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(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。
ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!翌日には、鳥海も現れる。同時に、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本に“流出”してしまった。
深海棲艦を現代日本に流出させてしまったことに罪悪感を覚えた碧輝は、彼らを撃滅することを決意したのだった······。
ファミレスから帰宅した碧輝と摩耶、鳥海の3人は、碧輝の部屋に置かれたローテーブルを囲んで作戦会議を始めた。
冷房が適度に効いた室内、ローテーブルの上には3つのコップが置いてあり、そのうちの1つにはストローがささっている。コップの中で氷がひとつ、カランと小さな音をたてた。
「摩耶、どれだけの深海棲艦が、こちらの世界に流出してきたか見当つかないか?」
碧輝が真剣な顔つきで尋ねた。
「んー、真っ暗だったし、あたしも深海棲艦たちの追撃をかわすので必死だったからなー。少なくとも航空母艦は、いたはずだ。艦載機の攻撃を受けたからなー」
摩耶が答えると、鳥海がローテーブルに置かれた手のひらサイズのメモ帳に『空母 1』とボールペンで書き記した。
碧輝は、鳥海が書き記したメモ帳を一瞥すると考え込んだ。
「あたしが、ダム湖で軽巡を2体始末したから少しは減ってるんだろうけど、そもそも、どれだけの深海棲艦が流出してるか分からないからなー」
摩耶は、そう言いながら両手を頭の後ろで組むと、鳥海に発言を促すように顔を向けた。ウーロン茶をストローで飲んでいる鳥海が摩耶の視線に気づく。
「私が、こちらの世界に抜けるとき、深海棲艦の姿はなかったわ」
鳥海が答えると、碧輝は唸った。
「とりあえずさー、またダム湖に行ってみないかー?」
「私もそう思います。司令官さんたちが深海棲艦に遭遇したダム湖を偵察してみたほうが良いと思います」
摩耶が提案すると、鳥海が賛成した。2人の提案を受けた碧輝は、頷いた。
「よし、夜が明けたらダム湖に行こう!」
「夜が明けたら? 碧輝、お前、ダム湖が心霊スポットだから恐いんだろう?」
「そ、そんなわけないだろ。夕食を終えたばかりだから、ちょっとくつろぎたいだけだ」
摩耶がニヤニヤしながら指摘すると、碧輝は反論した。
「摩耶、食後にくつろぐことは悪いことじゃないわ。司令官さんのために30分だけ待ってあげましょう」
鳥海が摩耶を諭した。碧輝は、目を丸くしながら鳥海を見つめた。
「え、30分だけ?」
「嫌ならいいぜ。あたしと鳥海でダム湖に行くからさー。もちろん、摩耶さまの運転でな!」
「摩耶なんかにプリウスを運転させたら、それこそ大破させられるよ!」
「何だと? じゃあ、碧輝、自分で運転しなよー!」
摩耶の言葉に、碧輝は黙り込んだ。
1時間後、碧輝が運転する黒いプリウスはダム湖を目指して夜道を走っていた。助手席には摩耶、後部座席には鳥海が座っている。艦娘の2人は戦闘用の艤装に身を包んでいた。
助手席の摩耶は車外を常に見つめて警戒している。一方の鳥海は、首からぶら下げた小さな水上電探のペンダントを握りしめながら目を閉じていた。
碧輝は、そんな2人の様子を見ながら「さすが、実戦経験のある艦娘だな」と感心せざるを得なかった。
1時間後、黒いプリウスはダム湖の駐車場に到着した。昨夜、摩耶が破壊した自販機は大破したままになっているが、周囲に散乱していた缶は回収されたのか1本も見当たらなかった。
摩耶は、駐車場のアスファルトに足を着けるなり、2連装砲を構えながら周囲を警戒した。同時に、摩耶の両腕に装着されている高角砲が上空に砲口を向ける。
運転席の碧輝は、後部座席の鳥海に顔を向けた。鳥海は、水上電探のペンダントを握りしめながら目を閉じている。
「鳥海、電探に何か反応はある?」
「まだ何も······。湖面に行けば、より遠くを探ることができるはずです」
碧輝と鳥海は黒いプリウスから離れると、昨夜、深海棲艦と遭遇した湖岸の遊歩道へ向かった。摩耶もそれに続く。
碧輝は歩きながら摩耶に顔を向けた。
「どうして摩耶は対空電探を持ってきていないんだ? 確か、改二になったときから、ずっと装備していたよな?」
「ああ? お前があたしを解体する前に対空電探を外したからだろ」
「あ、そっか、そっか。それは、ごめん」
「ったく、何だよ」
「2人とも静かに!」
突然、碧輝と摩耶の会話に鳥海が割って入った。
「水上電探によると、湖面に動きがあります。私たちに向かって急速に接近中!」
鳥海が小声ながらも語気を強めて報告した。碧輝は、墨のような湖面を見つめた。しかし、暗闇で何も見えない。
「こんな深夜にボートを漕いでいる人なんていないはず。まさか、幽霊?」
「碧輝、幽霊なんかじゃない。あれは深海棲艦だ。2体、こちらに向かってくる!」
艦娘は、ある程度の闇を見通せるらしい。摩耶は、こちらに接近してくる深海棲艦を注視した。鳥海も摩耶が注視している方向に顔を向ける。
「1時の方向に敵艦を確認!駆逐イ級2隻!」
鳥海が叫ぶと、碧輝の全身に緊張が走った。
「鳥海は、ここで待ってな。あんな雑魚、この摩耶さまが蹴散らしてくれる!」
摩耶が鳥海に向かって自信に満ちた笑みを浮かべた。鳥海は、黙って頷いた。
湖面への階段を駆け下りた摩耶は、大きく飛び跳ねると、闇夜の湖面に着水した。着水するとすぐに2連装砲を構えながら闇の中に消えていく。
碧輝には、摩耶の姿が見えなかった。しかし、鳥海は、湖面を走る摩耶の姿を目で追い続けるのだった。
(つづく)
次回、35話の投稿は 2月20日 6:00 の予定です。