摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。

ある日、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた。さらに、鳥海まで現代日本に現れる。その一方で、深海棲艦の勢力も現代日本に“流出”していたのだった。

そんな中、突然、李紅陽という謎の老婆が現れる。

李紅陽は、碧輝たちを、立入禁止になっている艦首島の廃工場群に案内する。すると、そこには司令部や工廠、宿舎など“鎮守府”の機能を有した施設がそろっていたのだった。

そんな新しい鎮守府において、碧輝は提督として準備を始めたのだった。

現代日本に巣食う深海棲艦を滅ぼすために······。



【第2章】第42話 新しい鎮守府は資源不足?

艦首島に新しい鎮守府が設置されてから1ヶ月が過ぎた······。

 

 

艦首島の広大な廃工場群のなかで、ひと際、真新しい3階建ての司令部。外観は、まるでオフィスビルそのものだ。その1階には、提督の執務室があった。

 

「なあ、碧輝。いつになったら出撃するんだよ?」

 

執務室の両袖机に座る提督・近衛碧輝(このえ·あおき)に向かって、摩耶が訊ねた。

 

碧輝は、ノートパソコンから顔を上げると、訝しげに摩耶を見つめた。

 

「準備が整い次第って言ってるだろ? 何度もそう言ってるじゃないか」

 

「それは分かってるさ。だけど、あたしや鳥海以外にも、新たに召喚した艦娘が何人かいるじゃないか。そろそろ、良いんじゃないか?」

 

「まだ十分じゃない」

 

碧輝は事務的な口調で答えると、再びノートパソコンに視線を戻した。すると、碧輝の正面に立っている摩耶が机に両手を置いて身を乗り出した。

 

「艦娘が16人そろうまで待つというのか? 最低6人いれば攻勢をかけることはできなくても、威力偵察くらいならできるだろう?」

 

「その最低6人が、まだそろっていないじゃないかよ」

 

碧輝はノートパソコンで作業しながら答えた。

 

「碧輝、何を言ってるんだ? 威力偵察できる艦娘なら、すでに6人そろってるじゃないか?」

 

碧輝はノートパソコンから摩耶の顔に視線を移した。

 

「摩耶と鳥海以外に、誰だよ?」

 

「あたしと鳥海だろ。他には夕張、陽炎、朧、祥鳳で十分戦えるじゃないか!」

 

「夕張は無理だな」

 

「無理? 夕張は軽巡クラスだから戦力になるじゃないか!」

 

「夕張には、明石と一緒に、艦娘たちの兵装の製造をお願いしてるんだ。だから、しばらくは出撃できない」

 

碧輝の返答を受けた摩耶は、碧輝を見つめたまま黙り込んだ。しかし、すぐに口を開く。

 

「じゃあ、5人で出撃を······」

 

「摩耶、出撃メンバーは最低6人だと、俺と参謀の鳥海と摩耶の3人で決めただろ? もう、その方針を忘れたのか?」

 

碧輝は、摩耶の言葉を遮るように言った。

 

「い、いや、忘れちゃいないけどさ。じゃあ、夕張の代わりに誰を艦隊に入れるのさ? 伊良湖か?」

 

「伊良湖? 冗談言うなよ。伊良湖は李紅陽が特別に派遣してくれた給糧艦だぞ。食堂で艦娘たちのために調理するのが仕事なんだよ」

 

「冗談だよ。じゃあ、あと1人は誰を召喚するんだ?」

 

摩耶の質問を受けた碧輝は、ニヤリとした。

 

「資源不足だから、しばらくは召喚しない。だから、俺が出撃する」

 

「はあ? 碧輝が出撃って······お前、提督だろ?」

 

「仕方ないだろ。李紅陽から届く補給物資を積んだ潜水艦は月1度しか来ないし、鎮守府もスタートしたばかりで物資や資金が豊富じゃない。だから、今はたくさんの艦娘を養っていく余裕がないんだよ」

 

「だからと言って、提督のお前が出撃して、もし何かあったら······」

 

碧輝は椅子から立ち上がると、微笑みながら摩耶を見つめた。

 

「そのために、摩耶を俺の特別護衛艦に任命したんだろ?」

 

「ま、まあ。碧輝は、あたしが守ってやるけどさ。ただ······」

 

「ただ?」

 

「碧輝の兵装は、あのベレッタとかいう拳銃のエアガンだけだろ? あんな貧弱な武器じゃ、戦力にならないじゃないか」

 

すると、碧輝は愉快そうに笑った。

 

「なんだ、そんなことか」

 

「そんなことか、じゃないだろ。兵装は戦闘に最も重要なんだぞ!」

 

「分かってるよ。本物の戦闘にエアガンで立ち向かうはずがないだろ。ちゃんと、俺専用の武器を夕張に開発させているんだよ」

 

「そ、そうなのか! じゃあ、その武器が完成したら出撃できるんだな?」

 

「まあ、そんなところだな」

 

そのとき、執務室の木製ドアから軽いノック音が2度響いたあと、鳥海が入ってきた。鳥海は碧輝に近づくと、摩耶を一瞥してから、提督に敬礼した。

 

「司令官さん、報告に来ました」

 

「レーダーの件だよね?」

 

「レーダー? あ、電探のことですね! はい、鎮守府の大型電探の調整が終わりました。これで、鎮守府に接近するあらゆるものを感知することができるようになりました!」

 

「そっか! ありがとう、鳥海。これで司令部の屋上にある大型電探も稼働したから、鎮守府の防衛力が上がったな」

 

碧輝が満足したように鳥海に微笑むと、彼女も笑顔で頷いた。そこへ摩耶が割り込む。

 

「少ない資源と資金を、いきなり大型電探の製造に使うなんて意味があるのか?」

 

摩耶の質問に碧輝が答えようとすると、鳥海が手のひらを碧輝に向けて、それを制した。

 

「摩耶は防空巡洋艦として対空電探を重宝してるでしょ? それと同じで、鎮守府を守るためには電探が必要なの。私たちが装備する電探よりもはるかに大きな電探が必要なのよ」

 

「んー、まあ、そうだけどさ······」

 

鳥海からの説明に、摩耶はあまり納得できなかった。摩耶には、早く艦娘を多くそろえたい、という考えがあったからだった。

 

「さすが、鳥海。俺が言いたかったことを、しっかりと説明してくれた」

 

「ありがとうございます!」

 

碧輝に褒めらた鳥海の表情からは嬉しさが滲み出ていた。そんな鳥海の表情に気づいた摩耶は、面白くなさそうに2人から顔を逸らしたのだった。

 

 

 

(つづく)

 

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