遠山キンジに転生したので、女の子とイチャイチャする   作:なーお

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第九話

 理子が去った後、俺はそのまま屋上に残っていた。既にヒステリアモードは解けている。

 残り少ない昼休みの中、俺は柵にもたれかかりながらぼうっと青空を流れる白い雲を眺めていた。

 はぁ、とため息。

 

 

 

 …………理子、可愛すぎだろ。

 

 

 

 俺は、理子のあまりの可愛さに骨抜きにされていた。

 ……童〇にあれはいかんでしょう。

 もう理子と結ばれればいいじゃないかと思えてしまう。

 

 …………いや。

 

 それでも俺は踏みとどまる。

 

 いやいやいや、だめだぞ!

 俺は遠山キンジ!

 数多のヒロイン達を落とす男!

 ここで俺が落ちたら何のために転生したのか。

 むしろここからじゃないか!

 しっかりしろ!

 

 俺は、後ろ髪を引かれる思いで自身を鼓舞し、理子への気持ちを一時的に断ち切る。

 ……あー、でもやっぱり理子可愛い――。 

 

 

 

 俺は、時間をかけてなんとか気持ちを切り替えることができた。自分を褒め称えたい。

 予鈴が鳴った為、教室へ向かいながら考える。 

 

 ――とりあえず流れで、理子の宿敵であるドラキュラこと『ブラド』と戦うことが決定した。これは大きいことだ。

 本来の、俺とアリアでタッグを組み、理子と対決する展開をすっ飛ばすことになったのだから。ハイジャックされた飛行機の中で戦うとか面白そうだと思ってたんだけどな。

 ……まあ、いいか。理子も嬉しそうだったし。

 問題はアリアとの絆を深める機会を失ってしまったことだろうか。そこは何とか穴埋めするしかないな。

 

 ――それよりブラドの強さってどんなものなんだろうな?

 原作では、アリアと理子とキンジの三人がかりでようやく勝てたけど。

 ……ま、四つある『魔臓』の位置も分かるし、多分、素の俺一人でも十分いけるだろう。知らんけど。

 ――最悪、ヒステリアモードになればいい。

 戦闘中、どんな状況だろうと、エ〇いことを考えて興奮できるよう、訓練は積んでいる。死角はない。

 

 ……俺、興奮する才能はあるんだよな。

 今となってはそんな才能いらんけど。

 ていうかそんな訓練してたから興奮しやすいのか……?

 

 ちなみに以前、兄さんと修行している時に、戦闘中にヒステリアモードになれるの凄くね? と兄さんに自慢したら「気色悪い」と、ドン引きされてしまった。女装して興奮する兄さんにだけは言われたくないと『カナ』の物真似をしながら文句を言ったら、兄さんがキレて殴り合いの喧嘩に発展してしまったのは懐かしい。

 ……とにかく、ヒステリアモード状態の俺なら、ブラド位なら余裕で勝てるだろう。

 とはいっても一番の目的は理子のトラウマを完全に克服するため。俺が無双しても意味は無い。まあ、その辺はうまく調整しよう。

 

 ここまで考えた俺は、あることに気付く。

 

 ……あれ? 理子にイ・ウーに案内してもらえるんじゃね?

 

 俺の現状の目的である、イ・ウーにたどり着くこと。それが存外、簡単に達成できる可能性があることに気付く。理子は、まだイ・ウーに在籍しているはずだ。

 ……よし、今度会った時に頼んでみよう。

 俺のイチャイチャ人生もそう遠くないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 学校が終わり、放課後になった。

 いつもなら訓練を行い、陽が完全に沈んでから帰宅するのだが、今日だけは特別。夕日が自室を赤く照らす中、俺はソファに座っていた。

 

 そろそろ、アリアが来るはず。

 

 原作の流れなら、アリアが部屋に乗り込んできて、俺に’奴隷になりなさい’宣言をすることになるのだが、どうなるか。アリアは来るだろうか?

 と言いつつ俺はアリアが来ることになるだろうと確信していた。というのも、下校時、アリアに後方から尾けられていたことを確認している。俺はそのまま気付かないふりをして真っすぐに帰って来たというわけだ。

 それに学校でも俺の隣の席に座ろうともしていた。間違いなくアリアは俺のことが気になっている。俺が自分のパートナーとして相応しいかもしれないと。

 今頃、俺の部屋のインターホンを押そうとしているかもしれない。

 

 ……しかし、アリアはなんで俺に興味を持ってくれたんだろうな?

 体育倉庫を蹴破った時の一連の流れを凄いと思ってくれたんだろうか?

