摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた近衛碧輝(このえあおき)。推しの『金剛』を轟沈させてしまった碧輝は、金剛と一緒の艦隊にいた『摩耶』に八つ当たりをして解体してしまう。その直後、摩耶が碧輝の部屋に現れた!

やがて碧輝は、留守番を拒む摩耶を連れてバイト先へ向かうことに。

碧輝がバイト先であるハンバーガーショップで仕事をする間、摩耶は近くのテーブル席で待つことに。やがて、お腹が空いた、と話す摩耶に碧輝はハンバーガーをおごることになったが、店長に呼ばれてしまう。碧輝は、社員の青山に摩耶の相手をさせて職場面談を受けに向かった。

碧輝が面談を終えたあとテーブル席を見ると、摩耶が多くの人に取り囲まれながらハンバーガーを大食いしていることに気づいた。碧輝は慌てて、摩耶をバックヤードに連れて行く。碧輝が摩耶を叱りつけると、彼女は怒り始めたのだった······。





第13話 摩耶さま、胸ぐらをつかむ

 

怒りで顔を紅潮させた摩耶は、背伸びをするように碧輝の鼻先に顔を近づけた。

 

「なあ、提督。お前、ゲームの世界とやらであたしにしたことを忘れていないよな?」

 

「あ、ああ」

 

碧輝は、初めて見る摩耶の怒りの迫力に思わず後ずさりした。さらに、摩耶は詰め寄ってくる。

 

「敵である深海棲艦、装甲空母姫との激戦で金剛は沈んで、他の艦娘たちもみんな大破して疲れきっていたのは覚えてるよな?」

 

摩耶の言葉に、碧輝は後ろめたさを感じながら唾を呑み込んだ。さらに、摩耶の言葉は続く。

 

「そのあと、お前は、あたしに何をした? ああ?」

 

摩耶は怒鳴っていた。摩耶の怒鳴り声がバックヤードの通路に響き渡る。碧輝は、ショッピングモールの従業員に摩耶の怒鳴り声が聞こえていないか気になった。

 

「おい、てめえ! 人の話を聞いてんのか!」

 

摩耶は、自分より背が高い碧輝の胸ぐらを掴んた。碧輝は動揺して目をパチパチとさせながら摩耶の紅潮した顔に視線を向けた。しかし、摩耶と目が合うとすぐに逸らした。

 

「あのとき······そうだ、あのとき、金剛が沈んで撤退したあと摩耶を入渠させて、気がついたら、摩耶を······」

 

「そうよ、あたしを解体したんだよな。入渠させてすぐ高速修復剤を使ってくれたと思って喜んでいたら、飯も食わせることなく解体したんだぜ?」

 

摩耶は、そこまで話すと怒りが収まってきたのか、いくらか冷静さを取り戻した。摩耶の不満を耳にした碧輝は、感情的になって摩耶を解体したことに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。碧輝は、摩耶を見つめた。

 

「摩耶、ごめん······」

 

摩耶は、碧輝が反省している様子を見てとると、深呼吸してからバックヤードの天井を見つめた。

 

「あたしさ、カスガダマ島への出撃以来、なーんにも食べてないんだよ。だからお腹が空いちゃってさー」

 

摩耶は、碧輝に不満をぶつけてスッキリしたのか、いつもの明るい口調に戻っていた。

 

「そ、そうだったのか······」

 

碧輝は、バックヤードの通路を見渡している摩耶を見つめた。

 

俺、摩耶のことより、自分のことしか考えていなかったな······。いきなりゲームの世界から現れたから動揺していたけど、摩耶は、俺たちと同じ人の心を持ってるんだな。

 

碧輝は、自分の不甲斐なさを感じてうつむいた。そんな碧輝を、摩耶は不思議そうに見つめた。

 

「碧輝、どうしたんだ? お腹でも痛いのか?」

 

「違うよ」

 

「急に黙りこくって、うつむいちゃうから心配するじゃねーか」

 

碧輝は、摩耶に顔を向けると、微かな笑みを浮かべて見せた。

 

「摩耶って、怒ると恐いんだな」

 

「そっかー? 長門の怒りのほうが恐いけどな」

 

「そのあたりは知らないけど」

 

その言葉に、摩耶は屈託の無い笑顔を見せた。

 

摩耶は笑うとすごく可愛いんだけどな、と碧輝は思いながら摩耶に笑顔を見せた。

 

「ところで摩耶、ハンバーガーをいくつ買ったんだ?」

 

「いくつだろ? 数えていねーけど、30個くらいじゃねーか?」

 

「さ、30個!」

 

ハンバーガーの数に驚いた碧輝は、頭の中で30個分のハンバーガー代金を計算した。計算を終えた碧輝は、目を閉じながら顔を天井に向けた。

 

「あたしら重巡洋艦は、戦艦や空母ほどじゃないけど、けっこう食べるんだぜ!」

 

「そうだろな」

 

碧輝は天井に顔を向けたまま、棒読みのセリフのように答えた。

 

「最低でも1万5千円の出費だ。今日と明日のバイト代が全部、摩耶のハンバーガー代で消えるってことか······」

 

ガクリと肩を落とす碧輝を、摩耶は不思議そうに見つめた。

 

「なあ、碧輝。何をそんなに落ち込んでるんだ?」

 

「摩耶、ハンバーガー代はタダじゃないんだ。30個もハンバーガーを食べれば、俺にとっては痛い出費なんだよ」

 

「そうなのか? あの兄さん、ハンバーガー代をいつもの半分以下の値段にしてあげる、て言ってたぜ」

 

「青山が?」

 

「名前は知らないけど、あたしにハンバーガーを渡した兄さんだな」

 

「社割でも3割引きなのに、半分以下の値段ってどういうことだ?」

 

「さあな。あ、でも、あの兄さんが出した条件をあたしが呑んだからじゃねーか?」

 

「摩耶、どんな条件を呑んだんだ?」

 

青山が出した条件の内容が気になった碧輝は、摩耶の顔をじっと見つめながら尋ねた。摩耶は、碧輝の顔を見ながら、意味ありげな笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

(つづく)

 

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