俺達もいったんそれに応じよう。向こうの出方を見る」
「…………そう」
露骨に落ち込む白雪。なぜだ。
「キンちゃん様がそう言うのなら分かった。刀は勿論として、鎖鎌に爆弾、機関銃もどこかに隠しておいて、後は毒薬とかもあった方が……」
「白雪……話し合いだぞ?」
白雪が何やら物騒なことを言い出したので念押ししておく。
「うん!
白雪の屈託の無い笑顔を前に何も言い返せなくなる。なぜか話し合いと書いて別の読み方をするように聞こえたが気のせいだろう。俺も疲れているのだ、きっと。
「……なら明日は女子寮の前に9時半集合だ。武器は最小限な。じゃあ俺は行くよ」
「待って、キンちゃん!」
俺が出て行こうとすると急に白雪が呼び止めてくる。絞り出したようなその声に思わず俺も立ち止まり何事かと振り返る。
そこには先ほどまでの暴走気味の姿はどこにもなく不安そうな表情を浮かべた白雪がいた。
「あの、キンちゃん様……、私がんばるから……」
そう呟いた白雪は今にも溶けてなくなりそうな儚さを感じさせた。
生徒会室を後にした俺は先ほどの白雪の様子が引っかかりつつ屋上に向かった。そこでパンを食べることにする。生徒会室で食べる雰囲気でも無かったので致し方なしだ。
……やっぱり白雪のことが心配だ。また依頼するか。
メールでその相手に連絡するとすぐに返信が来た。たまたま暇だったようで屋上に来てくれるとのことだった。
そのまま屋上に来たが、まだ待ち合わせ相手は来ていないようだ。
ひと時の休息とばかりに手すりにもたれかかる形で座り込み空を見上げる。のんびりと流れる白い雲を眺める。
握りすぎたせいで形の変わったパンをもさもさと食べながら待ち合わせの人物を待つ。
明日、大丈夫かな……。
ジャンヌがどう出てくるか。
右手が使えないのが痛いな。ま、いざとなればヒステリアモードのレベルを上げればいいか。
それでも白雪がどうも空回りしているようで心配だ。でも白雪は何があったんだろうか。
今朝のことが関係しているのか……?
いつものように暴れまくられた方が俺としては安心できたのかもしれない……いや、それはないか。
「キンジさん、お待たせしました」
無機質で透明な声が俺の思考を中断させる。
待ち合わせ相手だ。
顔を向けるとドラグノフを背負ったレキが視界に入る。いつの間にかそこにいた。
屋上に吹く風が碧色のショートカットを靡かせる。
相変わらず感情の抜けた表情だが、整った顔つきと華奢な体が儚さと神秘さを際立たせている。
本当、何度見てもお人形さんみたいだよ……。
「レキ、突然呼び出してすまなかったな」
「構いません。私もちょうどあなたに用がありました」
そう言うとレキは俺の隣に腰掛けて来た。風に乗ってほのかにミントの香りが漂ってくる。
分かりづらいけどレキとの距離もちょっとずつ縮まってきているよな……。白雪ほどじゃないけど付き合い長いもんな。
「そうか、ならレキから用事を済ませてくれ」
「はい。キンジさん、以前も忠告しましたがあまり女性との交友関係を深めないでください。最近特に酷くなっています」
レキはやはり淡々と述べる。
俺ははぁと溜息を吐く。
そう、以前からレキには俺の女の子との接触を控えるように度々釘を刺されているのだ。理由は風がそう言っているから、とのことだ。
もしかして昨日セグウェイを狙撃してきたり、白雪に理子の居場所を教えたりしたのは俺に警告していたのか。あり得るな。
だとしたら理子はとんだとばっちりなわけだ……。すまん理子。
「却下だ。俺も前から言っているがその願いは受け入れられない。俺の生きる意味そのものだからだ」
毅然とした態度でそう答える。
「女の子とイチャイチャしたいから……と以前あなたは言っていましたね」
「そうだが……」
――ところで俺はレキが少し苦手だ。
レキは少し考えた後続ける。
「では私であなたの欲求を満たして頂いて構いません」
