摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。

ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!

そのとき、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本のどこかに“流出”してしまう。

その夜、山奥のダム湖へ向かった碧輝と摩耶。

山奥のダム湖では、ついに深海棲艦と遭遇。摩耶は2体の軽巡を撃破した。しかし、摩耶が“作戦”のために碧輝にキスをしたことで、2人の関係は微妙なものになっていく。

やがて、自販機を壊した摩耶をクルマに乗せた碧輝は、帰途についたのだった。



第26話 摩耶さまの姉妹艦

碧輝が摩耶と一緒にワンルームマンションに帰宅すると、深夜11時をまわっていた。

 

ダム湖からの帰り道、車内は静かだった。なぜなら、助手席の摩耶は、ずっと車外を警戒していたからだった。

 

帰宅すると、摩耶は射撃練習や帰り道での警戒で疲れたのか、すぐに碧輝のベッドへ仰向けに倒れ込んだ。

 

ノースリーブの制服のまま、しかも、アンテナ型のカチューシャを外すことなくベッドで眠ってしまった摩耶。スリットが入った白いミニスカートから伸びる白くて長い美脚が目に入った碧輝は、思わず生唾を呑み込んだ。碧輝は、摩耶が眠っているベッドに手を伸ばした。碧輝の右手が摩耶の美しい脚に伸びていく。

 

「俺のベッドを占領しやがって······」

 

碧輝はベッドに置かれていた毛布を手に取ると、摩耶の脚や腹部が隠れるように毛布をかけてあげた。

 

碧輝は、摩耶の寝顔をじっと見つめた。碧輝の視点は次第に摩耶の唇に移っていく。

 

「お前なんかに女の気持ちが分かってたまるかよ!」

 

ダム湖での摩耶の言葉が、碧輝の脳裏を駆け抜けた。

 

摩耶が俺にキスをしたのは、深海棲艦を油断させるため······だけじゃなかったのか?

 

碧輝は摩耶を見つめながら考えた。しかし、すぐに頭を振って考えるのをやめた。

 

「女の子の気持ちなんて、考えてわかるもんじゃない。とくに好きな人の気持ちなんて······」

 

つい考えていたことを口にしてしまった碧輝だったが、自分が出した言葉に驚いてしまった。

 

俺は、摩耶のことが好きなのか?

 

「ちょうかーい、どこにいるんだよー」

 

碧輝が自分の本心を探っていると、突然、摩耶が言葉を発した。しかし、摩耶は眠っている。どうやら寝言のようだ。

 

「ちょうかい? ああ、重巡『鳥海』のことか······」

 

碧輝は呟いた。そのとき、碧輝の頭に閃くものがあった。

 

碧輝はローテーブルに向かって座ると、ノートパソコンを開いた。そして、ゲーム『艦隊これくしょん』にログインした。画面には、大勢の艦娘の名前が並んでいる。碧輝は、艦娘たちの名前をスクロールさせていくと、『鳥海改二』のところで止めた。

 

「鳥海。摩耶の姉妹艦だ」

 

碧輝は、鳥海改二の画像をじっと見つめた。

 

「試しにやってみるか? でも練度が66だし、改装設計図まで使って改二に改造した艦娘だからな······」

 

碧輝はパソコンの画面を見つめながら眉をひそめた。その後、碧輝は、しばらく唸っていたが、決意したように大きく頷いた。

 

碧輝は『艦隊これくしょん』のゲーム画面の中で、鳥海改二を解体した。鳥海改二は、碧輝の艦娘リストから消え去った。その直後、碧輝は、室内で何か異変が起こるかと思い、自分の部屋を見渡した。しかし、何も変化は無かった。

 

碧輝は立ち上がるとトイレへ行った。トイレから戻ってみると、部屋にはベッドで寝息をたてている摩耶しかいない。碧輝は、うつむきながら、ため息をついた。

 

「やっぱり無理か。摩耶のように、鳥海を解体したら俺の部屋に現れると思ったんだけどな」

 

碧輝は、再び、ノートパソコンの前に座った。

 

「せっかく改二まで育てた鳥海を無駄になくしてしまった······」

 

碧輝は、残念な思いで大きなため息をついた。

 

「そろそろ寝るか。明日は朝からバイトだからな」

 

碧輝は、ベッドで眠っている摩耶を見つめた。

 

摩耶の寝顔、可愛いな。こんな可愛い顔してるのに、なんで男みたいな性格してるんだろ? それさえなきゃ、金剛ちゃん以上なのに······。

 

碧輝は、そう思いながら天井の照明を消した。薄暗い部屋の中、フローリングの上に横たわった碧輝は、ため息をつきながら目を閉じた。

 

 

1時間が過ぎた頃、薄暗い部屋の中で碧輝は上半身を起こした。

 

「摩耶がくれたブラックコーヒーを飲んだせいで眠れないじゃねーかよ」

 

碧輝は小さく呟いた。隣のベッドからは、摩耶の寝息が聞こえてくる。

 

「でも、頑張って眠らないと! 日曜日のオープンからレジやらなきゃいけないからな」

 

碧輝は小さく呟くと、再び、フローリングの上で横たわって目を閉じた。しかし、眠ろう、とすればするほど眠れない。しかも、摩耶とのキスシーンが碧輝の脳裏に何度もちらついてくる。

 

さらに、1時間が過ぎて、ようやく碧輝も寝息をたて始めた。そのときだった。突然、碧輝はお腹を踏まれて飛び起きた。暗闇の中で何かが動いている。碧輝は、すぐに立ち上がると、天井の照明を灯した。すると、玄関で、摩耶が屈んでブーツを履いている後ろ姿が目に入った。

 

「摩耶、こんな時間に何をしてるんだよ?」

 

碧輝が摩耶の背後から声をかけた。すると、摩耶が振り返って碧輝を険しい表情で見つめた。

 

「鳥海が、あたしに助けを求めてるんだ!」

 

摩耶は語気を強めて答えると、勢いよく立ち上がったのだった。

 

 

 

(つづく)

 

 

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