現地に転生しまして。   作:ナハトAB

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今日は第5話、第6話と二話続けて投稿していますので、ご注意ください。


第6話

 

まだ他にも叶えてほしいモノはあったが――――経験値を消費する仕組みの上<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>を乱用する訳にも行かず。

 

ならば、後はもう戦いを通して徐々に自分の強さを把握していくしか現状取れる方法はない。

 

――ちなみに、自分のMPはどれぐらいあるかという問題に対する解は何かというと……()()()()()()()

 

MPがどれぐらいの量あるのかを確かめるために、第十位階魔法を唱え続けながら回数を数えていた。

 

第十位階魔法は、数字が"十"であるため、消費するMPは"十"となる。第一位階魔法だと"一"なため消費するMPも"一"となる。つまり第十位階魔法を一回発動させるだけのMPがあるならば、第一位階魔法を十回発動できるという事だ。

 

それを踏まえて、回数を数えていたが……()()()()()()魔力切れに至らなかったのだ。

 

第十位階魔法を千回発動、となるとMPは一万に及ぶという事になる。ユグドラシルであったならば"MPの暴力"だろう。

 

普通に考えたらこれほどのMPを保持している事自体おかしい。だが、これも僕の持つ"異能"であると考えれば納得は出来た。

 

僕の"異能"は、“魔法を自由自在に使える”のではなく"()()()()()()"ものだろうと考えている。

 

該当する魔法を発動するために必要な職業やlvといった"制約"を無くす。

 

魔法を発動するために必要な能力値という"制約"を無くす。

 

魔法を発動するために必要なMPという"制約"を無くす。

 

そう考えると辻褄は合うのだ。現に、僕の覚えている魔法その全てを一通り発動できたのだから。

 

だが、制約をなくすといってもそれは魔法に限る話か、スキルや職業lvにも適用されているかは要検証だ。

 

ともあれ今は職業lvを百に近づけない事には話は始まらない。

 

……だが、取得できる経験値の量が問題だ。実際に、ユグドラシルではレベル百は当たり前でも、それに達するにはそれなりに時間がかかるのだから。

 

現実的な時間内に、レベル百に達する事ができるのか、出来ないのか。

 

少なくとも、第一位階魔法を使えるだけでも戦力があるとされているこの世界基準を考えると、レベル百なんていう域は想定できないほどのそれになる可能性が高い。

 

そう考えると、取得できる経験値に何らかのセーブがかかっておりレベルを上げにくい状態になっていると考えてもおかしくはない。

 

(lvを百まで上げて、ようやくPvPの舞台に立てるんだ。能力値やスキル関係を考えると上げないという選択肢はない)

 

それに人間種は、能力値が亜人種や異形種より劣っている。

 

が、人間種には明確な弱点が存在せず、種族lvがない分スキルを取得できる職業lvに回せるという人間種には人間種の優れた点があるのだ。

 

能力値よりスキルが強いとされているユグドラシルでは、人間種は能力値が低い分、手数の多さに関しては他の種よりも優れていると言えるだろう。

 

ただでさえ、能力値では絶対的に負けているのだから尚更。

 

いずれ対峙するかもしれないプレイヤーが、亜人種や異形種だと考えるとやはりスキルを多く保持するに越したことはない。自分と同じ人間種であれば、戦い方はまた別に考えなければならないが。

 

「後は武器と装備か……」

 

情報を集めたところ、どうやらこの世界ではユグドラシルでいう"聖遺物級"の装備が伝説の装備と言っても過言ではないレベルになっているらしい。

 

確かに上級や中級、初級と比べれば充分強力な装備だが、"伝説級"や"神器級"と比べると性能は大きく落ちる。

 

対プレイヤーを考えると、理想的なのは全身を"神器級"で固める事。だが、それはユグドラシルでも困難を極めるほどの製作難易度を誇る。

 

それほどの製作難易度を持つからこそ、その性能は群を抜いて高いのだ。

 

"聖遺物級"が伝説レベルと言われているこの世界では、まず"伝説級"や"神器級"を入手するのは……ほぼ絶望的だな。

 

