遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする 作:なーお
「白雪が望むことを言ってごらん?」
「はうう、キンちゃん様。あ、あの、よしよしして頑張ってるね、って褒めてほしいです」
俺の腕の中に納まった白雪が恍惚とした表情を浮かべながら、甘い声色で俺にそうお願いをしてくる。
……全く、こんな可愛い顔をしておねだりされて断れる男がいるなら見てみたいものだね。
「……白雪がそれを望むなら。よしよし、白雪はいつも一生懸命でいてとても偉い子だ。白雪のような子に毎日お世話になっている俺は幸せ者だな」
「キ、キンちゃん様……。わ、私、今とても幸せです。キンちゃんの為なら私はなんだってしてみせます」
「ありがとう。俺も白雪の身に何かあればこの命に代えても守って見せるよ」
その後、しばらく二人きりだけの世界に入り浸ったが、無情にも登校する時間が近づいてくる。
俺としても、白雪と離れ離れになるのは惜しいが仕方ない。
「白雪、残念だがそろそろ学校に行く時間だ」
「……嫌。ずっとキンちゃん様といたい」
俺にぎゅーと抱き着いて駄々っ子のように振舞う白雪。そんな白雪の姿を見て俺も心苦しいが、学校に無断欠席としたとあれば、白雪の評価が落ちてしまう。これまで積み上げてきた白雪の努力が水の泡になってしまうのだ。
「白雪、俺も白雪と一緒にいたい。でも白雪もするべきことがあるはずだよ」
「で、でも私……」
「……これを白雪に」
そう言って俺は鍵を差し出す。それはこの寮の部屋の合い鍵だ。
このままここにいたいという白雪の望みを叶えられない代わりのつもりだ。白雪はよく俺の留守中にも俺の家に来てくれているようだからね。このほうが効率的だろう。
白雪もそれがこの部屋の鍵であると理解したのだろう。その大きな瞳をまん丸にして驚いたように鍵を見つめている。
「――え、これって」
「この部屋の合い鍵だよ。白雪が望むときにいつでも来れるようにね。だから、今日はもう学校にお行き。ほら、白雪は良い子だから」
白雪はなぜか今日一で感激しているようで、俺から合い鍵を割れ物でも扱うように丁寧に両手で受け取る。白雪は信じられない様子で自身の手にある鍵を見つめている。
「……私、これまでの人生の中で今日が一番幸せです。……これで私の優勢。それに’堂々’とキンちゃん様の家にお邪魔できます」
「優勢? 堂々?」
白雪が後半に呟いた小さな声もヒステリアモード時の聴力でしっかりと聞き取った俺が、純粋に疑問に思ったことを口にすると、白雪はしまったと言うように慌てると、俺の元から少し離れる。
「あ、ええと、なんでもないです。キンちゃん様の言う通り、今日はもう学校に行きます。そ、それじゃあ。あの、鍵、ありがとうございました。また、来ます!」
そう言うと、白雪は俺の返事を待たずにバタバタと荷物をかき集めるとそのまま部屋を出て行ってしまった。
……やれやれ、そんなに急ぐと転んでしまうよ白雪。ま、そんなあわてんぼうな白雪も可愛いけどね。
数分後、ヒステリアモードが解けた俺は部屋の中央で膝から崩れ落ちた状態で絶望していた。
……あぁ、結局だめだった。
原作の開始と合わせて、なにかこう世界の強制力的な何かが働いて、どうにかこうにかなるのではと、根拠の無い哀れな妄想は儚く散ってしまった。
俺は原作キンジより圧倒的に強くなった。そのおかげで女性からはかなりモテている。女性は基本的に強い男に惹かれるとどこかで聞いたことがあるが、それは事実のようだ。
そこまではいい。
問題は、俺がすぐに女性で興奮してしまい、ヒステリアモードになってしまうこと。
ヒステリアモードになれば、さらに周囲の女性を自身に惚れさせることができるので、いいことではある。実際、白雪も原作より随分好感度が高いように思える。まあ、白雪はほぼ毎日ヒステリアモードの俺と接していたからな。
しかし、それ以上の展開は無い。
俺のイチャイチャするという願望は叶わないままである。
しかし、俺もまだ諦めたわけではない。
今回がダメだったならばまた対策を打てばいいだけだ。
俺の夢をこんなことで諦めてたまるか。
原作通りにいくと、俺はこれからこの作品のヒロインであり、作品のタイトル名でもある『アリア』と出会うことになる。
そして、アリアの母親に謂れのない罪を被せた『イ・ウー』の組織員と戦っていき、最終的にその親玉である、アリアの曽祖父である『シャーロック・ホームズ』と出会うことになる。
『イ・ウー』は、天才達の集まりであり、互いが互いを高め合う集まり。自分の得意なことを先生として他に教え、逆に生徒として他の人からその人の得意なことを教わる、そんな場所。
話は変わってこの世界には、魔術――というか『超能力(ステルス)』と呼ばれるものが存在する。俺はそちらの方は専門外の為、詳しくは知らない。が、作品をみていれば分かる。この超能力は凄い。氷、水、雷、風、砂なんかを操り、時には人の心をすらも惑わす。超能力とはこの世の物理法則では説明のできない奇跡を起こすのだ。ちなみに、白雪も『超能力』の使い手であり、『火焔(ほむら)の魔女』の二つ名を持っていたりする。
ならば、その超常現象の力でなんやかんやして、上手いことヒステリアモードのスイッチのオンオフを自分の意志でできるようにできないかと考えたのだ。
そして、その方法を模索する場としてイ・ウーは、うってつけと言える。イ・ウーには、白雪と同様の魔女も多数在籍しているのだから。何より、昔から生き続けている強く、博識なシャーロック・ホームズがいるのだから。
だから俺が目指す場所は、イ・ウーである。
そして、それはこの作品のヒロインであるアリアと同じ目標でもある。
しかし、正直に言おう。
俺個人として、アリアはあまり好みでは無い。
理由?
――『ロリ』、だから。
可愛いのは間違い無いだろう。
しかし、俺個人としては、白雪のような大人の女性が好きだ。
それに加えてアリアは、リアル貴族で我儘であり、プライドが高く非常に自己中。自分の思い通りの展開にならなければ、平気で銃をぶっ放してくるという荒くれもの……。
しかし、武偵として優秀であることは疑いようが無い。同学年では、数少ないSランク武偵であり、これまでの事件でも犯人を一人も逃がしたことが無いと言う実績も持つ。
そして、何よりこの作品のヒロインである。
この作品はやはりアリアを中心として物語が進んでいくことが多い。そこで俺、遠山キンジは、数々のヒロイン達と出会っていくのだ。
だからこそ、俺はこれからアリアと出会い協力関係になるつもりだ。
しかし、俺はアリアに屈するつもりは毛頭無い。
原作キンジは、アリアの我儘に振り回され、尻に敷かれることになる。まあ、なんやかんや二人は互いに惹かれある事になるわけだが。
しかし、俺は違う。好みでも無いアリアに付き合う理由はないだろう。あくまでもビジネスパートナーとして接するのだ。互いにメリットもあるはずだ。
今の俺なら、素のままでも十分アリアを圧倒出来るだろうしな。
そんな決意を胸に刻み、俺はふと部屋に掛けられた時計に視線を送る。
……と、もうこんな時間だ。
……もう、7時58分のバスには間に合わない。
仕方ない。自転車で学校に向かうか。
――なんて。
というわけで、行きますか。
『神崎・H・アリア』に出会いに。
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