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(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた近衛碧輝(このえあおき)。
ある日、突然、摩耶が碧輝の部屋に現れた! バイト時間が迫っていた碧輝は、留守番を拒否する摩耶を仕方なく連れていく。
碧輝がバイト先であるハンバーガーショップで仕事をする間、摩耶は近くのテーブル席で待つことに。その後、摩耶はハンバーガーを大食いしてフードコートの客たちに注目されてしまう。
その後の碧輝と摩耶による口論で、摩耶は衝撃の事実を告白する。
摩耶はゲーム世界からこちらに現れるとき、深海棲艦たちに追われていた、という。摩耶は、深海棲艦たちを現代日本に引き込んでしまった責任を感じ、提督である碧輝の護衛を誓っていたのだった······。
碧輝は照れた笑みをこちらに向けている摩耶を見つめながら考えた。
摩耶が、こちらの世界に現れてしまった本当の原因は俺にある。ゲームの中で感情的になって摩耶を解体してしまったからだ。対空カットインを発動しなかった摩耶に八つ当たりをしてしまったからだ。大切な『金剛』を失ったとはいえ、俺がもっと冷静であれば、こんな事態にはならなかったんだ······。
微かな罪悪感と責任を感じた碧輝は、摩耶にお金を貸すことに決めた。
「分かった。貸すよ。とりあえず、摩耶のハンバーガー代は俺が立て替えておく」
碧輝は、摩耶にそう伝えたものの、彼女からの返済は期待しなかった。ゲームの世界から現れた摩耶が仕事に就けるはずがないからだ。ハンバーガー代は、摩耶に対する迷惑料だ、と自分に言い聞かせた。
「サンキュー、提督!」
摩耶が満面の笑顔を見せた。
「ただし! 青山への約束撤回は、ちゃんと自分でするんだぞ」
「ああ、分かってるって!」
そのとき、バックヤード内のハンバーガーショップに通じる従業員用ドアが開いた。驚いた摩耶は、身構えた。
「ちょっと、近衛君。こんなところで何をしてるの?」
ドアから現れたのは、湯本店長だった。摩耶は何事もなかったかのように両腕を頭の後ろに組んで天井を見上げた。
「あ、湯本店長。ちょっと休憩してました。今からレジに戻ります」
碧輝が作り笑いをしながら答えると、湯本店長は碧輝と摩耶の顔を交互に見つめた。
「じゃあ、よろしくね!」
湯本店長はドアから顔を引っ込めるとすぐにドアを閉めた。碧輝はドアが閉まったのを確認すると、摩耶に顔を向けた。
「じゃあ、俺は仕事に戻るから、摩耶は青山と話をつけておくんだぞ」
「任せとけっ!」
摩耶は明るい声で答えた。
碧輝は接客カウンターのレジに戻るなり、社員の青山に睨まれた。
「近衛君、どこへ行ってたんだよ!」
「青山さん、摩耶が話があるそうですよ」
青山に問いただされた碧輝は、ニヤリとした笑みを浮かべながら答えた。すると、すぐに青山の顔がほころんだ。
「え、摩耶ちゃんが?」
「ええ。バックヤードで待ってます」
青山は満面の笑みで碧輝の肩を軽く叩くと、小躍りしながら店内の奥へと消えていった。青山の後ろ姿を見送った碧輝は、レジ業務を再開した。
摩耶は5分もしないうちに、ハンバーガーが山盛りになったテーブル席に戻ってきた。
摩耶はテーブル席に腰を下ろすと、接客カウンターにいる碧輝に顔を向けた。摩耶は碧輝と目が合うと、明るい笑顔でガッツポーズをした。そんな摩耶の態度から、青山との約束は取り消された、と感じ取った。
夕方、碧輝はハンバーガーショップのバイトを終えた。スタッフルームで私服に着替えて、バックヤードに出ると摩耶が待っていた。
「碧輝、お疲れ!」
摩耶は、碧輝を見るなり明るく声をかけた。碧輝は笑顔で応じたが、すぐに真顔に戻った。
「摩耶、山盛りのハンバーガーを食べ終わってから、今までどこへ行ってたんだ?」
「うん、ちょっとな! それよりさ、あたしが食べたハンバーガー代、いくらになったんだ?」
碧輝は何も答えず、ただ、レシートだけを摩耶に渡した。レシートを受け取った摩耶は、そこに印字されている数字を見つめた。
「いちまんごせんえん?」
「そう、15000円。俺の2日分のバイト代だよ」
碧輝は、ため息をついた。すると、摩耶は制服の胸元に自分の手を突っ込むとゴソゴソと動かした。何をしているんだろう、と碧輝が摩耶の胸の谷間を見つめていると、彼女は驚くものを取り出した。
「ま、摩耶! それ、どうしたんだよ!」
「どうだ、碧輝。これで足りるか?」
驚いて目を丸くしている碧輝の眼前には、摩耶が鷲掴みにしている何枚もの1万円札があった。
「摩耶、まさか盗んだんじゃないだろうな?」
「この摩耶さまが盗みなどするものか!」
「じゃあ、どうやってそのお金を手に入れたんだよ!」
「あたしも仕事をしたのさ!」
摩耶は得意げな顔で答えたのだった。
(つづく)