 まあいいか。結果良ければなんとやらだ。

 

 でもアリアが来たら、どんな風に対応すればいいのか。

 間違っても尻に敷かれることはあってはならない。

 

 ――ヒステリアモードになれば簡単なんだけどな。

 

 そんな考えが浮かぶ。

 でも、アリアは別に好みでないし、あくまで良きビジネスパートナーとして、付き合いたいんだよな。ヒステリアモードになって変に好意を持たれてもお互いが不幸になるだけだ。

 やはり素の俺のままで頑張るしかないのだろう。

 大丈夫、素のままの俺でも強いのだ。舐められることはないだろうし、対等な関係を築けるはずだ。

 

 そんなことを考えながら俺は待ち続けた。

 しかし。

 

 

 

 ……来ない、だと。

 

 

 

 陽は完全に沈んでしまった。原作であれば、とっくにアリアは来ていた。

 しかし、アリアは来ていない。

 

 ……え、なんで?

 

 確かに俺はアリアに尾行されていたはずだ。勘違いなどではない。

 状況が理解できずに混乱していく。

 

 やっぱり俺はアリアに興味を持ってもらえていないのか?

 ……まずいまずいまずい。

 

 先々の物語の展開を考えると、アリアと一緒にいないと色々なヒロイン達と関わり合う機会が少なくなる。工夫次第でどうにかできそうな気もしなくもないが、やはりメインヒロインのアリアと距離を置くのは得策とは言えない。

 しかし、アリアは日本に良いパートナーがいないと判断すると母国に帰ってしまう。行動の早いアリアだ、もしかしたらその日は存外早く来るかもしれない。

 

 ……猶予は無い。なら、こっちから探す。

 

 下校中は、俺の後を尾行していたのだ。時間が経ったとはいえ、この近くにいる可能性はある。

 俺はそう考えてバタバタと音を立てながら、玄関に向かっていく。

 

「えーと、アリア、アリア。――アリアと言えば……、ももまんか? ももまんだな、ももまんしかない! この辺で売ってるところは――」

 

 そんなことを言いながら、玄関の扉を開く。

 すると。

 

 

 

 いた、――アリアが。

 

 

 

 アリアは、俺の部屋の扉の前で驚いた様子で立っていた。アリアの傍らには大きめのトランクもある。

 

 …………え? とういう状況?

 単純に来る時間が少し遅れたってこと?

 

「…………あんた、今、私の名前を呼んでた? 後、なんで私がももまん好きなこと知ってるのよ?」

 

 アリアは、訝し気な視線をこちらに向けてくる。完全に変質者を見る目である。

 ……や、やばい。

 アリア視点だと、俺がアリアの名前を連呼しながら、走ってどこかに行こうとしているようじゃないか。いや、その通りなんだけども。

 ――そんなの、まるっきりヤバイ奴みたいじゃないか。これじゃあ、良きパートナーにはなれん……。

 

「い、いや、違うんだ!」

「何が違うのよ? ……やっぱりあんた変態じゃないの?」

 

 ……くっ、なんて屈辱。貧乳に興味ねえよ!

 ギロリとアリアが鋭い視線を投げかけてくる。小さい癖にその圧力は凄まじい。

 だめだ、ここで引くわけにはいかない。

 

「アリアだって、なんで男子寮にいるんだよ! お前こそ変態じゃないのか?」

「なっ!? ち、違うわよっ! というかあんたは、どうして私の名前を呼んでたのよ! 後、なんで私がももまんが好きって知ってるのよ! まずはそっちから答えなさいよ! 何よ、私に気でもあるわけ!」

 

 顔を真っ赤にしたアリアが憤慨しながらそう詰めてくる。

 気でもあるか、だと? 

 ――ぬわああっ、イライラする!

 でもアリアの質問に答えないと俺が変態として確定してしまう。

 言い訳がすぐに出てこない中、俺が頭を必死に回した結果。

 

「あ、あれだよ! アリアってSランク武偵だろ? 同じSランク武偵としてアリアと戦ってみたいと思ってたんだよ。だからアリアのことが気になってたと言うか。その気持ちが強まってついアリアの名前を呼んだんだよ……。ちょうどいいし、これから俺と模擬戦でもしないか?」

 

 ……何言ってんだ、俺。

 

 焦ってよく分からない言い訳と、ついでによく分からない提案をしてしまう。アリアの好物であるももまんを知っていたことに対する言い訳は思いつかなかった。

 変なことを言っている自覚はあったが、俺の提案にアリアは、「ふーん、模擬戦……ね」と顎に手を当ててしばし考える様子を見せる。

 そして、アリアは先ほどまでとは一転、至って真剣な様子でこちらを見つめてくる。

 

「――いいわよ。そっちの方が手っ取り早いし、悪くない提案だわ」

 

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