摩耶さまが行く!   作:皇南輝

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(あらすじ)

ゲーム『艦隊これくしょん』で遊んでいた青年・近衛碧輝(このえ·あおき)。

ある日、突然、碧輝の部屋に艦娘・摩耶が現れた!翌日には、鳥海も現れる。同時に、深海棲艦もゲーム世界から現代日本に“流出”してきた。

そんな中、碧輝たちの前に、謎の老婆・李紅陽が現れる。

李紅陽は、艦首島に隠されていた新しい鎮守府を碧輝に託した。こうして、現代社会に巣食う深海棲艦を討伐するために、碧輝は新たな鎮守府をスタートさせたのだった。



第43話 陽炎のお願い

「よし、昼食前に巡回でもするか!」

 

碧輝は机の上のノートパソコンをパタンと閉じると笑顔を見せた。

 

「司令官さん、私は通信室に戻ります。通信士官に電探の操作方法を教えなければいけませんので」

 

「了解、鳥海。それにしても、李紅陽が派遣してくれたマネキンに電探を扱えるのか?」

 

「大丈夫です。彼らは、ほとんど人間と同じ知能を備えているようですからね」

 

鳥海は、碧輝を安心させるように微笑んだ。

 

 

李紅陽は、碧輝に艦首島の鎮守府を与えるとともに、数十名の人造人間を派遣していた。

 

人造人間たちは人間と同じように働くことができるため、工廠要員や警備スタッフ、潜水艦の乗組員として稼働している。彼らの肌は人間よりも艶があるため、碧輝は彼らを「マネキン」と名付けていた。

 

 

「鎮守府を与えてくれただけでなく、マネキンたちをも派遣してくれた李紅陽には感謝しないとな」

 

碧輝は、鳥海と摩耶を交互に見ながら笑みを浮かべた。

 

「では、司令官さん、私は通信室へ戻ります」

 

鳥海は碧輝に敬礼すると、執務室から出て行った。パタンと扉が閉まると、碧輝は摩耶に顔を向けた。

 

「摩耶、一緒に巡回でもするか!」

 

「ああ、そうだな」

 

摩耶は笑顔で頷いた。

 

そのとき、執務室のドアから軽くノック音が聞こえた。碧輝と摩耶がドアに顔を向ける。すると、ドアが開いて、オレンジ色でツインテールの髪型をした艦娘が現れた。それは、陽炎だった。

 

「陽炎、入りまーす」

 

明るく元気な声を出しながら執務室に入ってきた陽炎は、碧輝を見るなり軽やかに敬礼した。すぐに碧輝も敬礼を返す。

 

「陽炎じゃないか。こちらの世界に少しは慣れたか?」

 

「んー、慣れたんじゃない? それよりさ、司令。お願いがあるんだけど聞いてくれない?」

 

「お願いとは?」

 

碧輝と摩耶が陽炎を見つめる。陽炎は、碧輝に近づきながら摩耶を一瞥した。

 

「あのね、私は陽炎型の1番艦でしょ。司令も知っているとおり、私には妹がたくさんいるの」

 

「うん、それは知ってるよ」

 

「じゃあ、なんで、召喚された陽炎型は私だけなの? もっと妹たちを召喚してほしいのに」

 

陽炎からの質問を受けた碧輝は、思わず摩耶を一瞥した。先ほどの摩耶への説明をもう一度しなくてはならないようだ、と思ったからだった。そんな碧輝の心の内を読めたのか、摩耶が苦笑いした。

 

「碧輝、あたしが代わりに説明してやろうか?」

 

「大丈夫だ、摩耶。俺の口から説明する」

 

陽炎は不思議そうな顔を摩耶に向けたあと、再び碧輝に顔を戻した。

 

「陽炎、俺だってまだまだ艦娘を増やしたいと思ってるんだよ」

 

「そうなの? じゃあ、話が早いわね。今日にでも召喚してちょうだい」

 

「それが、今はまだ無理なんだ」

 

陽炎の表情が曇った。

 

「無理って、どういうこと?」

 

碧輝は返事に困った。

 

