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(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた近衛碧輝(このえ·あおき)。
ある日、ゲームの中で艦娘『摩耶』に八つ当たりした碧輝は、衝動的に摩耶を解体してしまった。すると、その直後に、碧輝の部屋に摩耶が現れた!
そのとき、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本に“流出”してしまう。
そんな事実を知った碧輝は、深海棲艦からの目から摩耶を隠すために、ショッピングモールで彼女のために服装品を揃え始めたのだった······。
シューズショップの店先で、摩耶が碧輝を見つめながら待っていた。摩耶は両手に左右の靴をぶら下げている。それを見た碧輝は、それを履くのかよ、と呆れて、ため息をついた。
「碧輝、あたし、この靴が気に入ったぜ」
摩耶は満面の笑みを浮かべながら、碧輝の顔に靴を近づけた。碧輝は顔を天井に向けた。
「碧輝、どうしたんだ?」
碧輝は、摩耶の右手から赤い靴を取り上げた。
「なあ、摩耶。いつ深海棲艦に襲われるか分からないというのに、ハイヒールはないだろ? しかも、これ、10センチのヒールじゃないか」
「はいひーる、というのか。でも、あたしは、これがいいんだ!」
摩耶は、碧輝の手から赤いハイヒールを取り戻した。すでに摩耶の表情からは、先ほどの笑みが消えている。
「せめて、パンプスにしておきなよ。ほら、すぐそこに並んでる靴」
摩耶は、碧輝が指さす方向に顔を向けた。
「えー! こんな低い靴は嫌だよ! あたしはハイヒールがいいんだ!」
パンプスを見た摩耶は、すぐに拒絶して声をあげた。
「どうしてそこまでハイヒールにこだわるんだ?」
碧輝が尋ねると、摩耶は恥ずかしそうにうつむいた。
「そんなの、あたしの勝手だろ」
摩耶は、うつむきながら小さな声で答えた。
「あのー、お客さま。そちらの商品は、どうなさいますでしょうか?」
碧輝と摩耶のやりとりを見ていたシューズショップの女性店員が声をかけてきた。その声に、摩耶が素早く反応した。
「このハイヒール、買うぜ!」
摩耶は女性店員にハイヒールを手渡した。女性店員は笑顔で「ありがとうございます」と礼を言うと、ハイヒールを手に店内のレジへと向かった。
「あ、摩耶。もう、しょうがないなー」
碧輝は、ニヤリと笑みを浮かべている摩耶を横目で見ながらシューズショップのレジへと向かった。
ショッピングモールの専門店街で摩耶の服装品を揃え終えた2人は、駐車場へ向かった。摩耶は、よほど赤いハイヒールが気に入ったのか、すでに、履いている。
「おうおう、どうだ、碧輝! このハイヒールのおかげで摩耶さまの背が高くなったぜ!」
摩耶は上機嫌で碧輝に話しかけた。一方の碧輝は、黙り込んでいた。
このあとマンションに帰って······やっぱり摩耶を泊めることになるのか。摩耶だけホテルに泊めても、あんな性格だから、必ず面倒なことが起こるだろうし、お金もかかる。それより、摩耶は俺の部屋に泊まることをどう思うんだろ?
碧輝は歩きながらそこまで考えると、ふんふん、と上機嫌で鼻歌を歌っている摩耶に顔を向けた。
「なあ、摩耶」
「なんだ?」
「今夜泊まるところ、どうする?」
「どうしよっか?」
摩耶は、碧輝を見つめながらニヤリとした。ハイヒールを履いてる摩耶が、碧輝の顔に近くなっている。碧輝は、摩耶の顔から視線を外した。
そこは、お前から「泊めてほしい」と言うべきだろ。恋人でもないお前に「泊まっていくか?」だなんて言えないじゃないか! ホント、空気を読めない女だな。
碧輝は歩きながら、ため息をついた。
「なあ、碧輝」
碧輝は、摩耶に顔を向けた。
「摩耶さまが、碧輝の部屋に泊まってあげてもいいんだぜ?」
摩耶の言葉に、碧輝は一瞬だけ彼女を睨みつけた。
まったく、なんでまた上から目線で言ってくるんだ、この女は! でも、これが摩耶の性格なんだ。ここは、聞き流してやろう。
「摩耶がそうしたければ、俺はかまわない」
碧輝は、わざとぶっきらぼうに答えると、ジーンズのポケットからクルマのキーを引っ張り出した。
「じゃあ、決まりだな!」
摩耶は明るい声をあげた。
碧輝と摩耶は、クルマに乗り込んだ。碧輝の愛車である黒いプリウスだ。しかし、碧輝はクルマを発進させなかった。碧輝は真顔で、助手席の摩耶に顔を向けた。
(つづく)