摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。

ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!翌日には、鳥海も現れる。同時に、摩耶を追ってきた深海棲艦も、ゲーム世界から現代日本に“流出”してきた。

碧輝、摩耶、鳥海の3人は、深夜のダム湖を偵察。そこで、3人は数体の深海棲艦と遭遇、交戦する。

その後、帰宅した碧輝は『艦これ』にログイン。すると、ゲームを通して手紙が届いた。碧輝たちは、手紙によって指定された場所である艦首島の廃工場群へ向かうと、李紅陽と名乗る老婆が現れたのだった······。



第40話 謎の老婆・李紅陽

「司令官、この艦首島の廃工場を自由に使ってください!」

 

李紅陽は、明るい声をあげた。突然の李紅陽からの意外な言葉に、碧輝だけでなく、摩耶と鳥海も唖然とした。

 

「李さん、意味が分からないんですけど······」

 

碧輝が廃工場群を呆然と見つめながら答えた。

 

「ここの廃工場群には、深海棲艦との戦いに必要な施設や装備、物資がそろっているんです!」

 

「え! まさか!」

 

「お! やったな!」

 

「嬉しいですね!」

 

李紅陽の言葉に碧輝は驚いたが、摩耶と鳥海は素直に喜んだ。

 

「李さん、この廃工場群で『艦これ』と同じように、入渠したり補給したり開発や建造ができるんですか?」

 

「そうなのです! ただ、建造はできないですねぇ。新たな艦娘は、ゲームの世界から召喚するしかないのです」

 

碧輝は、李紅陽からの返答を耳にしながら、嬉しく思いながらも半信半疑だった。

 

「司令官は、まだ私を信じていないみたいなので、鎮守府をお見せしますね!」

 

 

李紅陽は笑みを浮かべながらそう言うと、地面に横たわったキックボードから赤いポーチを拾いあげた。そして、赤いポーチから鍵を何本か取り出すと、ゲートにぶら下がるいくつもの南京錠を解錠した。

 

「司令官、そして、摩耶さん、鳥海さんも一緒に中へ」

 

李紅陽に促された3人は、ゲートから廃工場群の敷地に足を踏み入れた。李紅陽は、ゲートを施錠すると、3人の先頭に立って案内を始めた。

 

廃工場群の敷地内は、最恐の心霊スポットと噂されているわりには整然としており、稼働中の工場と何ら変わりない印象を受けた。

 

しばらく歩くと、廃工場群の中でも、ひと際大きな建物までやって来た。それは、まさに現代のオフィスビルといった感じで、3階建てになっている。

 

「この建物が司令部になります。ここには、提督執務室や作戦会議室、通信室、食堂、キッチン、リビングなどがあります」

 

李紅陽の説明を聞きながら、碧輝、摩耶、鳥海は3階建て司令部を見上げた。

 

「では、次に行きますね!」

 

再び、李紅陽が歩き始めると、3人もそのあとに付き従った。すると、李紅陽は1分も歩かないうちに足を止めた。

 

「この施設が工廠になりますね! ここで入渠や兵器の修理、改造、開発などが行えます」

 

碧輝は、李紅陽が指し示した工廠を見上げた。司令部ほどの高さはないが、サッカーコートほどの広さがありそうだった。

 

「やったな、鳥海! ここで入渠して傷を癒せるぜ?」

 

「そうね! 助かるわ!」

 

摩耶と鳥海が顔を見合わせながら喜びの声をあげた。しかし、碧輝はまだ半信半疑だった。

 

「では、次に行きますね!」

 

李紅陽は、さらに3人を案内していく。数分ほど歩くと、李紅陽は足を止めた。

 

「これが艦娘のための宿舎です」

 

李紅陽が宿舎だと説明した建物は、3階建てのビジネスホテルのような洗練された外観になっている。

 

「普通に、ビジネスホテルじゃないか······」

 

宿舎を見渡した碧輝は半笑いした。

 

「そうです! 全室が冷暖房、ユニットバス、トイレ、冷蔵庫完備の個室になっています! ただし······」

 

「ただし?」

 

碧輝は、李紅陽に顔を向けた。

 

「16部屋しかありません!」

 

李紅陽は、なぜか、明るく大きな声で強調した。

 

「なぜ16部屋? 艦娘は16人までしか滞在できないの?」

 

「そうです! 艦娘は最大16人までなのです!」

 

李紅陽の返答に、碧輝は首を傾げた。

 

「李さん、なぜ最大16人なの? 深海棲艦と戦うなら、たくさんの艦娘がいるほうが良いと思うけど······」

 

すると、碧輝の質問に対して、李紅陽は急に真顔になった。

 

「令和日本における深海棲艦との戦いは、あくまでも極秘作戦なのです! そのため、艦娘が令和日本に現れすぎると良くないのです!」

 

「そ、そうなんですね······」

 

李紅陽の突然の気迫に、たじろぐ碧輝。そこへ、鳥海が近づいてきた。

 

「ご支援に感謝致します。でも、どうして急に、このようなご支援を?」

 

鳥海が李紅陽に尋ねた。すると、李紅陽はニコリと笑顔を見せた。

 

「それは、言えないのです!」

 

今度は、摩耶が李紅陽に近づいてきた。

 

「というかさ、李紅陽さんは何者なんだ?」

 

「それも、言えないのです!」

 

「あたしが思うに、李紅陽さんは雪風だろ?」

 

「はい、雪風です!」

 

摩耶と李紅陽の会話を黙って聞いていた碧輝は、驚いて李紅陽の姿をまじまじと見つめた。

 

「え! 雪風なの? なんで、お婆さんになってるの?」

 

「それは、言えないのです! ただ、今の私の名前は李紅陽なのです!」

 

李紅陽の言葉に、碧輝は、意味が分からない、とばかりに唸った。

 

「そのようなわけで、令和日本における深海棲艦との戦いを、私、丹陽······じゃなかった、李紅陽が全力で艦隊をお守りします!」

 

「雪風だとか丹陽だとか、登場早々に身バレしてんじゃないかよ」

 

李紅陽の支援表明を耳にした碧輝が呟きながらクスリと笑った。しかし、すぐに真顔に戻ると、李紅陽を真っ直ぐに見据えた。

 

「李紅陽さん」

 

「何でしょう? 司令官」

 

「今後も、ゲームの世界から令和日本に艦娘を召喚するには、やっぱり解体しかないのかな?」

 

「はい、そうですね! すでに艦娘全員には通達してあります。もし、司令官からお呼び出しがあったら素直に解体指示を受けて、井戸に飛び込んでください、と!」

 

「い、井戸?」

 

「はい、解体された艦娘が令和日本に移動するための出口を改造したのです!」

 

「もし艦娘が井戸に飛び込んだら、令和日本のどこに現われるの?」

 

碧輝の質問を受けた李紅陽は、皺の入った顔でニコリとした。

 

「それはもちろん、この艦首島の鎮守府です! 井戸の出口は、司令部の建物の中にあるのです!」

 

「そいつは、すげえや! 碧輝の狭い部屋なんかに現れたら、艦娘たちが可哀想だからな」

 

李紅陽の話を聞いていた摩耶が、そう言いながら笑った。

 

李紅陽からの説明に対して、大いに感心した碧輝は、周辺の廃工場群を笑みを浮かべながら見渡した。

 

艦首島の廃工場群が取り壊されなかったのも、艦首島が心霊スポットだという噂が流れたのも、すべてこの鎮守府を隠すためだったんだな。

 

納得した碧輝は、何度も頷いたのだった。

 

 

 

(つづく)

 




次回で······。
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