【挿絵表示】
(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。
ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!翌日には、鳥海も現れる。同時に、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本に“流出”してしまった。
碧輝、摩耶、鳥海の3人は、偵察のため、深海棲艦が現れたダム湖へ再び向かう。
ダム湖に現れた駆逐イ級2隻を摩耶が撃沈、拿捕した。碧輝は、拿捕した駆逐イ級に尋問を行うが、新たな深海棲艦から奇襲を受けて駆逐イ級は殺されてしまう。それに怒った摩耶が深海棲艦に突撃をかけると、それを見た碧輝はおとりになるのだった······。
深海棲艦が潜む森に向かって2連装砲を発射しながら突撃する摩耶。ガードレールの先に広がる森から砲火が見えるたびに、摩耶の至近距離に砲弾が着弾する。しかし、摩耶は怯まずに突撃していく。
「深海棲艦! 俺が提督だ! 狙うなら俺を狙え!」
同じく、深海棲艦が潜む森へ向かって駆け出した碧輝が叫んだ。すると、摩耶への砲撃が止んだ。
ドンッ、ドンッ!
深海棲艦が潜む森から砲撃が再開された。しかし、標的は摩耶ではなく碧輝に変わっていた。碧輝は摩耶に顔を向けると、深海棲艦が潜む森に向かって指を差した。
「わ、分かった! 碧輝、絶対に当たるんじゃねーぞ!」
摩耶は碧輝に向かって叫ぶと立ち止まった。そして、深海棲艦が潜む森に2連装砲と高角砲の照準を定めた。
「探照灯があれば、森の中がもっとよく見えるのに······」
呟きながら森に意識を集中する摩耶。そのとき、碧輝の悲鳴が摩耶の耳に届いた。摩耶が驚いて碧輝の方へ顔を向けた。碧輝は左肩に手をあてながら路面に倒れている。摩耶が、慌てて碧輝のもとへ駆け寄ろうとしたときだった。
「俺に構うな!」
碧輝が摩耶に向かって叫んだ。
「くっそー! よくも、碧輝を!」
摩耶は再び、深海棲艦が潜む森に狙いを定めると、2連装砲と高角砲で速射を始めた。さらに、そのまま森に向かって突撃していく。
摩耶からの激しい砲撃によって、深海棲艦が潜む森は樹木が引き裂かれて飛び散った。やがて、摩耶の弾薬が尽きて、ダム湖周辺は静かになった。森に潜んでいた深海棲艦からも砲撃はない。
「や、やったか?」
摩耶は樹木が粉砕されている辺りを凝視した。
「電探からの反応がなくなったわ······」
鳥海の声が聞こえてきた。摩耶は鳥海のもとへ駆け寄った。
「鳥海! 大丈夫か?」
「私は大丈夫。それより、司令官さんを······」
鳥海はアスファルトの路面に横たわったまま答えると、碧輝が倒れている場所に顔を向けた。すぐに、摩耶が碧輝に向かって駆け出した。
「碧輝! 大丈夫か?」
「何とかな······」
そう答えた碧輝だったが、紺色のTシャツの左肩部分が焦げて破れていた。
「ば、馬鹿野郎! お前がやられたら、あたしたち艦娘の存在意義がなくなるだろ!」
突然、摩耶が碧輝に怒鳴りつけた。碧輝は驚いて摩耶を見つめた。しかし、すぐに碧輝は摩耶に向かって優しく微笑んだ。
「摩耶、お前が無事で良かった」
摩耶は、一瞬、目を見開いたあと、くるりと碧輝に背中を向けた。
「ふん! カッコつけやがって! 今度またおとりになったりしたら、本当にぶっ殺してやるからな!」
摩耶はそう叫ぶと、深海棲艦の残骸を確認すべく、砲撃で黒焦げになった森へ向かった。
そんな摩耶が指先で涙を拭っているのを、鳥海は複雑な表情で見つめていたのだった。
深海棲艦が潜んでいた森から、2体の残骸が見つかった。その2体の残骸は、軽巡ヘ級と軽巡ホ級だった。しばらくすると、2体の深海棲艦の残骸は消え去った。
碧輝は左肩に直撃弾を受けたが、軽巡クラスからの砲撃だったことが幸いして、火傷と打撲だけで済んだ。
摩耶は、かすり傷程度で済んだけれど、鳥海は他の2人と比べたら被害が大きかった。
こめかみあたりに直撃弾を受けた鳥海の眼鏡は割れて吹き飛ばされており、さらに、脳震盪(のうしんとう)を起こしていた。幸いにも、こめかみあたりの軽い火傷で済んだものの、めまいが酷く、誰かに支えられていないと独りで歩けない状態だった。
鳥海は、碧輝と摩耶に支えられながら駐車場の黒いプリウスへ戻った。
「今夜は撤退しよう」
「そうだな。あたしも弾薬が尽きたし、鳥海もしばらく立てそうにないし」
運転席に座っている碧輝が撤退を決めると、摩耶も同意した。後部座席の鳥海は横たわった状態で頷いた。
碧輝は、クルマを発進させると、ダム湖の駐車場を後にした。
「碧輝、左肩の傷、痛むだろ?」
碧輝が運転をしていると、助手席の摩耶が碧輝の左肩を見つめながら声をかけた。
「これくらいの傷、1週間もあればすぐ治るよ。それより、この世界には艦娘用に入渠できる場所がない。どうしたら傷を癒せるんだ?」
「どうなんだろなー。とりあえず風呂にでも入っておけば良いんじゃないか?」
摩耶は、正面を向きながら軽い口調で答えた。
「とにかく、鳥海が回復するまではダム湖に近づくのはよそう」
「そうだな。思っていたより、あのダム湖には深海棲艦がたくさん巣食っているみたいだからな」
碧輝が呟くと、摩耶は同意した。
クルマが赤信号の交差点で停車したとき、碧輝は後部座席で横たわる鳥海の様子をうかがった。鳥海は眠っていた。
(つづく)