摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。

ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!同時に、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本に“流出”してしまう。

碧輝は、摩耶と共に行動することで、ショッピングモールでの騒動や深海棲艦との交戦に巻き込まれてしまう。

さらに、そこへ鳥海も現代日本に現れたことで、バイトを無断欠勤するはめになる。

そんなとき、摩耶が「碧輝とキスをした」と暴露してしまい、なぜか鳥海は大泣きしてしまったのだった······。




第33話 提督の決意!

日曜日の夜、碧輝は、摩耶と鳥海を連れて近所のファミレス『エフエスエス』で食事をした。

 

摩耶は、昨日、ショッピングモールで購入した蒼い薄手の長袖の服とベージュのショートパンツを身につけている。

 

一方の鳥海は、ノースリーブの制服にミニスカート、といったゲーム世界の艦娘そのままの服装では目立つので、碧輝から借りた蒼いジーンズと白いTシャツを身につけていた。当然、それらは鳥海の身体と比べるとサイズが大きい。

 

摩耶、鳥海の2人の姉妹は、艤装品さえ外していれば、外見的にはどこにでもいる普通の女の子と何ら変わりはなかった。

 

3人はテーブルを囲んで黙々と食事をしている。

 

ファミレスは、ドリンクバーやサラダバーのシステムになっているため、それを良いことに、摩耶と鳥海は何度もドリンクやサラダをテーブルに運んできた。

 

最初は機嫌が悪そうに黙り込んでいた鳥海だったけれど、お腹が満たされると笑顔を見せるようになった。

 

「こっちの世界の食べ物は美味しいですね」

 

数時間ぶりに見せた鳥海の笑顔を見て、碧輝は安堵した。

 

「だろー? ハンバーガーって食い物も美味いんだぜー!」

 

「はんばーがー? 何それ?」

 

摩耶が上機嫌で鳥海にハンバーガーについて説明している。

 

そんな2人を黙って見つめていた碧輝は、突然、力強く頷いた。

 

「よし! 俺は決めたぞ!」

 

突然、右手で拳をつくって力強く頷いた碧輝。そんな碧輝に気づいた2人の会話が止まった。

 

「碧輝、何を決めたんだ?」

 

摩耶が尋ねると、碧輝は2人を交互に見つめた。

 

「俺は、こっちの世界に流出してきた深海棲艦を掃討しようと思う! もし、あいつらを放っておけば、無関係な人たちが犠牲になるかもしれない。だから、こちらから深海棲艦を探し出して撃滅したい! 摩耶、鳥海、俺に力を貸してほしい!」

 

碧輝による突然の決意表明に、摩耶と鳥海は顔を見合わせた。碧輝は、2人から大きな賛同が得られると期待していたが、予想外の言葉が返ってきた。

 

「そんなの、当たり前じゃないか」

 

「私たち艦娘は、戦うために存在しているのですよ」

 

摩耶と鳥海は表情を変えることなく答えた。

 

「じゃあ、2人は俺と一緒に戦ってくれるんだな?」

 

すると、摩耶は不思議そうな表情を浮かべながら首を傾げた。

 

「碧輝、今さら何を言ってるんだ? あたしたち艦娘は、ずっと前からお前と一緒に戦ってきただろ?」

 

「ずっと前って、ゲームの中での話か?」

 

「ゲームかどうかは知らない。だけど、あたしたちの世界では、碧輝という提督の指揮でずっと動いていたんだ。それは、今でも変わらないぜ」

 

摩耶は、そこまで話すと、碧輝にウインクしてみせた。

 

「摩耶の言う通りです。私たち艦娘は、司令官さんの指揮のもと、一致団結して深海棲艦と戦ってきたんです! これからも、どんな世界であっても、私たちは司令官さんと共に戦い続ける運命なのです!」

 

鳥海が真剣な眼差しを碧輝に向けながら言った。

 

摩耶と鳥海の想いを受け取った碧輝は、感動して思わず胸が震えた。

 

「摩耶、鳥海、ありがとう!」

 

碧輝は、向かい合って座っている摩耶と鳥海に頭を下げた。

 

「司令官さんが、こちらの世界に私を呼んだのは、そのためだったのですね!」

 

鳥海の言葉に、碧輝は頷いた。

 

「摩耶が鳥海を必要としていたからね」

 

「それだけの······理由ですか?」

 

鳥海が寂しげに尋ねた。

 

「も、もちろん、俺も必要としていたからだよ。鳥海には優秀な頭脳がある。だから、参謀役になってほしかったんだ」

 

碧輝の返答を耳にした鳥海は、満面の笑みを浮かべた。

 

「わあ、司令官さん、ありがとうございます! 鳥海、嬉しいです!」

 

鳥海が満面の笑みを浮かべている一方で、摩耶は不機嫌そうな表情を浮かべていた。

 

「チッ! 鳥海だけ特別扱いか! まあ、でも、確かに鳥海は頭が良いからなー。それはあたしも認めるけどさー······」

 

摩耶はテーブルに頬杖をつけて碧輝から視線を逸らしながら言った。

 

「摩耶には、俺の直属護衛艦として、いつも傍にいてほしい」

 

碧輝が真顔で摩耶にそう伝えた。摩耶は、一瞬、驚いたような表情を浮かべたあと、ニヤけた笑みを浮かべながら目を伏せた。

 

「まあ、碧輝がそこまで言うんなら、この摩耶さまが直属護衛艦としていつも傍にいてあげてもいいぞ······」

 

「ああ、摩耶、よろしく頼む!」

 

「おう! 重巡摩耶さまの力、見せてやるぜー!」

 

摩耶が明るく威勢の良い声をあげると同時に、彼女の腕がテーブル上のグラスに当たって倒れた。倒れたグラスからコーラが海のようにテーブルに広がっていく。そんなコーラの海を、鳥海は寂しげな面持ちで見つめていたのだった。

 

 

 

(つづく)

 




基本1日1投稿ですが、本日は18時頃、第34話を投稿する予定です。
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