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(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。
ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!翌日には、鳥海も現れる。同時に、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本に“流出”してしまった。
碧輝、摩耶、鳥海の3人は、深海棲艦が現れたダム湖を偵察する。そのとき、軽巡級の深海棲艦の奇襲攻撃を受けて交戦した。その戦いで怪我を負った3人は撤退したのだった······。
湖畔の森での砲撃戦で傷を負った碧輝、摩耶、鳥海は、碧輝の部屋に戻ってきた。
令和の日本には艦娘を入渠させる場所がない。そのため、摩耶の提案で、とりあえず鳥海を碧輝の部屋のユニットバスに入れてみよう、ということになった。
摩耶は、ユニットバスの浴槽にお湯をためると、鳥海を全裸にして入浴させた。
鳥海が入浴している間に、摩耶は碧輝の火傷の応急処置を施した。
「冷たっ! 摩耶! いきなり火傷に氷を押しつけるなよ!」
「火傷は冷やすほうが良いんだぜー!」
上半身裸の碧輝の傍らで、摩耶は碧輝の左肩の火傷に軟膏を塗ったり、包帯を巻いたり、と不器用ながらも応急処置を終えた。
「あたしは、こういうこと苦手なんだよなー」
「でも、摩耶。包帯の巻き方が上手いじゃないかよ」
碧輝が摩耶を褒めた。すると、摩耶は照れ笑いを浮かべた。
「まあな。やればできるってのが、摩耶さまの良いところだからな!」
摩耶は得意げな顔で明るい声をあげた。
「ところで、碧輝。相談があるんだ」
突然、摩耶が真顔になった。摩耶は、碧輝の正面にあぐらをかいて座ると、碧輝の目をじっと見つめた。
「なんだよ、相談って」
「あたしたち艦娘は、艤装品のブーツのおかげで水上を滑るように移動できるんだ」
「ああ、そうだよな。それは分かってるよ」
「だけど、陸上となると、水上みたいに滑るような動きができないんだ」
「なるほどな」
「だから、ダム湖の道路で深海棲艦と戦ったときは、動きづらくて仕方なかった」
「だろな」
「それで、あたしたち艦娘が陸上でも滑るように動けるブーツが欲しいんだ」
摩耶の要望を聞いた碧輝は、納得した。
本来、艦娘は艤装品である専用のブーツを履けば水上を滑るように移動できる。しかし、陸上となると、ただの重いブーツになってしまい、動きが鈍重になる。確かに、これでは戦いにくい。
「確かに、摩耶の言う通りだ。陸上でも滑るように動けるブーツがないか、インターネットで調べてみよう」
「いんたーねっと?」
「ちょっとした情報網みたいなものさ」
碧輝は、そう答えると、ローテーブルに置かれたノートパソコンを開いた。そして、インターネットで検索を始めた。
「ランニングシューズではないな。ミリタリーブーツも、ちょっと違う」
碧輝はノートパソコンの画面を見つめながら、摩耶が求める条件を満たすブーツを探し続けた。
「あ! これなんか良くないか?」
一緒にノートパソコンの画面を見ていた摩耶が声をあげた。摩耶が指さす画面上のブーツに碧輝は視線を向けた。
「なるほど! ローラースケートか!」
碧輝は納得した。ローラースケートなら路面でも滑るように移動できる。しかし、草原や凸凹の斜面では、ローラースケートでは満足に動けない。それに、水上では役に立たない。
ローラースケートの欠点に気づいた碧輝は、その短所について、摩耶に説明した。碧輝の説明を理解した摩耶は、残念そうな表情を浮かべた。
「水上を滑走できるブーツを履いたまま、陸上でもブーツを履き替えることなく滑走できるブーツ······」
碧輝はブツブツと声に出しながら考えた。
「じゃあ、水上を滑走できる艤装品のブーツに、ローラースケートの車輪を出し入れできるブーツならどうだ?」
摩耶が提案すると、碧輝は、なるほど、と感心しながら彼女に笑顔を向けた。
「それ、良いじゃないか!」
「じゃあ、碧輝。その水陸両用ブーツを買ってくれよ」
「それはさすがに売ってない、というか、この世界に存在してないな、たぶん」
「売ってないのなら、あたしと鳥海のブーツを水陸両用仕様に改造してくれよ」
「ごめん、俺に、そんな特技は無いんだ」
「んだよ、期待して損したぜ」
碧輝は、改造が得意な知人がいないか、頭の中で探してみた。しかし、すぐに止めた。
艦娘や深海棲艦が令和の日本にいることを極秘にしないといけないからだ。
結局、この選択肢は諦めざるを得なかった。
「ちょっと、鳥海の様子を見てくる」
摩耶が、鳥海が入浴しているユニットバスへ向かった。
碧輝はノートパソコンを見つめながら思考を巡らせる。
艦娘の艤装品を開発、改造するには、どうしたら? でも、そんな異世界のパーツを改造できるような人物なんていない。それに、艦娘の存在は誰にも話せない。深海棲艦との戦いは、あくまでも『秘密作戦』なのだから。じゃあ、新たに艦娘を呼び出すか? 呼び出すとしたら、ゲームの中で解体するとしたら、誰がいい?
そこまで考えた碧輝は、ある艦娘の存在を思い出して、思わず満足気な笑みを浮かべた。
「そう、いるじゃないか! 技術屋気質の艦娘が!」
碧輝は、ひとり、大きく頷くと、ゲーム『艦隊これくしょん』にアクセスしたのだった。
(つづく)