遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする   作:なーお

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第五話

 俺は、散歩にでも出かけるように悠然とした足取りで進んでいく。

 

 ……さてさて、どうしようかね。

 

 どうすれば格好いいかなーなんて考えていると、俺の視界に複数台のセグウェイが勢いよく飛び込んでくる。

 その数、……全部で7台。

 セグウェイに備え付けられた短機関銃の銃口が素早く標的である俺に向けられる。

 

 ――――よし、来い!

 

 どう対処するのか決めた俺は、早く撃って来いとばかりにその場で待ち受ける。

 しかし、次の瞬間だった。

 

 

 

 目の前の空間が真横に――――、斬れた。

 

 

 

 すべてのセグウェイを巻き込むように。 

  

 

 

 短機関銃から銃弾は飛んでこない。少しの間を空けて、ようやく斬られたことに気付いたかのようにセグウェイがゆっくりと崩れ落ちていく。ガシャンガシャンという金属が地面に落ちる音が虚しく響き渡る。

 

 …………は?

 

 予想だにしていない展開に頭が追い付かない。

 後ろにいるアリアも目の前で起きたことの理解が追い付かないのか、目をパチクリとしている。

 

 ……え、なんで? 

 

 ここはアリアに俺の実力を見せつける名シーン。それは原作でもこの世界でも変わらない。違うのは俺がヒステリアモードでないという点のみ。そのはずだった。

 

 

 

 ……なんで、ここにいんの?

 

 

 

「キンちゃん様! 大丈夫ですか!」

 

 俺が呆然と立ち尽くしていると、今朝会ったばかりの白雪が不安と焦りを混ぜ合わせたような表情を浮かべながら走ってくる。その手には、日本刀『色金殺女(イロカネアヤメ)』が握られている。あれでセグウェイを斬ったということなのだろう。

 俺の元まで来た白雪は慌てた様子で「怪我は無い? 痛い所は?」とあたふたしている。未だに頭は混乱しているが、あまりに必死な白雪に「……大丈夫だ」とだけ返事をしておく。

 

「……よ、良かったぁ。キンちゃんが武偵殺しの模倣犯に襲われてるって知って、いても立ってもいれなくて」

 

 白雪は心底ほっとしたように胸をなでおろす。そして、そのままどさくれに紛れて抱き着いてくる。いつもならヒス案件だが、今はそれどころでない。俺は状況を飲み込んでいくにつれて益々混乱していく。

 

「……いや、なんで白雪は俺が襲われてるって知っているんだ? 今は始業式のはずだろ? ていうか生徒会長がこんなところにいていいのか?」

 

 俺は無理やり白雪の両肩を押し出す形で引き剝がしてそう問う。白雪は若干不満気ながらも答えてくれる。

 

「それは、とうちょ…………愛の力で知ったの。私、キンちゃん様のことならなんでも分かるから。キンちゃん様の為なら、私はいつでも駆けつけるよ!」

 

 ……最初、なんて言いかけたんだ? 

 声小さくて聞こえなかった。ヒステリアモードなら聞き逃さなかったのに。

 なぜか俺の本能が警鐘を鳴らしている。

 

 その時だった。

 ギギギ……と、機械音が聞こえてくる。俺と白雪は一気に緊張を纏うと急いで音源に振り向く。すると一台のセグウェイの短機関銃がゆっくりとこちらに銃口を向けている光景が目に入る。この一台だけ斬り方が甘かったようだ。

 

 ……よし! 全然状況は分からんけど、まだ活躍の場面は残ってる!

 

 と、息巻いた瞬間、セグウェイが吹っ飛んだ。ご臨終である。

 

 ――――ちょ!?

 

 正確には、セグウェイは、『狙撃』された。

 聞き慣れたドラグノフの発砲音が微かに聞こえてきたから分かった。

 体育倉庫の入り口のそのさらに先、遠方の校舎のその屋上、そこに『レキ』がいた。はっきり見えないが、その短めに切り揃えた碧色の髪の持ち主は他にいない。レキは、これで仕事は終わりだと言うように踵を返す。そのままレキの姿は見えなくなった。

 ロリに分類されるレキは本来、深い関わりを持っていなかったんだが、’色々’あってちょくちょく関わってくるようになった経緯がある。今回みたいに。

 というか、あいつも俺が襲われてるって知ってたのか?

 

「……レキも来てたんだね。……折角私だけがキンちゃんの力になれたと思ったのに。やっぱりキンちゃん様の横に立つにはもっと研鑽しないと……」

 

 悔しそうにギリッと歯を噛みしめ、いつもよりワントーン低い声でそんなことを呟いている。

 怖い。けどヤンデレなところも可愛い。怖いけど。

 

「…………それにしても、よもやキンちゃん様のことを狙うなんて。これは万死に値するよね? …………ふふ、そうよ、これは私が天誅を下すしかないよね。うーーーんと苦しめてあげなくちゃ……」

 

 白雪が焦点の合わない瞳で虚空を見つめながらぶつぶつと物騒なことを言い出した。

 ……うん、それでもヤンデレなところが可愛い…………か?

 

「お、おい、白雪。落ち着け。俺はあの程度じゃ、なんともn――」

 

 俺がそう白雪に声をかけると、白雪はいつものにっこりとした笑顔をこちらに向けてくる。

 

「キンちゃん様! 安心して! 武偵殺しの模倣犯は中々尻尾を出さないって聞いているけど、星伽家の力を使ってでも必ず犯人を見つけ出して絶対に後悔させてみせるから! もう二度と歯向かえないくらい!」

 

 いつもの笑顔なのに言っていることが恐ろし過ぎて逆に怖い。

 

 ……これは明らかに異常だ。

 白雪は確かに原作でもヤンデレ気質なところがあり、黒雪なんて呼ばれたが、ここまで過激でもなかった。まあ、機関銃ぶっ放したり、鎖鎌振り回したりしていた気はするけど。レキもそうだ。

 

 そして何よりの問題は、原作の流れから展開が変わってしまっていることだ。

 

 こうなってしまった要因。

 思い当たる節はある。というかそれしかない。

 

 

 

 悲報――、どうも俺、ヒステリアモードで白雪達と接しすぎて、好感度がカンストしている模様。

 

 

 

 いや、やばいな。まじで。

 好感度が上がる事自体はいい。というか望んで上げていた。しかし、まさか原作の流れを捻じ曲げられるほどとは。

 確かに、ちょーっと、原作より好感度高いなとは思ってたけど。

 ……え、どうしよう。この調子でいくと、白雪達が頼みの綱であるイ・ウーのメンバーを全滅させかねないのでは?

 今回の首謀者である理子は大丈夫だろうか? 白雪に八つ裂きにされないだろうか? ……一応、気にはしておくか。

 

 俺があれこれ考えていると

 

「ちょっと! 何、勝手に話を進めているのよ!! 私を無視するな!」

 

 完全に空気だったアリアが噛みついて来た。

 そう言えば、アリアいたんだったな。

 

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