上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)>で作り出した武装を装備するのも手だが、"伝説級"や"神器級"とはどうしても性能は落ちる上……今の職業lvが低いのもあり、硬度が低い。

 

(かといって、<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>で装備を全部揃えるのは……)

 

可能性があると言えば、<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>で、"神器級"の装備を手に入れる事か。だが、経験値一回分の消費で、装備全てを"神器級"で固められるとは到底思えない。装備箇所を考えると、最低でも十回分以上の消費を覚悟する必要がある。

 

(そもそも"神器級"の装備を入手できるかどうかも分からないんだよな……)

 

まだ試していない為、ハッキリしたことはまだ不明だった。

 

(ユグドラシルでは当たり前と言っても過言ではない時間対策も必要だしな)

 

時間対策装備も重要だ。もし、<時間停止(タイムストップ)>を食らってしまった日には一巻の終わりだ。

 

この世界にそのような装備があるのか……むしろあってほしい。

 

(当分は、<上位道具創造(クリエイト・グレーター・アイテム)>で作り出した武装を使うか。今は職業lvを上げることに専念する)

 

装備についての方針は、今のところそれで行くことにする。

 

――――話を戻すと。自分の年齢のことや、両親のことも考えると……経験値取得のために、戦闘を行うのは困難だ。また、スレイン法国の近くということもあり魔物といった類はとうの昔に一掃されており見かけると珍しいレベルだ。

 

転移魔法で、どこかの場所に移りそこで戦闘を行う方法もあるが……両親に隠し通す自信があまりない。

 

それから僕は、この問題点を何とかできないかを自分なりに研究した。

 

その結果……

 

「……よし、<類似記憶(シミラー・アムネジア)>」

 

ユグドラシルには存在しないと思われる魔法を独自で編み出すのに成功した。

 

そもそも魔法とは、イメージに強く依存するもの。ならば、自分なりのイメージを強く持てれば魔法も変化するのではないかという仮説を立てたわけだが、それは無事功を成したようだった。

 

類似記憶(シミラー・アムネジア)>は、<記憶操作(コントロール・アムネジア)>を参考にした魔法だ。

 

記憶操作(コントロール・アムネジア)>は、対象の記憶を閲覧・操作・消去ができる第十位階魔法。

 

記憶を操作できるのであれば、新たな記憶を作り上げて肉体の強化に繋げることが出来るのではないかと考えた。

 

例えば、自分より強いプレイヤーと激闘の末生き延びたという記憶を持つよう自分の記憶を操作する。そこで、記憶を経験へと化すようにすれば、そのまま肉体の強化に繋がる。

 

難しい話になったが、要するに“経験したことにして、肉体を強化する”魔法だ。

 

「うぐっ、ぁ、ぁああアアア!!?」

 

全身を焦がすような、痛みが身体中を襲う。まるで<破裂(エクスプロート)>を食らってしまったように身体中から血が吹き出す。今にもこの痛みから逃れたいあまり自害してしまいそうなほどの痛み。

 

類似記憶(シミラー・アムネジア)>は、自分で“経験したことにした戦闘”で負う傷が今この瞬間の僕へと集中する。

 

今この瞬間で身に持って感じる激痛を()()()()()()()()()()()、肉体を強化できる。

 

<精神自然作用抑制>が発動してなお、この激痛。もしこのスキルが無ければあまりにもの痛みに自害してしまうかもしれない。

 

魔法によって新たな記憶を作り出す際に、目の前の光景が早送りした映像のようにめぐるましく変わっていく。

 

……強さが自分より上のプレイヤーが、僕に向かって剣を振りかぶる光景。

 

己の思いつく限り、複数の攻撃手段を取りながら剣で応戦する。

 

戦闘を継続していく内に、身体に傷が付けられボロボロになっていく。

 

想像出来ないほどの力で、無慈悲とも言える攻撃を繰り出してくるプレイヤー。その誰かのプレイヤーが不意に口を開く。

 

『もういいんじゃないか』

 

……何が、もういいと言うんだ?

 

『他のプレイヤーなんて、ここに来ない。だからそんな必死に強くなろうとする必要なんかないって』

 

……なぜそう言い切れる? 自分というイレギュラーがあるというのに、なぜそう言い切れるんだッ!?

