摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。

ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!

そのとき、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本のどこかに“流出”してしまう。

ショッピングモールでハンバーガーを大食いしたり、深夜のダム湖で深海棲艦と交戦したり、「鳥海が呼んでいる」と叫んで深夜の街へ飛び出した、摩耶。

碧輝は、行方不明だった摩耶と、新たにゲーム世界から流出してきた鳥海を連れて無事帰宅した。しかし、摩耶のイタズラと鳥海の勘違いでバイトを無断欠勤するはめになってしまったのだった······。



第32話 笑う摩耶と泣く鳥海

碧輝は、バイト先のバーガーショップを無断欠勤したことになってしまった。しかも、日曜日の忙しい日のレジ担当としての業務を放棄した、とみなされてしまったのだ。

 

摩耶が壊したとされていたスマホは、単に、電源がオフになっていただけだった。

 

碧輝は、スマホの電源が入るとすぐにバイト先であるバーガーショップへ電話を入れた。もちろん、無断欠勤の理由を「艦娘のせいです」なんてことは言えない。

 

いつもは優しい女性店長である湯本からは、厳しく叱られた。さらに、ペナルティとして、しばらくシフトから外されてしまったのだった。

 

「おい、提督のくせに怒られてるぜ」

 

碧輝が冷や汗をかきながら電話で話している様子を見ていた摩耶は、笑みを浮かべながら鳥海を横目で見つめた。碧輝が寝坊した責任を感じていた鳥海は、ただ黙ってうつむいている。

 

碧輝は、スマホの画面をタップして通話を終了すると、頭を垂れながらため息をついた。

 

「明日から、どうすればいいんだ······」

 

碧輝は弱々しく呟いた。そんな碧輝を見ていた鳥海は、再び、土下座した。

 

「司令官さん、本当に申し訳ございません! この過ちは、戦果をあげることで償います!」

 

鳥海からの謝罪の言葉を耳にした碧輝は、戦果よりお金だよ、と思いながら頭を振った。

 

「なあ、碧輝。鳥海もこれだけ謝ってんだからさー、許してあげなよ」

 

「今回の件は摩耶にも責任あるんだぞ! 俺が寝ているときにスマホの電源を落としやがって! そのせいで、アラームも店からの電話も俺に届かなかったじゃないか!」

 

摩耶の言葉に対して、碧輝は食ってかかった。

 

「そうなのかー。それは悪かったな」

 

「他人事みたいに謝るんじゃねーよ!」

 

「何だと? さっきから聞いてりゃ、言いたいこと喚きやがって!」

 

今度は、摩耶が碧輝に食ってかかる。摩耶と碧輝は、お互いの鼻先が触れ合うほど顔を近づけながら睨み合った。そんな2人を見ていた鳥海は涙をこぼした。

 

「もう争うのはやめてください。いま必要なのは、私たちが団結することなんですよ」

 

鳥海の涙ながらの言葉に、碧輝と摩耶は首を傾げた。

 

「鳥海、あたしたちは団結してるぜ!」

 

「そ、そうだよ。摩耶とは喧嘩はするけど、何とか上手くやってる」

 

碧輝と摩耶は、鳥海を慰めるように優しく声をかけた。

 

「とてもじゃないけど、団結しているようには見えないわ」

 

鳥海が右手の甲で涙を拭った。

 

「そんなことないさ! 碧輝とはキスもしてるし、あたしたち、仲が良いんだぜ!」

 

「キス!?」

 

摩耶の言葉を耳にした鳥海が驚きながら叫んで目を丸くした。鳥海は、目を見開きながら、摩耶と碧輝を交互に見つめている。

 

「司令官さん、摩耶とキスしたって本当なんですか?」

 

鳥海が碧輝に顔を近づけながら問い詰めた。

 

「あ、それは、その、違うんだ······。どうやって説明すればいいのか······。摩耶、説明してやってくれよ」

 

碧輝はピンとはねた寝癖に手をやりながら摩耶に視線を送った。摩耶は笑顔で頷いた。

 

「あたしと碧輝は、強く抱き合ってキスをしたんだぜ! 星が綺麗な夜だったなー! 2人きりの湖でさー!」

 

摩耶に説明を求めた碧輝は、期待を裏切られて唖然となった。

 

「ち、違うだろ、摩耶! 誰がロマンティックにキスしたようなことを説明しろ、と言ったかよ! どうして、作戦のため······」

 

「うえーん!」

 

碧輝が摩耶に抗議していると、鳥海が声をあげて泣き出した。

 

「ああ? 碧輝、あたしとキスをしていない、と言い張るのか?」

 

摩耶の表情が険しくなった。摩耶を怒らせるとまた面倒なことになる。

 

「まあ、確かに、摩耶とはキスをしたんだけど······」

 

碧輝がそう答えると、鳥海はさらに大きな声で泣いた。

 

碧輝は、自分の髪を両手でくしゃくしゃにすると、ローテーブルに顔を突っ伏した。

 

なんかもう、めちゃくちゃ······。

 

碧輝はそう思い、途方に暮れたのだった。

 

 

 

(つづく)

 

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