摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた近衛碧輝(このえあおき)。推しの『金剛』を轟沈させてしまった碧輝は、金剛と一緒の艦隊にいた『摩耶』に八つ当たりをして解体してしまう。

その直後、突然、艦娘・摩耶が碧輝の部屋に現れた! それはコスプレイヤーではなく、本物の摩耶だった。

令和の日本に現れた摩耶だったが、彼女はゲーム世界に戻る方法を知らない、と知った碧輝。追い出すわけにもいかない碧輝は、留守番を拒む摩耶と一緒にバイト先へ向かう。

碧輝のバイト先であるハンバーガーショップに到着した2人。碧輝は、バイト中だけ、摩耶をフードコートのテーブル席で座らせておくことに。その後、土曜日のランチタイムを慣れたレジ作業でこなしていく碧輝だったが、気がつくと、いつのまにか摩耶が接客カウンターまで来ていた。お腹が空いた、と言う摩耶に、碧輝はハンバーガーをおごることにしたのだった。



第12話 摩耶さま、取り囲まれる!

 

 

摩耶が接客カウンターのメニューに張りつくようにしてハンバーガーを選んでいると、店の奥から男性社員・青山が出てきた。

 

「近衛君、店長が呼んでるよ。レジを代わるからスタッフルームへ行ってきて」

 

「え、今ですか?」

 

「なんか、話があるみたいだから急いで」

 

突然の青山からの指示に、碧輝は、機嫌よさそうにメニューに見入ってブツブツ言っている摩耶を一瞥したあと、青山の耳元に顔を近づけた。

 

「いまカウンターにいる女の子、俺の妹なんです。お金は俺が払うから、何でも好きなものを選ばせてあげてください」

 

「うん、分かったよ」

 

青山は碧輝に笑顔で答えた。それを確認した碧輝は、摩耶に顔を近づけた。

 

「摩耶、食べたいものが決まったら、ここにいるお兄さんに注文するんだぞ。俺は、ちょっと離れるから」

 

「オッケー、行ってらー」

 

摩耶はメニューに顔を向けたまま、明るい声で答えた。碧輝は不安そうな表情を青山に向けて頷くと、スタッフルームへ向かった。

 

 

「店長、お呼びですかー?」

 

碧輝はスタッフルームに入るなり、デスクで事務作業をしている湯本店長に声をかけた。

 

「あ、ごめんね、近衛君。もうランチタイムのラッシュは落ち着いたよね?」

 

「ええ、まあ」

 

「じゃあ、そこへ座って」

 

碧輝は、湯本店長が差し出した椅子に座った。

 

「突然だけど、今から仕事に関する面談を行うわね!」

 

「え!」

 

碧輝は、こんなときに限って、と思いながら湯本店長を苦々しい表情で見つめた。

 

「近衛君、顔色が悪いわよ。大丈夫?」

 

「は、はい。大丈夫です······」

 

こうして、湯本店長による碧輝の職場面談が始まったのだった。

 

 

職場面談は、15分ほどで終了した。

面談を終えた碧輝は、急いで接客カウンターへ向かった。

 

何か、嫌な予感がする······。

 

碧輝の悪い予感は的中していた。

フードコートの摩耶が座っているテーブル席に、人だかりができていた。碧輝は、レジにいる青山に顔を向けた。青山は、碧輝と目が合うと苦笑いした。それを見た碧輝は、人だかりができている摩耶が座るテーブル席に向かって駆け寄った。

 

「あ! 摩耶······」

 

碧輝は、驚いて言葉を失った。

 

摩耶は両手にハンバーガーを持って、左右交互に食らいついている。そして、テーブルには数十個というハンバーガーの山ができており、さらにフライドポテトが散乱している。そんな摩耶を、フードコートの客たちが好奇の目で見ながら取り囲んでいた。中には、摩耶をスマホで撮影している者もいる。

 

碧輝は急いで摩耶に近づくと、彼女の左手を掴んだ。

 

「摩耶、ちょっとこっちに来るんだ」

 

「あ、碧輝。ハンバーガーって美味いなー! 摩耶さまは、このハンバーガーを気に入ったぜー!」

 

上機嫌に答える摩耶。そんな摩耶を、碧輝はテーブル席から引き離した。

 

「お、おい。碧輝、何すんだよ。あたしは食事中だぞ······」

 

そんな摩耶の言葉を無視して、碧輝は彼女を引っ張って歩き続けた。フードコートの客たちが、何事か、と2人を凝視している。

摩耶の両手には食べかけのハンバーガーが握られていたが、あまりにも碧輝が強く腕を引っ張るので、ハンバーガーの中身が抜け落ちてしまっていた。

 

碧輝は、摩耶を、従業員用通路であるバックヤードに連れ込んだ。これで碧輝は摩耶と2人だけになった。

 

「摩耶、どういうつもりだよ!」

 

「何が?」

 

「どうしてテーブルの上にハンバーガーの山ができてるんだよ!」

 

「ああ、あれか。全部、この摩耶さまが頂くのさ!」

 

摩耶は笑顔で答えた。碧輝は、そんなことを知りたいんじゃない、と言わんばかりにため息をついた。

 

「あのさ、摩耶。いくらなんでもハンバーガーを買いすぎだろ! あれだけのハンバーガーを女の子が食べていたら周りに目立つじゃないか!」

 

「そんなこと言ったってさー、好きなだけハンバーガーを選べ、と言ったのは碧輝だろ?」

 

「確かにそうだけど、限度ってものがあるだろ! いい加減にしろ!」

 

碧輝は語気を強めて言った。すると、摩耶の表情が瞬く間に険しくなった。摩耶は碧輝を睨みつけた。

 

摩耶が怒っている!

 

摩耶の顔が怒りで紅潮している。初めて摩耶の怒りに触れた碧輝は、驚きと恐怖で全身を硬直させたのだった。

 

 

 

(つづく)

 

 

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