――こんなことを何の躊躇もなく突然ぶち込んでくるからだ。
「ぶっ!」
レキの爆弾発言に童〇の俺は激しく動揺しむせてしまう。
「ごほっ!? あ、あのなぁ! レキ! 冗談でもそういうことをいきなり言ってくるな! いつも言っているだろ!」
ロリのレキは俺の好みから外れるが可愛い女の子であることに違いはない。こんなことを突然言われると心臓に悪い。
「私は本気です。あなたが望むことをなんでもおっしゃってください」
レキのガラス細工のような目が俺を真っすぐに射止める。
俺の心臓が一際大きく跳ね上がる。
レキの言葉が意味することは童〇の俺には刺激が強すぎる。ましてや今朝は生々しい経験をしたばかり。
たまらず俺は視線を逸らす。
「……はぁ、そう言えって風が言ってきたのか?」
げんなりしながら質問する。
そう、レキは自分の意志で言ってきているわけではないのだ。いくら俺でもそんなレキをどうこうしようなんて思わない。ロリだし。
「……はい、そう風が言っています」
レキが言葉に詰まった、一瞬迷うように。
……なんだ?
こんなことは初めてだ。
しかしレキの表情に代わり映えは無い。
……気のせいか?
「とにかく断る。自分の体は大事にしろ。はい、この話は終わり! 次は俺の要件だ」
レキの反応はやや気になったものの、強引に話を終わらせる。
レキはじっと見つめ返してくるのみでそれ以上は何も言ってこなかった。
「明日まで白雪を監視し、危険があれば守ってやってくれ。朝の9時半に俺と白雪は女子寮前で合流する。そこからは俺が指示するまで監視と必要に応じてサポートにあたってくれ」
この世界の白雪が誘拐されることはないと思うが、念のためだ。
後半の依頼内容については、今の俺は右手が使えない為だ。その状態ではもしジャンヌと戦闘になった時に危ないかもしれない。一応の保険だ。
他の人間にはジャンヌのことをしゃべらないように言われているが、ジャンヌのことを直接言っているわけでは無いしセーフだろう。レキなら他人に漏らす心配もあるまい。
「分かりました。そのご依頼、引き受けます」
やけにあっさりとレキはそう答える。その口調に抑揚はやはり無い。
いつものことだ。
「ただな……、今俺にはレキを雇うだけの資金が無くてだな。いつもみたいに支払いは後になってもいいか?」
昨日アリアと戦った時に
「……」
あれ?
即答してこない……だと?
レキはじっとこちらを見つめるのみ。
自慢じゃないが懐事情については原作の俺と大差ない。Sランクなのに。
レキへの依頼料もよく待ってもらっている。
レキはいつも「構いません」と即答してくれていた。なのに……。
「あの、……だめか? 勿論色はつけるぞ?」
「……いいえ。今回依頼料は不要です」
ようやく口を開いたと思ったらそんなことを言ってくる。
「いや、そういうわけには「その代わり――」
俺が否定しかけたところにレキが割って入ってくる。レキにしては強引だなと少し驚く。
「私が指定する日、私に付き合ってください」
「え? そんなことでいいのか?」
「はい」
レキが何をしたいのか分からないがレキへの依頼料を考えると破格の条件と言える。
だって依頼料高いし。まあSランクだから仕方は無いのだが。
ただ俺に対しては相場より随分安くしてくれている。理由を問うても答えてくれないが。同じSランクのよしみだと勝手に解釈している。
しかし、本当に良いのだろうか?
何か裏があると怖いが……。
まあいいか。白雪が守れて財布も守れるなら安いものだ。
「分かった、ならその条件で頼む」
「はい。では指定日はまた追って連絡します」
レキはそう言うと立ち上がり振り返ることなく歩いて行く。早速任務にあたってくれるのだろう。
……さて、俺もいくか。
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