摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。

ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!

そのとき、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本のどこかに“流出”してしまう。

山奥のダム湖で深海棲艦たちと遭遇した夜、突然、摩耶が碧輝の部屋を飛び出した。碧輝は摩耶を追うが見失ってしまう。摩耶は、鳥海を探しに出たのだった。

やがて、鳥海を見つけた碧輝は、痴漢から彼女を救い出した。その後、鳥海も摩耶探しに加わる。鳥海が水上電探で捜索するが、住宅街では役に立たなかった。

碧輝は鳥海を乗せて、再びクルマを走らせた······。



第30話 摩耶さま、警察に捕まる

深夜の街をあてもなく走り回る黒いプリウス。碧輝が運転する黒いプリウスは、助手席に鳥海を乗せながら行方不明の摩耶を探していた。

 

「鳥海、摩耶から無線が入っていない?」

 

碧輝は運転しながら鳥海に尋ねた。

 

「入っていますよ」

 

鳥海の返答を耳にした碧輝は、ブレーキをかけてクルマを停止させた。

 

「摩耶は、どこにいるって?」

 

碧輝は、助手席に身を乗り出すような勢いで鳥海に尋ねた。すると、一瞬、間があってから鳥海が微笑んだ。

 

「それが······いま、交番にいるそうです」

 

「交番だって? 摩耶、警察に捕まったの?」

 

鳥海が黙り込んだ。どうやら、摩耶と無線通信で会話しているらしい。まるでテレパシーだ、と碧輝は感心した。

 

「司令官さん、事情が分かりました。摩耶は、歩いていたら警察に捕まったそうです」

 

「深夜に、あんな露出度が高い服装して独りで歩いていれば、警察だって保護するだろな······」

 

碧輝は呆れてため息をついた。一方で、摩耶が無事だったことに安堵した。

 

「鳥海、摩耶に伝えてほしい。今から迎えに行くから、交番で待っているように、と」

 

「そ、それが······」

 

「どうしたの?」

 

「摩耶、たった今、交番から脱走したみたいです」

 

「あいつ、何をやってるんだよ! そんなことしたら、警察に疑われるじゃないか!」

 

碧輝は、疲労混じりのため息をついた。

 

「司令官さん」

 

「今度は何?」

 

「摩耶、警察に捕まったみたいです」

 

「そっか、良かった。もう逃げるんじゃないぞ」

 

碧輝はクルマを発進させると、最寄りの交番へ向かった。

 

交番まで500メートルの距離まで近づいたときだった。道路の反対車線を誰かが走ってくることに気がついた。さらに、その後方から赤い回転灯を煌めかせたパトカーが走ってくる。

 

碧輝は嫌な予感がすると同時に、それはすぐ的中した。

 

碧輝が運転する黒いプリウスが、反対車線を走っている摩耶とすれ違った。摩耶は、ミニスカートを履いていることなどおかまいなしで、全力で疾走している。

 

碧輝はブレーキをかけると、道路沿いの駐車場を利用して反転した。そして、摩耶を追いかけるパトカーに追いつこうとアクセルを踏み込んだ。

 

「もう、摩耶は何やってんだよ!」

 

摩耶に呆れ果てた碧輝は、運転しながら悲鳴のような声をあげた。

 

「司令官さん。摩耶が、ご迷惑をおかけしまして申し訳ございません」

 

助手席の鳥海が、運転席の碧輝に向かって深々と頭を下げた。

 

「まあ、あれが摩耶の性格なんだから仕方ないか······」

 

碧輝は独り言のように呟くと、微かな笑みを浮かべた。

 

 

10分後、碧輝と鳥海、そして、摩耶は交番のテーブル席に座っていた。テーブル席には、2人の警官も座り、摩耶をたしなめている。しかし、摩耶は冷たいお茶を飲んでばかりで、まったく警官の話を聞いていないようだった。

 

「では、あなたが身元引受人ということで、よろしいですね?」

 

「はい。妹がお騒がせしまして、申し訳ないです」

 

警官の言葉に対して、碧輝は頭を下げた。

 

「また碧輝の妹役かよ」

 

摩耶が呆れたように呟いた。

 

「摩耶!」

 

碧輝が摩耶に顔を近づけながら叱りつけた。

 

「じゃあ、摩耶さまは帰るとするか!」

 

摩耶はイスから立ち上がると、交番を出て行った。すぐに鳥海が摩耶を追うように交番から出ていく。最後に碧輝が2人の警官に頭を下げながら交番を離れた。

 

 

黒いプリウスに乗り込んだ碧輝と摩耶、鳥海の3人。

 

碧輝は運転席に乗り込むなり大きなあくびをした。助手席の摩耶は自分でシートベルトを着けると、運転席であくびをしている碧輝の左肩をポンと叩いた。

 

「碧輝、どこに行ってたんだよ」

 

「それは、こっちのセリフだよ」

 

「まあ、鳥海も見つかったし、碧輝も無事だし、あたしは満足さー!」

 

助手席で機嫌よく声をあげる摩耶に対して、碧輝は横目で苦々しそうに見つめた。

 

「もう、摩耶ったら、ちゃんと司令官さんに謝りなさい」

 

後部座席の鳥海が、摩耶を諭した。しかし、摩耶は、馴れ馴れしく碧輝の左肩を軽く叩きながら笑みを浮かべるだけだった。

 

こうして、3人が乗る黒いプリウスは、交番を離れて帰途についた。3人が碧輝の部屋に到着した頃、はるか東の空では白み始めていた。

 

 

 

(つづく)

 

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