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(あらすじ)
ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。
ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!翌日には、鳥海も現れる。同時に、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本に“流出”してきた。
碧輝、摩耶、鳥海の3人は、深海棲艦が現れた深夜のダム湖を偵察。そこで、3人は数体の深海棲艦と遭遇、交戦した。
ケガを負いながらも無事に帰宅した3人。帰宅後、摩耶は、艤装品のブーツを陸上でも動きやすいように改造してほしい、と要望する。
摩耶からの要望を受けた碧輝は、さっそくゲーム『艦隊これくしょん』にログインして、改造能力がある艦娘を探し始めるのだった······。
碧輝は、ノートパソコンからゲーム『艦隊これくしょん』にログインした。さっそく、艦娘のリストをスクロールしていく。
碧輝が動かす画面上のカーソルが、ある艦娘の名前で止まった。その名前は『明石』だった。
しかし、すぐにまたカーソルを動かすと、今度は『夕張』の名前で止めた。碧輝は、考えた。
明石と夕張のどちらかを呼ぶとしたら、どっちが良いかな? 兵器の修理や改造だけなら間違いなく明石だけど、戦力としては物足りない。
一方の夕張は、明石ほど修理や改造はできないけれど、新型兵器の開発や技術試験においては明石以上だ。それに、なんといっても、夕張は新型兵装や自分の体格を上回る兵器でも使いこなせる。そういう意味では、夕張は戦力としても頼りになる存在だ。
明石は工作艦でレア艦。貴重な明石を解体して、こちらの世界に呼ぶのは気が引ける。それに、解体すれば必ずこちらの世界に来てくれる、という保証はない。
碧輝がノートパソコンの画面を見つめながら考え込んでいると、ユニットバスから摩耶と鳥海が出てきた。
鳥海は頭と身体に白いバスタオルを巻いている。ダム湖畔での戦いで眼鏡を失っているため、裸眼のままだ。そんな鳥海を、摩耶が支えている。
碧輝は、湯あがりで頬を赤らめている鳥海に顔を向けた。
「鳥海、気分は、どう?」
「はい、司令官さん。幾らか身体が軽くなった気がします」
鳥海は頬を赤らめて微笑みながら答えた。碧輝は微笑みながら頷くと、鳥海に自分のルームウェアを手渡した。
「俺のサイズだから鳥海には大きいかもしれないけど、とりあえず、今夜はそれを着てほしい」
「ありがとうございます、司令官さん」
鳥海はルームウェアを受け取ると、摩耶に支えられながら、再びユニットバスへ入っていった。
碧輝は、再び考え込む。
いっそのこと、明石と夕張を解体するか! そうすれば、どちらかは、令和日本へのトンネルを見つけて出てきてくれるだろう。
だけど、仮に明石と夕張の2人が令和日本に現れたら、この狭いワンルームで5人で過ごすことになる。
さらに、艦娘4人を養うとなれば、食費も高くなるに違いない。それでは、すぐに俺の貯金がなくなってしまう。
深海棲艦討伐には、お金がかかる。艦娘たちの傷を癒す医療施設、武器の修理施設、弾薬や艤装品などの物資の補充や備蓄するための倉庫も必要······。
そこまで考えた碧輝は、あまりにも大きな金銭的、物理的な負担を感じて気が遠くなりかけた。
「俺ひとりでは、鎮守府さえ設置できないよ」
碧輝は、そう呟くと絶望的なため息をついた。
もう、深海棲艦の討伐なんてやめようかな······。討伐なんて自衛隊に任せて、摩耶と鳥海とで楽しく暮らせばいい。
碧輝は、考えれば考えるほど弱気になっていき、ついにローテーブルに突っ伏してしまった。そこへ、摩耶と鳥海がユニットバスから現れた。鳥海は、碧輝のルームウェアを着ていた。
「ん? どうしたんだ、碧輝。もう寝ちゃったのか?」
摩耶が碧輝に声をかけた。碧輝は、ゆっくりと顔を上げると、摩耶を虚ろな目で見つめた。
「どうしたんだよ、碧輝! お前の目、死んだ魚のようになってるぞ?」
「摩耶、もしも俺が、深海棲艦との戦いをやめる、と言ったらどうする?」
その碧輝の言葉に、摩耶と鳥海は驚いて顔を見合せた。
「どうしたんだよ、急に! もしかして、ビビってしまったのか?」
「司令官さんが急に弱気になるなんて、何かあったのですか?」
摩耶と鳥海が尋ねた。
「違うんだ。今の俺の経済力では、深海棲艦と戦うお前たちへの支援が十分にできない、と気づいたんだ」
碧輝は、そう答えると自分の髪をかきむしった。摩耶と鳥海は、また顔を見合わせた。
そのとき、ノートパソコンの画面に映し出されている『艦隊これくしょん』のゲーム画面に異変が起きた。すぐに摩耶が気づく。
「碧輝、あたしたちの“舞台”から何か贈り物が届いたぜ?」
碧輝は、すぐにノートパソコンの画面を確認した。いつのまにか『艦隊これくしょん』の画面に、『プレゼント箱GET』の表示が出ている。碧輝は首を傾げた。
「何だこれ? 何も任務を達成していないのに、どうしてプレゼント箱が出てきたんだろ?」
「司令官さん、イベントでもないのに、このプレゼント箱は変です。もしかしたら、何かのメッセージではないでしょうか?」
碧輝の疑問に鳥海が答えた。碧輝は頷くと、プレゼント箱を開けてみた。
すると、プレゼントの中には手紙が入っており、そこには短い文章が記されていた。碧輝たちは、短い文章を読んだ。
『提督。明日の正午、艦首島の廃工場でお待ちしています』
画面に表示されている短い文章を読んだ碧輝は、怪訝そうな表情を浮かべた。
「なんだこれ? 何かのイベントでも始まったのかな?」
碧輝は、念のため、任務一覧に目を通してみた。しかし、イベント発生時に見られる期間限定任務は、どこにも存在していない。
「なあ、碧輝。艦首島って本当にある島なのか?」
摩耶が碧輝に尋ねた。碧輝は頷いた。
「この街を流れる川に大きな中洲があって、艦首島と呼ばれているんだ」
「その艦首島には、本当に廃工場があるのですか?」
今度は、鳥海が碧輝に尋ねた。
「うん。大きな廃工場がたくさんあるけど······そこは、誰も入りたがらない心霊スポットなんだ。そんな場所で待っている、だなんて、もしかしたら深海棲艦の罠かな?」
碧輝がそう答えた直後、新たなプレゼント箱がゲーム画面に表示された。すぐにクリックして開けてみる。すると、また短い文章が記された手紙が入っていた。
『艦首島にお越しになる際は、必ず摩耶と鳥海を同行させるようお願い致します。管理人・李紅陽』
手紙を読み終えた碧輝は絶句した。手紙には、令和日本に現れている2人の艦娘の名前と管理人らしき名前が記載されていたからだ。
「摩耶、鳥海。管理人の李紅陽って知ってるか?」
「李紅陽か。名前だけは知ってるけど、会ったことはないなー」
「私も、名前は知っています。たぶん、私たちの世界の艦娘は誰も会ったことがないと思います」
碧輝からの質問に、摩耶と鳥海が答えた。碧輝は、何度も手紙を読み返してみる。
「司令官さん、これは罠ではありません。なぜなら、深海棲艦が手紙を出すなんて、私たち艦娘にもできないことをできるはずがないからです」
鳥海からの助言を受けた碧輝は、小さく頷いた。
「そうだな。よし、明日、艦首島へ行ってみることにしよう」
碧輝は、決断した。
(つづく)