摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた近衛碧輝(このえあおき)。

突然、摩耶が碧輝の部屋に現れた! バイト時間が迫っていた碧輝は、留守番を拒否する摩耶を仕方なく連れていく。

碧輝がバイト先であるハンバーガーショップで仕事をする間、摩耶は近くのテーブル席で待つことに。その後、摩耶はハンバーガーを大食いしてフードコートの客たちに注目されてしまう。

その後の碧輝と摩耶による口論で、摩耶は衝撃の事実を告白する。

摩耶はゲーム世界からこちらに現れるとき、深海棲艦たちに追われていた、という。摩耶は、深海棲艦を現代日本に引き込んでしまった責任を感じ、提督である碧輝の護衛を誓っていたのだった。

摩耶が大食いしたハンバーガー代を彼女の希望通りに立て替えた碧輝。バイトを終えた碧輝を待っていた摩耶は、自分の胸元から1万円札を数枚取り出した。そんな摩耶に、碧輝は問いただすのだった······。




第17話 コスプレイヤー摩耶さま

「摩耶が仕事だって?」

 

碧輝は、得意げな笑みを浮かべている摩耶に尋ねた。摩耶は、胸元から取り出した数枚の1万円札を鷲掴みにしたまま碧輝に手渡した。碧輝は、それを無言で受け取ると、1万円札を数えた。

 

「うわ! 3万円もあるじゃないかよ!」

 

碧輝は驚いて目を見開いた。そんな様子を見た摩耶は、可笑しそうに笑った。

 

「じゃあ、碧輝に3万円渡しておくからな」

 

「多すぎるよ。ハンバーガー代は15000円だよ」

 

「あたしが割った窓ガラスの修理費だよ」

 

「あ! 思い出した」

 

碧輝は、摩耶がワンルームの室内で連装砲を発射して窓ガラスを割ったことを思い出した。

 

「窓ガラスの弁償······15000円で足りるかなー」

 

碧輝は唸りながら考え込んだ。

 

「心配するなって! 足りなければ、あたしがまた稼いでやるからさ!」

 

「ところで、摩耶。いったいどうやって、短時間で3万円も稼いだんだ?」

 

「知りたいかー?」

 

摩耶はニヤリと笑いながら碧輝に顔を近づけた。

 

「そりゃ、気になるさ。2時間くらいで3万円も稼げる仕事があるなら、俺だってやってみたいからな」

 

「まー、碧輝には無理だな」

 

「摩耶、もったいぶってないで教えろよ」

 

「ふっふーん! 仕方ない、教えてやるよ」

 

摩耶は両手を腰にあてると、得意げな顔をした。

 

「ハンバーガーを食べ終わったあと、近くを散歩していたらな、男に声をかけられたんだ」

 

「ナンパされたのか!」

 

「なんぱ? 難破などしてないぜ。それでさ、そうしたらいきなり『摩耶に似てますね』と言われてさ『写真を撮らせてください』て言われたんだ。そこでこの摩耶さまは思いついたわけよ」

 

摩耶は、今度は両腕を胸の前で組んで、したり顔で天井を見上げた。

 

「そっか! 撮影料を取ったんだな」

 

「そうよ! それでお金をもらいながら写真を撮らせていたら、また別の男がやってきて稼ぎが増えちまったってわけさ」

 

碧輝は摩耶の説明を聞いて、当然だろな、と納得して頷いた。

 

おそらく、男たちは『艦これ』を知っているカメラ小僧だろう。だから、摩耶のコスプレした女の子を見つけて撮影したんだろうけど、まさか本物の摩耶を撮影していたなんて夢にも思わないだろうな。

 

碧輝は、摩耶の肩に優しく手を置いた。

 

「よくやった、摩耶。だけど、そのノースリーブの制服じゃあ、深海棲艦に見つけられやすくなる」

 

「そうだな。何とかならないか?」

 

「よし、行くぞ!」

 

碧輝は、摩耶の腕を引っ張ってバックヤードからフードコートに抜けるドアを目指して歩いた。

 

「お、おい! 碧輝! どこへ連れて行くんだよ」

 

碧輝は微かな笑みを浮かべながら、フードコートから専門店街の方へと摩耶を引っ張っていった。

 

 

やがて、碧輝と摩耶は専門店街に並ぶ店のひとつにたどり着いた。そこは、アパレルショップだった。

 

「なんだ、服屋じゃねえか」

 

摩耶がポカンと口を開けて、夏物の衣料品が並ぶアパレルショップを見つめている。

 

「摩耶、好きな服を買いなよ。だけど、安いやつな」

 

「そうか、この摩耶さまに変装させる気だな。よし、任せておけ!」

 

摩耶は乗り気だった。さっそくアパレルショップで服を選び始めた。そんな摩耶を、碧輝は微笑みながら眺めていたことを彼自身は気づいていなかった。

 

摩耶が好きな服を選ぶのに3分もかからなかった。摩耶は、薄手の蒼い長袖の服とベージュのショートパンツ、蒼いリボンが巻かれた麦わら帽子を両手で抱えていた。

 

「選ぶのが早いな」

 

碧輝は、女の子の買い物は時間がかかるもの、と思っていたが、それを覆されたので不意をつかれた思いだった。

 

「あたし、こんな性格だろ? 服を選ぶときは艦娘の中でも一番早いんだぜ!」

 

「そうだろな」

 

碧輝は、摩耶が抱えている衣料品の値札をチェックしながら答えた。

 

「よし、じゃあ、これを買ってくるからさ、摩耶は隣のシューズショップで好きな靴を選んできなよ」

 

「しゅーずしょっぷ?」

 

「靴屋のことだよ。そんな艤装品みたいな靴をはいていたら、深海棲艦にバレやすくなるんじゃね?」

 

摩耶は両手に抱えていた衣料品を碧輝に渡すと、視線を足元に落とした。

 

「そうかなー? これ、海に出ると速くなるから良いんだぜ」

 

「こっちの世界で深海棲艦と戦うとしたら陸上になる。そんな艤装品だと戦いづらいだろ?」

 

「まー、そうだなー。じゃあ、靴屋へ行ってくる!」

 

摩耶は納得してなさそうだったが、アパレルショップを後にした。

 

碧輝はアパレルショップで会計を済ませると、隣のシューズショップへ向かった。シューズショップの前では、摩耶が選んだ靴を両手でぶら下げながら碧輝を待っていた。

 

摩耶が手にしている靴を見た碧輝は、呆れてため息をついたのだった。

 

 

 

(つづく)

 

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