多くの艦娘を召喚できないのは、彼女たちを養うための資源や資金、食料に余裕がないからだ。副官である摩耶や鳥海には鎮守府の内情を話しても問題ないが、召喚されたばかりの艦娘たちにそれを知らせるわけにはいかない。余計な不安や心配を与えかねないからだ。召喚されたばかりの艦娘たちが不安を抱くようなことになれば、士気にも影響を与えかねない。そんな理由から、陽炎や新たに召喚した艦娘たちには黙っておきたいのだ。

 

碧輝は、どう説明したら良いのか分からずに黙り込んでしまった。そんな碧輝を見た陽炎は首を傾げた。

 

「ねぇ、司令。どうして黙ってるの?」

 

「えっと、その······」

 

陽炎が碧輝の顔を覗き込むように見つめた。碧輝は陽炎と目が合うと、動揺して両目を左右に泳がせた。

 

「もう、何よ! ハッキリと言いなさいよ!」

 

陽炎の口調が強くなった。そのとき、摩耶が碧輝と陽炎の間に割って入った。

 

「陽炎、それについては、あたしから説明する」

 

「摩耶が? 司令に答えられないことをあなたが説明できるの?」

 

「あたしは、提督の副官だぜ。説明くらいはできるさ」

 

「ふーん。じゃあ、説明してよ」

 

「えっと、そうだな。今は召喚できないことになっているんだ」

 

「召喚できない? 意味が分かんないわ」

 

「要するに、そうだな。陽炎を召喚したあと、召喚できなくなったってわけさ」

 

摩耶からの説明を耳にした陽炎は、怪訝そうな表情をしながら摩耶をじっと見つめた。

 

「ねぇ、摩耶。私が、そんなウソを信じると思ってるの?」

 

「ウソなんかじゃないさ」

 

「じゃあ、なんで、私のあとに祥鳳が召喚されてきたの?」

 

「あ、しまった!」

 

陽炎にウソを見破られた摩耶は、気まずそうな顔をしながら碧輝に顔を向けた。碧輝は摩耶を一瞥すると、やれやれ、と言わんばかりにため息をついた。

 

「もう! 二人して何を隠しているのよ!」

 

陽炎が碧輝と摩耶に鋭い視線を投げる。碧輝と摩耶は困惑した表情で顔を見合わせた。

 

「もう、いいわよ。そんなに話したくないなら無理に訊かないわ」

 

陽炎は、ため息をつくと、執務室から出ようと碧輝たちに背中を向けた。

 

「陽炎、待ってくれ」

 

碧輝が陽炎を引き止めた。陽炎は「何よ」と言いたそうな顔つきで振り返った。

 

「まだ十分な資源が無いんだ」

 

碧輝は少しうつむきながら、ポツリと話した。そこへ、摩耶も口を開く。

 

「そうなんだ。まだ鎮守府が立ち上がったばかりで資源や資金が少ないんだ。だから、艦娘を増やす余裕が無いんだよ」

 

「なーんだ、そんなことなの。じゃあ、仕方ないわね。でも、そんなこと、二人して隠すようなことじゃないのに」

 

碧輝と摩耶は、思わぬ陽炎の反応に少し驚きつつも安堵した。

 

「陽炎、気にしないのか?」

 

「別に、気にしないわ。もしかして、司令は、私がそんなことを気にする、と思って言わなかったの?」

 

碧輝は黙ったまま頷いた。すると、陽炎は明るい声で笑った。

 

「資源が少ないことくらい、何よ。だったら、みんなで節約しながらやっていけばいいじゃない? 私だって、無理言って妹たちを召喚しろ、なんて言わないわ」

 

「そうだな、陽炎の言うとおりだ」

 

陽炎の前向きな言葉に、摩耶も同調した。

 

「ねぇ、司令。私を選んで召喚してくれた以上、この陽炎は、司令についていくわよ!」

 

陽炎は明るい笑顔で碧輝を見つめた。碧輝もまた笑みを浮かべながら何度も頷いたのだった。

 

 

 

(つづく)

 

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