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(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。
ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!
そのとき、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本のどこかに“流出”してしまう。
その夜、山奥のダム湖へ向かった碧輝と摩耶。
摩耶がダム湖で射撃練習を始めたので、碧輝は、ひとり、湖畔で待つことに。そのとき、碧輝は深海棲艦である軽巡ホ級に襲われてしまう。碧輝は逃げ損なって転倒。そこへ軽巡ホ級の全砲門が向けられたのだった······。
ズドーン! という炸裂音と爆風によって、碧輝は目の前が真っ暗になった。闇の中で地響きのような悲鳴が聞こえてくる。再び砲撃音が聞こえると同時に、また地響きのような悲鳴が、今度は短く発せられた。その後、碧輝は自分のすぐ近くに何かがドサリと倒れる振動を微かに感じた。
「碧輝ー! 大丈夫か?」
コンクリートの階段を駆け上がってくる鈍い足音と一緒に摩耶の叫び声が聞こえてきた。摩耶が近づいてくることを察した碧輝は、閉じていた目をゆっくりと開いた。すると、そこには碧輝の顔を覗き込む摩耶の顔があった。
「碧輝、立てるか?」
摩耶が碧輝の右腕を引っ張った。碧輝は、摩耶に支えられながら、よろよろと立ち上がった。そのとき、すぐ傍に、軽巡ホ級が倒れていることに気づいた。軽巡ホ級の大きな歯や幾つもの砲身は破壊されて、見るも無惨な姿になっていた。
「碧輝、ケガはないか?」
摩耶が心配そうな表情で碧輝を見つめている。碧輝は「大丈夫だ」と微笑んで見せた。
「やっぱり、深海棲艦も、こっちの世界に来ていた」
摩耶は、軽巡ホ級の死体を見下ろしながら呟いた。碧輝は、無言のまま、軽巡ホ級の死体を見つめている。
「コイツは軽巡ホ級。この世界へ抜けるトンネルで、あたしを艦載機で襲ってきた深海棲艦じゃないな」
「摩耶······」
「ん?」
碧輝は、摩耶を見つめた。
「ありがとう、助かったよ」
「なあに、いいってことよ!」
摩耶は笑顔でウインクして見せた。碧輝は、階段で息絶えた軽巡ホ級を見下ろした。そのときだった。軽巡ホ級の全身が透け始めた。その数秒後、軽巡ホ級は音もなく消滅した。
「消えた······」
碧輝は呟くと、安堵のため息をついた。
「さっき、クルマの前を横切ったのは軽巡ホ級じゃねーのか?」
摩耶は、アンテナ型のカチューシャの位置を整えながら碧輝に尋ねた。
「いや、あれは軽巡じゃなかった。もっとしっかり人の形をしていたような気がする」
「じゃあ、まだ近くに深海棲艦がいるかもしれないなー」
摩耶の言葉に、碧輝はエアガンのベレッタを手にしながら周辺を警戒した。
「そういえば、さっきの軽巡が俺に話しかけてきたんだ」
「そうなのか。何を言われたんだ?」
「お前は艦娘の仲間か? と言っていた気がする」
「あいつら、やっぱり、あたしを追いかけてこっちの世界に入ってきたんだな」
「いったいどれだけの深海棲艦が、こっちの世界に流れ込んできたんだ?」
「わからないなー。うん、分から······」
突然、摩耶が言葉を切って、碧輝の背後に目をやった。次の瞬間、いきなり摩耶は碧輝に正面から抱きついた。突然、摩耶に抱きつかれた碧輝は驚いて目を丸くした。
「碧輝、そのまま動くな」
摩耶が碧輝の耳元で囁いた。摩耶の胸が碧輝の胸板に密着している。碧輝は、何が起きているのか分からなかった。
摩耶は碧輝を正面から見つめた。2人の鼻先が触れ合うほど近い。混乱した碧輝は、目を見開きながら摩耶を見つめた。そのときだった。摩耶は目を閉じると、碧輝の唇に自分のそれを重ねた。碧輝は目を見開いていたが、まもなく目を閉じて、摩耶からのキスを受け入れた。
摩耶は······俺のこと、好きだったのか?
摩耶とキスをしている碧輝の心に、甘みのある温かな心地良さが広がっていく。碧輝も摩耶を抱き締めた。優しく、それでいて力強く、碧輝は摩耶を自分に引き寄せるように抱き締めた。それに気づいたのか、摩耶は右目だけを開いて、碧輝の肩越しに彼の背後を睨みつけながらゆっくりと右腕を上げていく。
突然、碧輝の背後で砲撃音が轟いた。ズドーン、ズドーンと、摩耶が碧輝の後方に向かって速射を始めたのだ。
摩耶の速射音が碧輝の鼓膜を震わせる。何が起きたのか分からない碧輝は、ただ目を見開いて、摩耶の砲撃が止むのを待つしかなかった。
(つづく)