摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた近衛碧輝(このえあおき)。ケッコンカッコカリまで育成した艦娘『金剛』を轟沈させてしまった碧輝は、金剛と一緒の艦隊にいた『摩耶』に八つ当たりをして解体してしまった。

その直後、突然、艦娘・摩耶が碧輝の部屋に現れた! 最初は、摩耶をコスプレイヤーだと疑っていた碧輝だったが、摩耶の話し方、さらに、装着している連装砲の砲撃で窓ガラスを割られたことで、本物の艦娘だと確信した。

令和の日本に現れた摩耶だったが、彼女はゲーム世界に戻る方法を知らない、と知った碧輝。追い出すわけにもいかない碧輝は、留守番を拒む摩耶と一緒にバイト先へ向かう。

やがて、2人はバイト先があるショッピングモールに到着したのだった…。




第10話 妹にされた摩耶さま

 

「すっげえ、人だな!」

 

ショッピングモール入口の自動ドアから入るなり、摩耶は驚きの声をあげた。

 

今日は土曜日。都会で暮らす碧輝から見ても、今日の来店客は多いと感じる。ただ、碧輝から見たら、それはとくに珍しいことではない。

 

エントランスホールからはブティックやファンシーショップなど、幾つもの専門店が見える。広々とした通路には多くの人が行き交い、土曜日のショッピングモールらしく、家族連れやカップルたちが楽しそうにウインドショッピングをしている。そんな光景は摩耶にとって初めてなのだろう、彼女は目を輝かせるようにしながら店内を見渡している。

 

「摩耶、行くぞ!」

 

碧輝は、そう言いながら摩耶の右腕を掴んだ。突然、右腕を掴まれた摩耶は、驚いて碧輝を見つめた。

 

「な、何だよ!」

 

「摩耶、今日は買い物をしに来たんじゃない。俺を護衛するなら、ちゃんとついて来なよ」

 

碧輝の言葉に、摩耶は納得したように何度か小さく頷いた。

 

「お、おう、分かってるぜ。だけどさ、その手、ウザいんだけど」

 

摩耶は碧輝に掴まれている自分の右腕に視線を落とした。

 

「もしはぐれたら、摩耶を探し出すのが大変になる! バイト先まで我慢しなよ」

 

「しょーがねーなー! ところで、碧輝の仕事は何なんだ?」

 

「一緒に行けば分かる! 時間がないから急ぐぞ!」

 

碧輝は、そう答えると、摩耶の腕を引っ張りながら人々の流れに合わせて移動を始めた。

 

エントランスから1分ほど歩くと、フードコートが見えてきた。フードコートの一角にハンバーガーショップがある。碧輝は立ち止まると、ハンバーガーショップを指差した。

 

「あのハンバーガーショップが、俺のバイト先だ」

 

「はんばーがー? あのパン屋みたいなやつか!」

 

摩耶は、意外だ、と言わんばかりの表情で、ハンバーガーショップと碧輝の顔を交互に見つめた。

 

「お前、提督だろ? なんで、提督がパン屋で仕事するんだよ? もしかして、補給艦の艦長なのか?」

 

碧輝は、摩耶からの、あまりにも時代錯誤的な質問に答えるのが面倒くさくなって、何も答えなかった。

 

碧輝は無言で摩耶の腕を引っ張りながら、ハンバーガーショップのすぐ近くにあるバックヤードの出入口ドアをくぐり抜けた。バックヤードの通路に入ると、さらに、すぐ右側にあるドアを開いた。

 

「お疲れ様でーす」

 

碧輝はバックヤード側からハンバーガーショップのスタッフルームに入った。

 

スタッフルームにはデスクやテーブルがあり、テーブル周辺には数脚のイスが並んでいる。

 

デスクには、赤と黄色のカラフルな制服を着た女性が背中を丸めるようにしながらノートに何やら記入していた。

 

「店長、おはようございます!」

 

碧輝がデスクの女性に声をかけると、店長と呼ばれたボブヘアーの女性が振り返った。

 

「おはよう、近衛君。あれ? その人は誰?」

 

ハンバーガーショップの女性店長である湯本香織里は、碧輝を一瞥したあと、その隣で黙ったまま突っ立っている摩耶を見つめた。

 

「えっと、詳しいことは後から話しますが······俺の妹です」

 

碧輝が女性店長・湯本にそう答えると、摩耶が「は?」と驚きの声をあげながら碧輝を見つめた。

 

「近衛君、妹さんがいたんだね。でも、どうして妹さんをここに連れてきたの?」

 

「今日だけ、俺のバイト中、妹をスタッフルームに置いてほしいんです」

 

「うーん、まあ、別にかまわないけど······」

 

湯本は、そう答えながら摩耶を見つめた。

 

「でも、今日の近衛君の勤務は夕方5時までの6時間でしょ。6時間もスタッフルームで待つより、フードコートにいる方が退屈しないんじゃない?」

 

「えっと、それは······」

 

「いいぜ! 碧輝の仕事が終わるまで、店のテーブル席で待ってるよ!」

 

碧輝が、店長からの提案を受け入れるか迷っていると、摩耶が横やりを入れた。

 

「わ、分かりました。摩耶を、妹をフードコートのテーブル席に座らせておきます」

 

何だか嫌な予感がした碧輝だったけれど、店長の提案に従うことに決めたのだった。

 

 

 

(つづく)

 

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