摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた近衛碧輝(このえ·あおき)。

ある日、ゲームの中で艦娘『摩耶』に八つ当たりした碧輝は、衝動的に摩耶を解体してしまった。すると、その直後に、碧輝の部屋に摩耶が現れた!

そのとき、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本に“流出”してしまう。

そんな事実を知った碧輝は、深海棲艦の目から摩耶を隠すために、ショッピングモールで彼女のために服装品を買いそろえた。

やがて、夜になり、碧輝は摩耶を連れて帰宅した······。



第20話 夜に武装する摩耶さま

碧輝の部屋はワンルーム。風呂、洗面台、トイレが一緒になった3点式ユニットバスが付いている。当然、2人で過ごすとなると、狭い。しかも、碧輝と摩耶は、男と女。さらに、2人は恋人同士ではなく、まだ出会って1日もたっていない。

 

「こーんな狭い部屋で碧輝と一緒に夜明けを待つのかー?」

 

摩耶がベッドに腰を下ろしながら、フローリングであぐらをかいている碧輝に尋ねた。碧輝は、バイト先のハンバーガーショップで買ったハンバーガーにかぶりつきながら、横目で摩耶を見つめた。

 

「ま、仕方ないかー! あたしが勝手に碧輝の部屋に来ちゃったんだからなー」

 

碧輝は、ハンバーガーを頬張りながら、何度も頷いた。

 

「でもさー、ベッドは1つしかないぜ? ここで抱き合って寝るかー?」

 

摩耶がニヤリとしながらそう言った直後、碧輝が口の中の食べ物を吹き出した。

 

「うわ! 汚ねぇなー! 食べたものを吹き出すなよー!」

 

摩耶が悪戯っぽく笑いながら碧輝の肩を軽く叩いた。碧輝はローテーブルに吹き出された食べかすをティッシュでかき集めると、摩耶を横目で睨んだ。

 

「冗談に決まってるだろ! あたしは、どこかの提督に解体された艦娘だぜ? そんな艦娘と一緒のベッドで寝たくはないだろ?」

 

摩耶は笑みを浮かべながら碧輝に向かって尋ねた。碧輝は、何も答えることなく、食べかけのハンバーガーに視線を戻した。そんな碧輝を見ていた摩耶の顔から笑みが消えた。摩耶は、ベッドから腰を浮かせて立ち上がった。

 

碧輝は、あいかわらず黙々とハンバーガーを食べている。摩耶は、碧輝の背中を一瞥すると、部屋の隅へ移動した。そこには、摩耶が取り外した連装砲や機銃などの艤装品がまとめて置いてあった。

 

摩耶は何も言わずにアンテナ型のカチューシャを頭に着用した。そのあと、連装砲や機銃などを腕に装着していく。摩耶が艤装品を装着していくことに気づいた碧輝は、首を傾げた。

 

「摩耶、どうして武装し始めたんだ?」

 

「あ? ちょっと、外で射撃練習でもしてくる」

 

摩耶は低い声で答えた。碧輝は慌てて立ち上がった。

 

「やめろよ。こんな街中で連装砲なんか発射したら、すぐに警察を呼ばれるじゃないか!」

 

「じゃあ、どこか人気(ひとけ)が無いところまでクルマで連れて行ってくれよ」

 

「えー? 今からか? 俺、明日は朝からバイトなんだよ」

 

「ふーん。じゃあ、あたし、ひとりで行ってくる」

 

摩耶は、そう答えると玄関に向かった。

 

夜の街で摩耶をひとりで歩かせたら、絶対に面倒なことが起こる!

 

そう感じた碧輝は、慌てて玄関に向かった。

 

「待てよ、摩耶。分かったよ、連れていくよ!」

 

「碧輝は、明日はバイトなんだろ? 無理しなくていいぜ」

 

摩耶は玄関に座り込んで艤装品のブーツを履きながら言った。

 

摩耶をひとりで夜の街を歩かせる方が心配で眠れなくなるよ······。

 

碧輝は、そう思いながら、ため息をついた。

 

こうして再びフル装備の艦娘となった摩耶と、エアガンであるベレッタを“装備”した碧輝は、マンションの駐車場へ向かった。

 

途中、マンションの住人男性とすれ違った。当然のようにノースリーブでミニスカ姿の摩耶を興味深そうに見つめた。それに気づいた碧輝は「これ、コスプレなんです」と苦笑いでごまかした。

 

やがて、碧輝と摩耶は黒いプリウスに乗り込んだ。

 

「摩耶、どうして買ってあげた服を着ないんだよ?」

 

碧輝は、助手席の摩耶に尋ねた。

 

「あとから着るよ。それより、碧輝。ここから海は近いのか?」

 

「海? クルマで1時間の距離かな」

 

「そっかー。まあ、いいや」

 

摩耶は、それだけ答えると黙り込んでしまった。

 

摩耶は、何を考えているんだろ?

 

碧輝は、摩耶の横顔を見つめた。車外から差し込む街灯の白い光が摩耶の顔を淡く照らしている。碧輝は、摩耶の横顔を見つめたまま、一瞬、時の流れを忘れた。そのとき、突然、摩耶が碧輝に顔を向けた。

 

「碧輝、クルマを発進させないのか?」

 

「あ、ああ。今から出すよ」

 

驚いた碧輝は、慌ててエンジンスタートボタンを押した。そんな碧輝を見ながら、摩耶は首を傾げたのだった。

 

 

 

(つづく)

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