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(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。
ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!
そのとき、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本のどこかに“流出”してしまう。
ショッピングモールでハンバーガーを大食いしたり、深夜のダム湖で深海棲艦と交戦したり、「鳥海が呼んでいる」と叫んで深夜の街へ飛び出した、摩耶。
一方の碧輝は、摩耶を探していると、こちらの世界に流出してきた鳥海を見つける。碧輝と鳥海が一緒に摩耶を探していると、摩耶は警察に捕まっていた。碧輝が身元引受人として摩耶を引き取ると、3人で帰宅するのだった······。
東の空が微かに白み始めた頃、碧輝は、摩耶と鳥海を連れて帰宅した。鳥海にとっては、初めての碧輝の部屋だ。
「なんて、狭い部屋······」
「そうだろ? あたしたちの提督は、こんな狭い部屋で暮らしていたんだぜ!」
鳥海はワンルームの部屋に入るなり、思わず呟いた。それを摩耶が笑いながら応じた。
碧輝は黙っていた。もう眠気が限界だった。それなのに、あと3時間も眠れるほどの時間がない。朝7時には起きて、バイトへ行かなければいけないからだ。
碧輝はスマホを手に取ると、アラームを設定した。そして、鳥海に顔を向けた。
「鳥海、頼みがあるんだけど」
「はい、司令官さん! 何でしょうか?」
「7時にアラームが鳴っても俺が目を覚まさなければ、起こしてほしい」
「はい、かしこまりました!」
鳥海は元気な声で答えると、碧輝に向かって敬礼をした。碧輝は、スマホをローテーブルの上に置くとベッドに倒れ込んだ。
ベッドで眠りに落ちていく碧輝。その耳に、摩耶と鳥海の会話がうっすらと届いてくる。
「摩耶、舞台から消えたと思ったら、こんなところにいたのね。私、探したんだから」
「あー、そうなんだよ。あたしが、こっちに来たのは提督······碧輝のせいなんだよなー」
「司令官さんが原因って、どういうことなの?」
「碧輝が、あたしを解体して舞台から降ろしちまったんだよ。そうしたらさ、変なトンネルが現れて、こっちの世界に来ちまったんだよ。そういう鳥海も解体されたのか?」
「うん。突然、解体の指令を受けて舞台を降りたら、急に目の前が真っ暗になってしまったの。でも、すぐに出口を見つけたわ。だけど、気がついたら、私たちの世界とは違う世界にいたの」
「そっかー。なあ、鳥海。その暗闇の中に深海棲艦は、いたか?」
「見てないわ。でも、どうして私は解体されたのかしら? 司令官さんの命令にはしっかり従って頑張ってきたのに······」
眠りに落ちていく碧輝の耳に届く摩耶と鳥海の会話が、途切れ途切れになっていく。
「司令官さん、ずいぶん、たくさん寝るのね。そんなに······」
「見ろよ、鳥海。これ、スマホって言うんだぜ······」
「あ、摩耶。司令官さんのスマホをそんなにいじったらダメよ。あ、スマホが······」
「······真っ暗になっちまった。高性能な無線通信機のわりには、すぐにダメになるんだな」
「もう、摩耶ったら! いつもすぐそうやって壊しちゃうんだから······」
「あー、つまんねえ! 鳥海、あたし、もう寝る······」
すると、ベッドで深い眠りに落ちつつある碧輝は、自分の身体を誰かが押したのを感じた。そのとき、何か尖ったものが碧輝の頭に当たった。碧輝は、それに気づいたものの、完全に目を覚ますことはなかった。
引き続き、碧輝の浅く眠る意識の中に、摩耶と鳥海の断片的な会話が耳に入ってくる。しかし、碧輝が2人の会話に反応することはない。
「摩耶、アンテナのカチューシャを外さないと······」
「······あれ? 鳥海も眠るのか? 碧輝を起こす命令を受けてたんだろ?」
「夜7時よ。それまで、まだまだ時間があるから、私も寝るわ」
「じゃあ、鳥海も一緒に寝ようぜ! あたしたちで碧輝を挟むようにして寝てやろう」
「うふふ、いいわね。それじゃあ、私は司令官さんをまたいで、摩耶の反対側へ行くわね······あっ!」
そのときだった。碧輝は顔面を強く踏まれて、そのまま気を失った。
どれだけ眠っただろう、突然、碧輝は上半身を勢いよく起こした。室内が明るく、蒸し暑い。ふと、ベッドを見ると、碧輝の左右には摩耶と鳥海が寝息をたてて横たわっている。
碧輝は慌ててベッドから離れると、ローテーブルに置いてあるスマホを手に取った。スマホの画面は、真っ暗だった。
碧輝が飛び起きた振動で、摩耶が目を覚ました。
「おはよ、碧輝······」
摩耶は、アンテナ型のカチューシャを外しながら低い声で呟いた。
「うわ! なんでスマホの電源が落ちてるんだ! いま、何時だよ!」
ひとりパニックに陥っている碧輝。
「壁の時計は3時になってるぜ······」
摩耶は、白い壁に掛けられている丸いデジタル時計を指さすと、大きなあくびをした。
「3時だって?」
碧輝は叫びながら白い壁時計に顔を向けた。碧輝の全身が硬直した。
「おはようございます。司令官さん······」
眼鏡をかけていない鳥海が、挨拶をしながらゆっくりと上半身を起こした。鳥海が目を覚ましたことに気づいた碧輝は、ゆっくりと彼女に顔を向けた。
「鳥海、なんで、起こしてくれなかった······の?」
鳥海は寝ぼけ眼で碧輝を見つめたが、眼鏡をかけていないため目の焦点が合わず、目をぱちぱちとさせている。
「俺、7時に起こしてくれって言ったじゃん!」
碧輝の言葉に、鳥海は慌ててベッド脇の小さな台に置いてあった眼鏡を手にした。
「司令官さん、まだ3時ですよ?」
鳥海は眼鏡をかけると、壁時計を見ながら答えた。
「いや、俺、朝の7時に起こしてほしかったんだけど······」
碧輝の言葉を耳にした鳥海は、血の気が引いたような真っ青な顔になった。
「司令官さん! 申し訳ございません!」
鳥海はベッドの上で土下座して謝罪した。その隣りでは、摩耶が再び寝息をたてていた。
(つづく)
本日は、18時以降に、第32話を投稿する予定です。