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(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。
ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!
そのとき、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本のどこかに“流出”してしまう。
山奥のダム湖で深海棲艦たちと遭遇した夜、突然、摩耶が碧輝の部屋を飛び出した。碧輝は摩耶を追うが見失ってしまう。摩耶は、鳥海を探しに出たのだった。
やがて、鳥海を見つけた碧輝は、痴漢から彼女を救い出した。その後、クルマの助手席に鳥海を乗せた碧輝は、彼女から熱い眼差しで見つめられる······。
運転席の碧輝は、助手席に座る鳥海と目が合った。鳥海の黒目が眼鏡を通して大きく見える。鳥海は、はにかみながらも碧輝をじっと見つめている。
「ちょ、鳥海······。俺の顔に何か付いてるのかな?」
鳥海に熱い眼差しを注がれた碧輝は、どうしたら良いか分からず、動揺しながら目を伏せた。
「司令官さん」
「はい」
「さっき、男の人に、私との関係を尋ねられたとき······」
「うん」
「私のことを、カノジョ、と言っていましたよね?」
「そう······だったかな?」
「はい。私、ちゃんと聞いていました」
「そうなんだ······」
「その、カノジョって、どういう意味なんですか?」
「あ、あれは、咄嗟に言った言葉だから気にしないで」
まずいことになった、と碧輝は思った。
こちらの世界では『カノジョ』は『恋人』の代名詞のような言葉だ。このまま正直に答えたら、鳥海に誤解を与えかねない。
碧輝は、嘘をつくことにした。
「カノジョ、というのは、女友達っていう意味だよ」
碧輝は、そう答えながら作り笑いを浮かべた。そのときだった。鳥海の眼鏡が、一瞬、キラリと光った。
「それは違いますね。今の司令官さんの態度から分析すると、ウソをついていると、お見受けいたしました」
鳥海は右手の人差し指で眼鏡の縁を少し浮かせるような仕草をすると、落ち着いた口調で言い放った。
ウソを見破られた碧輝は、動揺しながら鳥海の顔を見つめた。鳥海は微笑んでいるが、眼鏡の向こうにある瞳は、笑っていない。
碧輝は、鳥海が艦娘たちの中でもかなり頭が良い存在なのだ、ということを思い出した。
「司令官さん、もう一度、お尋ねいたします。カノジョ、の本当の意味は何でしょうか?」
鳥海に問い詰められた碧輝は、観念した。鳥海にウソは通用しない。
「本当の意味は······カノジョの意味は······」
「意味は?」
「恋人です」
碧輝が白状した次の瞬間、鳥海が運転席に向かって両腕を伸ばした。殴られる、と思った碧輝は、強く目を閉じた。
その直後、鳥海は碧輝の背中に手を回すようにして抱きしめた。
「司令官さん、私、とても嬉しいです!」
鳥海から意外な言葉を耳にした碧輝は、驚いて目を見開いた。
「え?」
「私、ずっとずっと司令官さんに憧れていたんです! だから、私のことを恋人だと言ってくれたこと、すごく嬉しいのです!」
鳥海は、さらに強く碧輝を抱きしめた。思ったより、鳥海も摩耶と同じくらい力が強い。
そのとき、碧輝の脳裏に、摩耶とのキスシーン、が甦った。
「摩耶······」
思わず摩耶の名前を口にする碧輝。すると、すぐに鳥海が碧輝から身体を離して車外を見渡した。
「摩耶がいたんですか?」
「いや、そろそろ摩耶を探しに行こうか、と思って」
碧輝が慌てて答えた。そんな碧輝を、じっと見つめる鳥海。
しばらく、碧輝を真顔で見つめていた鳥海だったが、突然、微笑んだ。
「そうですね! 摩耶を探しましょう!」
鳥海は、明るい笑顔で頷くと、目を閉じた。碧輝は、またウソを見破られて鳥海に問い詰められる、と覚悟していたので安堵した。
「よし、じゃあ、クルマを発進させるよ」
「司令官さん、少々お待ちを!」
碧輝がエンジンスタートボタンを押した直後、鳥海がクルマの発進を制した。
「どうかしたの?」
碧輝が助手席の鳥海に目をやると、彼女は首にぶら下げているペンダントを右手で握っていた。
「いま、私の水上電探で探しています」
「そっか、その手があったか!」
鳥海は水上電探のペンダントを胸の前で握りしめながら目を閉じている。きっと集中しているのだろう、碧輝は鳥海の邪魔をしないように、期待しながら結果を待った。
1分ほど過ぎてから、鳥海が目を開いた。
「鳥海、どうだった?」
「司令官さん、申し訳ありません。周辺に障害物がたくさんありすぎて、うまく探せませんでした」
鳥海は碧輝を見つめながら、残念そうに頭を振った。
「仕方ないよ。ここは住宅街だし、周辺にはマンションが多いからね。電探がうまく働かなくても仕方ないよ」
「司令官さんは、やっぱり、お優しいのですね」
鳥海は、碧輝に向かって微笑んだ。碧輝は、鳥海に向かって笑みを浮かべた。しかし、心の中では、摩耶のことが心配でならなかった。
摩耶、心配かけんなよ······。
碧輝は、心の中でそう呟きながら、ゆっくりとアクセルを踏んだのだった。
(つづく)