現地に転生しまして。   作:ナハトAB

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第5話

 

部屋に戻ってきた僕は、腕を組んで思考をめぐらせる。

 

(僕は異能を持っている。その前提で仮説を立てると……“魔法を自由自在に使える”、か?)

 

パトリックさんの<軽傷治癒(ライト・ヒーリング)>を見て、自分もその魔法を発動できたのだ。ならば今のところその仮説が有力だ。

 

(自由に使える、のであれば……あのユグドラシルで見た魔法も対象に入るのか。ひとまず試してみないことには分からないな)

 

仮説を立証するためにさらなる段階へと進む。

 

(そもそもここは家だ、攻撃魔法は論外。となると補助系魔法……もまずいか。パトリックさんに勘づかれるかもしれない)

 

……となれば、まずこの魔法だ。

 

「……<魔力隠蔽(マジックハイド)>」

 

色々試す前に、必須ともいえるこの魔法が使えないとなると、諦めるつもりだった。が、この魔法を発動できた時点で、思わず息を呑む。

 

名前通り、魔力を隠蔽する魔法だ。"力ある者の元には、力ある者が集う"――――第九や第十位階魔法なんて魔法を発動させた日には膨大な魔力がただ流れだ。ましてや、法国が近くにあるんだ、魔力を察知されないとは言えない。

 

どうなるかなんて分からないこそこの魔法は必須だ。

 

魔力隠蔽(マジックハイド)>が発動されていることをしっかり確認した後。

 

「<完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)>」

 

第九位階魔法であるそれを発動させてみるが……結果は問題なく発動できた。

 

(……マジか)

 

これで“魔法を自由自在に使える”という異能である説が真実味を帯びてきた。

 

しかし、ここで一つ疑問が浮かぶ。

 

(能力自体は、ユグドラシル時と同じなのか……?)

 

それは自分の職業lvが不明瞭である事。自分は人間種であることは間違いないから種族lvはない。

 

もし、自分のレベルが1lvだったら習得している魔法なんてわずかしかないし、MPの量も少ないはずだ。

 

(ならば、MPについては気を配らせながら……この異能に制限がないか調べるか)

 

職業や種族に応じて、習得できる魔法は異なる。中には特定の職業や種族でしか習得できない魔法も存在する。

 

僕の異能は、その制限を無視できるのかどうか。それを確かめる。

 

(<沙羅双樹の慈悲(マーシー・オブ・ショレア・ロブスタ)>はどうだ? その魔法を取得する職業のほとんどが森祭司(ドルイド)だったはずだ。自分の記憶限りではその職業は取っていない)

 

「<沙羅双樹の慈悲(マーシー・オブ・ショレア・ロブスタ)>」

 

ユグドラシルでのプレイヤーだった自分の、構成された職業では使えないであろう魔法を唱えてみる。

 

(これも発動できる、か。本当にどうなっているんだコレは?)

 

想定では使えないだろうと思っていたが、その反面<沙羅双樹の慈悲(マーシー・オブ・ショレア・ロブスタ)>は発動できた。

 

今こうしてじっとしていても、ほのかに感じる癒しのような感覚。これは<沙羅双樹の慈悲(マーシー・オブ・ショレア・ロブスタ)>の効果の一つである、HPの継続回復。だとするならば、即死への完全耐性・自動蘇生の効果も付与されていると考えていいだろう。

 

次の仮説である、“行使できる魔法に制限がかかるかどうか”……それを立証するために試してみる。

 

「<光輝緑の体(ボディ・オブ・イファルジェントベリル)>……これも問題なく発動、か」

 

試しに一つほかの魔法を唱えてみたが、これも発動できた。こうなってくるといよいよ自分の強さが不明瞭だ。

 

(……そうだ。<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>ならば、発動できた時点で少なくとも自分が95lv以上の魔法詠唱者(マジック・キャスター)であることが分かるはずだ。消費する経験値が痛いが、自分の強さを把握出来ない内は何かと危険だ。背に腹は変えられん)

 

「ふぅ……I wish(我は願う)……」

 

そう唱えると、家の中であるにも関わらず……不意に上から眩しい光が僕に降り注いできた。

 

(この演出……どうやら本当に<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>を発動できたみたいだな)

 

超位魔法。これも発動できるとなってくると。少なくとも自分が95lv以上の魔法詠唱者であることが分か───

 

(……いや、待てよ)

 

これで自分は95lv以上の魔法詠唱者であることを確定するのはまだ早いのではないだろうか、と思い直す。

 

(僕の異能は、少なくとも職業に左右されず魔法を発動できるものだろう。ならば、lv制限がある魔法も無理やり発動させることが出来る……となっていてもおかしくは無い)

 

「……?」

 

とりあえずは、<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>が発動したあと叶えて欲しい内容の選択肢が出るかと思ったが、一向に出る気配がない。

 

(もしかしすると……自由形式?)

