摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた近衛碧輝(このえあおき)。

ある日、突然、摩耶が碧輝の部屋に現れた! バイト時間が迫っていた碧輝は、留守番を拒否する摩耶を仕方なく連れていく。

碧輝がバイト先であるハンバーガーショップで仕事をする間、摩耶は近くのテーブル席で待つことに。その後、摩耶はハンバーガーを大食いしてフードコートの客たちに注目されてしまう。

その後、碧輝が摩耶をたしなめたところ、ハンバーガーショップの社員とデートをする条件で大量のハンバーガーを安く買ったことが判明!しかし、デートの意味を“一緒に演習すること”だと思い違いしていたことに気がついた摩耶は、約束を撤回するために碧輝にお金を借りようとする。そこで、また碧輝と摩耶は口論してしまうが、そのとき摩耶は驚愕の事実を告白するのだった······。



第15話 摩耶さまが令和の日本に現れた理由

 

摩耶は碧輝の目を突き刺すかのように睨みつけた。そして、握りしめた右の拳を震わせながら胸元まで上げた。それを見た碧輝は、摩耶に殴られる、と思い、覚悟した。しかし、摩耶は衝撃の事実を口にする。

 

「深海棲艦が、こっちの世界に入り込んでるんだ! いいか、提督! そいつらが、お前の命を狙ってるかもしれないんだ!」

 

摩耶の口調は強かったが、落ち着いていた。摩耶は、話し終えたあと、うつむいて黙り込んだ。

 

碧輝も黙り込んだ。どう答えたら良いのか分からなかったからだ。摩耶がゲームの世界からこちらの世界に現れている以上、彼女が言うように、深海棲艦がこちらの世界に入り込んでいても不思議ではなかった。

 

「摩耶、それは本当なのか?」

 

「ああ。あたしを追いかけてきたからな」

 

「でも、どうして? 摩耶は、俺がゲームの中で解体したから、こっちの世界に現れたはず。だけど、深海棲艦は解体してないぞ。というか、それは不可能だ」

 

「違うんだ。あたしが、穴を開けちまったんだ」

 

「穴?」

 

摩耶は、まだうつむいている。摩耶の胸元で握られた拳が微かに震えていた。

 

「摩耶、どういうことか、詳しく話してほしい」

 

「怒らないか?」

 

摩耶は罪悪感を抱いているのか、うつむいたまま碧輝に尋ねた。

 

「怒らない。俺は、ただ、真実を知りたいんだ」

 

「分かった。話す······」

 

摩耶は、顔を上げた。しかし、その目は伏し目がちだった。

 

「あたし、解体されたあと“舞台”の出口に向かってトンネルを歩いたんだ。そのとき、提督に解体されて頭にきていたからさ、やみくもにトンネルの中で砲撃したんだ。そうしたら、突然、周りが闇に包まれて······」

 

「それで?」

 

「そうしたら、はるか先に出口のような光が見えたんだ。とりあえず、行ってみようと思って歩いていたら、後ろから何かが迫ってくることに気づいたんだ」

 

「それが深海棲艦だったのか?」

 

「ああ、そうだ。あいつら、あたしを後ろから砲撃してきたんだ。しかも、たくさんの艦載機も襲ってきた。さすがのあたしも逃げるしかなくてさ、出口まで逃げたんだ······」

 

「その出口の先が、俺の部屋だったってわけか!」

 

「そう、気づいたら、狭っ苦しい碧輝の部屋にいたんだ」

 

「狭っ苦しい、は余計だな」

 

摩耶は、ようやく碧輝の顔に視線を戻した。

 

「碧輝、あたしを追ってきた深海棲艦たちも、きっとこっちの世界にいるはずだ。もし、あたしや碧輝を見つけたら襲ってくるはず!」

 

「摩耶、それは確かなのか?」

 

碧輝は、摩耶に問いただした。摩耶は、ノースリーブから伸びる白い上腕部の後ろ側を碧輝に見せた。

 

「この弾痕は、トンネルの中で深海棲艦の艦載機にやられたやつだ」

 

碧輝は、摩耶の上腕部に残る弾痕を、じっと見つめた。

 

「火傷してる。大丈夫か?」

 

「このくらい平気さ。だけど、普通、あたしたち艦娘は“舞台”で受けた傷は“舞台”から降りると全て消えちまうんだ。だけど、この火傷は消えない。本物の傷なんだ」

 

碧輝にとって、摩耶の話は、にわかに信じ難いものだった。しかし、こうしてゲーム世界の摩耶がこの世界に現れている以上、信じざるを得ない。

 

それに、摩耶は、この世界に現れてまもなく、突然のように部屋の外へ飛び出していた。すぐに部屋へ戻ってきたけれど、もしかしたら、あのとき摩耶は、深海棲艦が近くにいるか様子を見に行っていたのかもしれない。

 

「なあ、碧輝。あたしの話を信じてくれるか?」

 

「信じられない話だけど······摩耶がこうしてここにいる以上、信じるしかないじゃないか」

 

「だからさ······」

 

摩耶は何かを言いかけて、突然、クルリと碧輝に背中を向けた。

 

「あたしのせいで深海棲艦をこっちの世界に侵入させてしまった以上、提督に随伴して護衛しよう、と決めたんだ!」

 

碧輝は、摩耶の背中を見つめた。よく見ると、摩耶の露出した腰や太ももの後ろにも小さな弾痕が見えた。摩耶が何度も、随伴や護衛という言葉を口にしていたのはそんな理由があったのか、と碧輝は納得した。

 

「摩耶、お前の話を信じるよ」

 

「本当か?」

 

摩耶が明るい声をあげながら振り返って碧輝を見つめた。

 

「そんな理由ってことで、碧輝、あたしにお金を貸してくれよ」

 

摩耶は、そう言うと、照れた笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

(つづく)

 

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