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ゲーム 『艦隊これくしょん』の世界から艦娘・摩耶が、令和の日本で暮らす近衛碧輝(このえあおき)の部屋に現れた!摩耶は装着している連装砲でいきなり砲撃したり、突然、部屋から飛び出したり、と奇怪な行動に碧輝は困惑する。はたして、摩耶は何のために現代日本に現れたのか?
碧輝は、バイトへ行く準備を終えた。摩耶も、自分の身体から連装砲や機銃を取り外すと、無造作に碧輝のベッドに置いた。
「なあ、提督ー! あたしの電探も外した方がいいかー?」
摩耶からの問いかけを受けた碧輝は、彼女の頭に装着されているアンテナのようなカチューシャを見つめた。
「電探は必要ないよ」
碧輝は素っ気なく答えると、摩耶の頭から視線を外した。すぐに、摩耶はカチューシャを外した。
「よーし、準備できたぜ、提督!」
摩耶が明るい声をあげた。碧輝は、ふと思うことがあって摩耶に顔を向けた。
「摩耶、その提督って呼び方はやめてくれないか?」
「えー? だって、お前は提督だろー?」
訝しそうに碧輝を見つめる摩耶。碧輝は口元を少し歪めながら天井を見上げた。
「確かにゲームの中では提督だけどさ。こっちの世界では提督じゃないんだよ」
「じゃあ、なんて呼べばいいんだよ?」
「俺の名前は近衛碧輝だから、近衛さんか、碧輝さんか、呼び方は任せるよ」
「このえあおき? なんか、めんどくせーなー!」
「人の名前を面倒くさそうに言うなよ!」
「オーケー、分かったぜー。じゃあ、碧輝って呼ぶな」
「思いっきり呼び捨てじゃないかよ」
「碧輝だって、あたしのこと、摩耶って呼び捨てにしてるじゃねーかよ!」
摩耶が言っていることは間違いない。碧輝は、こちらをじっと見つめてくる摩耶の顔を見つめた。しかし、すぐに顔を逸らした。
「はいはい。どう呼ぶかは摩耶に任せるよ」
碧輝は、クルリと摩耶に背を向けると、制服が入って膨らんでいるリュックを肩に担いだ。
「それじゃあ、行こうか」
「おう! 行くぜ! 抜錨だ!」
碧輝の背後で威勢の良い声をあげる摩耶。摩耶の言葉を耳にしながら、よく聞いたセリフだな、と碧輝は思った。
マンションの駐車場までやって来た碧輝と摩耶。碧輝は黒いプリウスのドアロックを解除すると、助手席に乗るように、と摩耶を促した。しかし、摩耶は黒いプリウスを見つめたまま動かない。
「摩耶、早く助手席に乗りなよ」
「なんか、おかしな形をした潜水艦だなー」
「これのどこが潜水艦なんだよ。クルマだよ、クルマ!」
「そんなの分かってるよ。ちょっと言ってみただけさ」
摩耶は、そう答えると悪戯っぽい笑みを碧輝に向けた。やれやれ、と碧輝は思いながら黙り込んだ。
摩耶が助手席側に移動したのを確認した碧輝は、ドアを開けて運転席に座り込んだ。その後、摩耶も助手席に座った。シートベルトを装着した碧輝は、助手席に顔を向けた。そのとき、真っ先に摩耶のミニスカートから伸びる健康的な両脚が目に入った。碧輝は思わず、ドキッとしてすぐに視線を摩耶の脚から外した。
「どうしたんだ? 碧輝」
摩耶が不思議そうな表情を浮かべながら碧輝の横顔を見つめた。
「な、なんでもない。摩耶、シートベルトを忘れずにな」
「しーとべると? ああ、この座席についているベルトのことか。これを腰に巻けばいいのか?」
「違うよ。これをこうして、ここに······」
碧輝は、助手席のシートベルトを掴むと摩耶の身体に装着させようとした。そのとき、摩耶が着ているノースリーブの制服から見える彼女の胸の谷間に視線が釘付けになってしまった。
摩耶の胸って近くで見ると大きいんだな······。
「おい、碧輝。どこ見てんだ?」
摩耶が目を細めながら碧輝の顔を見つめた。碧輝は慌てながら摩耶へのシートベルト装着作業を終わらせた。
「よ、よし、抜錨だ!」
碧輝は、そう言いながらエンジンスタートボタンを人差し指で押した。
真正面を見てクルマを発進させる碧輝。そんな碧輝の横顔を見つめながら、摩耶は微かな笑みを浮かべたのだった。
(つづく)