 

その可能性に気づくと、とても落ち着いてはいられない気分になっていく。もし自由形式であるならば。消費する経験値によるが、文字通りなんでも願いを叶えることが出来るわけで……

 

(いや、落ち着け……まだそうと決まったわけじゃないだろ)

 

<精神自然作用抑制>のおかげか、高ぶった興奮が急激に収まっていったためどうにか落ち着くことが出来た。

 

(まずは……無難でかつ重要な願いを言ってみるか)

 

「コンソールが開けるようにしてくれ」

 

コンソール。ユグドラシルでは、操作パネルが現れ装備やアイテム、ステータスなどを確認するための根本的なシステムだ。

 

自分の強さや職業lvを手っ取り早く把握するには、コンソールは必須だ。

 

ユグドラシルの記憶を取り戻してから、コンソールを開けないかと何度か試してみたが一向に開く気配がないため、諦めていた。これでコンソールが開けるならいいんだが……

 

──しかし、何か変わったという実感は持てず、<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>の演出は終わらなかった。

 

「……ハァ」

 

思わずため息を吐く。そもそも、コンソールはユグドラシルの運営が仕組んだシステムであって、運営の手が入っていないと思われるこの世界では、可能性が低いとは思っていた。

 

だが、実際に<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>を以ってもコンソールを開けないことを考えるとやはり落ち込む。

 

「……僕の持つ異能の詳細を教えてくれ」

 

コンソールが開けないとなれば、次は僕の異能についてそう口にする。

 

「……」

 

──しかし、この願いも同じく<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>の演出は終わらなかった。

 

(この願いも無理なのか? それともやり方を間違えているのか……いや、<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>は、ユグドラシルの魔法だ。だが、“異能”は少なくともこの世界だけにある能力――ユグドラシルでは存在しないモノは対応できないと考えると、納得はできる)

 

「……僕の強さを確認できるようにしてほしい」

 

ならば、と次に僕の強さについての事を知ることは出来ないかと願う。おまけに語尾を柔らかく。

 

先程よりも具体性がある願いだったのが功を成したのか、<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>の演出が終わった。

 

それと同時に……

 

「……?」

 

ビリッ、と頭に一瞬電流が流れたと思ったら、何かの文章が頭の中に浮かぶ。

 

〔種族レベル: ― 〕

〔職業レベル: ??? ··· 2lv〕

〔取得スキル: <精神自然作用抑制>

        <環境適応促進> 〕

 

それぞれの項目の文章が浮かび上がってきた。どうやら僕の職業lvは2らしい。

 

経験値を消費しての2lvなのかは分からない。再度使う時が来たら、その時に確認してみることにする。

 

――職業レベルが2であるにも関わらず、第十位階魔法や超位魔法を使えるということは“異能”が関係しているとそう確定できる。恐らくMPに関する部分も“異能”によって底上げされているのか……

 

(それはともかく……職業の名称が“???”となっているのは何故なんだ?)

 

ユグドラシルでは、数々ある職業にそれぞれの名称がある。ファイターや、ガーディアンという風に。

 

しかし、僕の職業には何故か“???”となっている。レベルの方はきちんと表示されている分良かったのかもしれないが。

 

(先ほど、“異能”についての願いはかなえてもらえなかった事を考えると……ユグドラシルには存在しない職業だから“???”となっている可能性があるか)

 

こればかりは、自分という存在が不思議でしょうがなかった。考えれば考えるほど自分というものが分からなくなっていくような気も薄々してくる。

 

この疑問に関してはあれこれ考えても仕方がないことにして、一旦この疑問は置いておく。

 

(<精神自然作用抑制>は分かるとして……<環境適応促進>は一体何なんだ?)

 

環境適応促進……そもそも、生物は気が遠くなるほどの年数を重ねて環境に適応した結果今の生物がある、というざっくりした知識は持っているがそういうことなのだろうか。

 

……スキルの詳細を見ることはできないため、これに関する考察は一旦やめることにして。ひとまずは取得しているスキルと職業lvを確認できるようになったため、<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>を発動させたがいはあった。

 

強さを確認するよう意識すると、何度でも浮かび上がるような仕組みなため、いちいち<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>で確認する必要はないと知り安堵したものだ。

 

――――両親が戻ってくるまでの間、あれこれ考察を深めていくことにしたのだった。

 

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