 

『人類の保護を謳うスレイン法国が近くにあるんだぜ? いざとなったらそっちに助けを求めればいいんだよ』

 

……スレイン法国? 助けを求める? 本気で言っているのか? 魔法でさえ第三位階魔法が最高峰と言われているこの世界だぞ? とても、他のプレイヤーに対抗できる力がスレイン法国にあるとは考えられない。

 

『考えられないから、なんだ? プレイヤーの対策なんてわざわざお前がする必要はないんだ。他の誰かに押し付ければいい。自分が楽さえすればそれでいいんだ。不安を感じる必要なんかないんだよ』

 

……不安。

 

『そう、不安。不安を抱く必要はないんだ』

 

……ああ、そうか。

 

いつ、どこで、どうなるかなんて分からないのがこの世界。自分を、大切な人たちを守りたいと言いながら僕は心構えが足りなかった。覚悟が足りなかった。

 

ああ、今になって気づいた。<類似記憶(シミラー・アムネジア)>でこの身体を以て初めて経験したからこそ。

 

いくらユグドラシルの記憶が戻ったとしても。僕にとっては、どこか遠くの所で起こっている出来事でしかなかったんだ。

 

……生憎様。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『は? 何言ってんだ、お前?』

 

……ああ、確かに僕は不安だ。他のプレイヤーに殺されないだろうか。この村のみんなが他のプレイヤーに言いようにされていないだろうか。それが不安で不安でどうしようも無い。

 

だからこそ、この不安とは向き合いたいんだ。

 

ただひたすらに向き合って、向き合ったその先に行きたい。

 

だから……だからッ、僕は強くなりたいッ!! 皆を守れるだけの力が、欲しいッ!!! プレイヤーに対抗出来うるだけの力を手に入れるッッ!!!

 

たとえ、痛みが走ろうとも。身体から血がぶちまけようとも、この想いは譲れない!!

 

──そう、思ったら。プツンと何かがストッパーが外れる音が聞こえた気がしたのだった。

 

「ぁああアアアアアア゛ア゛ア゛!!!!」

 

今の自分が抱えている想いをぶちまけるように、僕は絶叫しながら。目の前にいるプレイヤー目掛けて斬りかかった。

 

『……まったく。お前、カッコわりぃよ』

 

どこからかそう聞こえる柔らかい声は、これを最後にもう聞こえなくなっていた。

 

「ッ、ッ――――ひ、<大治癒(ヒール)>ッ!」

 

流れるような映像が終わると同時に急遽自身に<大治癒(ヒール)>をかける。

 

暖かな光が全身を包む。徐々に身体中から吹き出す血が収まっていきやがて元の身体に戻っていく。

 

「はぁ……はぁ……ッ」

 

身体が全快しても尚、精神的な負担までは回復しない。だからこそ訓練になるというわけだ。

 

自分から吹き出した血が地面を汚している。このままにしておくとまずいだろうから……

 

「<清潔(クリーン)>」

 

血で汚れた地面を消すよう、そう魔法を唱える。

 

……激痛が走った名残なのか、僕の身体は今も震えている。一層寒気すらしており、頭がぐわんぐわんと揺れつつある。紛れもなく本能が警鐘を鳴らしているのだ。

 

──だが、僕に時間は残されているか残されていないかどうかも分からない。

 

今すぐプレイヤ―が来るのかもしれない。来ないとしても、今から一年後か、五年後か、十年後か。

 

分からないという不安は、いつまで経っても消えない。だからこそ僕はその不安が的中するその時までに強くなる。

 

「……<類似記憶(シミラー・アムネジア)>」

 

ぐしゃり、と理性で、本能を握りつぶす。

 

僕はその訓練をただひたすらに繰り返していった。

 

それでこそ、MPが続く限り。この身体が持つ限り。僕の精神が耐えうる限り。なぜ貧欲に強さを求めるのか……ハッキリとした理由はない。ただ、自分のいるこの場所を。この村を。この村に住む人々を。出来るうる限り守りたいから。

 

だから僕はひたすらに訓練を繰り返すのみだ。

 




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