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(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた近衛碧輝(このえあおき)。ケッコンカッコカリまで育成した艦娘『金剛』を轟沈させてしまった碧輝は、金剛と一緒の艦隊にいた『摩耶』に八つ当たりをして解体してしまった。
その直後、突然、艦娘・摩耶が碧輝の部屋に現れた! 最初は、摩耶をコスプレイヤーだと疑っていた碧輝だったが、摩耶の話し方、さらに、装着している連装砲の砲撃で窓ガラスを割られたことで、本物の艦娘だと確信した。
令和の日本に現れた摩耶だったが、彼女はゲーム世界に戻る方法を知らない、と知った碧輝。追い出すわけにもいかない碧輝は、留守番を拒む摩耶と一緒にバイト先へ向かう。
碧輝のバイト先であるハンバーガーショップに到着した2人。碧輝は、摩耶は妹、だと店長に伝え、バイトが終わるまでスタッフルームに置かせてほしい、と頼んでみた。しかし、店長の提案で、摩耶をフードコートのテーブル席に座らせておくことに決めたのだった。
スタッフルームの更衣室のカーテンが、シャッと音をたてて勢いよく開いた。そこには、赤と黄色のカラフルな制服に身をまとった碧輝が立っていた。
「提督! 何だよ、その格好! まるで道化師じゃねーか! 笑えるぜ!」
更衣室で着替えを終えた碧輝の姿を目にした摩耶が、店内に響き渡るような高らかな声で笑った。ハンバーガーショップの店員に変身した碧輝は、更衣室の前で笑い声をあげている摩耶に素早く近づいた。
「摩耶、ここで、提督、だなんて言うな!」
碧輝は、摩耶の耳元で語気を強めながら囁いた。その直後、デスクに座ってこちらを不思議そうに見つめている湯本店長と目が合った。
「え、なに? 近衛君は、提督って呼ばれているの?」
「あ、いえ、何でもないです。すみません」
湯本店長からの質問を、碧輝は作り笑いを浮かべながら適当な返事で流した。
「それじゃあ、妹をフードコートに座らせてから、レジに入りますので······」
碧輝は、そう言うと摩耶の右腕を引っ張りながらスタッフルームを離れた。
「はーい! 釣り銭の間違いだけは気をつけてね!」
湯本店長は碧輝の背中に声をかけたが、摩耶のことで精一杯な彼の耳には届いていなかった。
「摩耶、ここでずっと座ってるんだぞ。誰にも話しかけてもいけないからな」
フードコートの一角にあるハンバーガーショップ『バーガーシップ』。店内は接客カウンター、厨房、スタッフルームに分かれており、テーブル席はフードコート共用となっている。
接客カウンターの正面にあるテーブル席に摩耶を座らせた碧輝は、何度も彼女に「絶対に動くな」と念を押した。
「はいはい、分かってるよ」
ちゃんと分かっているのか、不安になった碧輝だけど、そろそろレジ担当を交代する時間だ。碧輝は、接客カウンター内へ戻った。
「近衛さん、カノジョさん可愛いですね!」
接客カウンターでレジを担当していたバイト仲間の女性が笑顔で声をかけてきた。
「カノジョじゃないよ。ただの······妹だよ」
「へえー、妹なんだ! でも、全然似てないね!」
「由良子ちゃん、もう時間だよ。お疲れ様!」
碧輝は、強引に話を切り上げてレジ担当を交代した。
「じゃあ、近衛君、お先ー!」
バイト仲間である大学生の春日由良子は、明るい笑顔で碧輝に手を振りながらスタッフルームへと去っていった。その直後、碧輝は真正面のテーブル席に座っている摩耶に視線を向けた。すぐに、摩耶と目が合った。気のせいか、摩耶に睨まれているような気がした。
今日は土曜日で忙しいっていうのに、摩耶がいたら気になって集中できないよ······。
数分後、家族連れが列をなして『バーガーシップ』の接客カウンターへやって来た。碧輝は慣れた感じで客からの注文をレジに打ち込み、スムーズに金銭の受け渡しを行い、ハンバーガーの手渡しを明るい笑顔でこなしていった。
「次のお客さま、どうぞー」
碧輝は、ハンバーガーが入った紙袋を手にした客を見送ったあと、列の最前列で待っていた女性に顔を向けた。次の瞬間、碧輝の表情が固まった。
「よっ! 碧輝!」
列の最前列で待っていたのは、微笑みをたたえた摩耶だった。
「なんで、摩耶が並んでるんだよ!」
碧輝は、摩耶に少しばかり顔を近づけながら小声で訊ねた。
「お腹が空いちまってなー。ここ、パン屋だろ? 何か食べさせてくれよ」
摩耶は露出したお腹を両手でさすりながら答えた。碧輝は、摩耶がお金を持っているはずがない、と思うと同時に、お腹が空くということは身体は人間と同じか、と納得した。
「分かったよ。俺がおごってやるから、好きなハンバーガーを選びなよ」
碧輝はそう言うと、カウンターに張りついているメニューを指差した。
「へえー! どれも美味しそうじゃん! どれでも良いのか?」
「好きなもの選べよ。後ろでお客さんが待ってるから早くしなよ」
碧輝は、笑顔でメニューに見入っている摩耶に小声で伝えたのだった。
(つづく)
いつも読んで頂きまして、ありがとうございます!
短編区切りなので、今は退屈な展開かもしれませんが、そのうちに······。
頑張って読み進めてもらえたらと思います!
皇南輝