すみません、書きたいところを好き勝手に書いていたら本題に辿り着きませんでした!
『みつばちのささやき』うんぬんの話は次回に持ち越しです。
「オレもその映画見たい」とヤシオが言った。
「……今より熱が下がったら」とアオキは返した。
すると大人しく布団に潜り込む少年。
それを見てから階段を降りる。その途中でふと思った。
彼が自らなにかをしたいと言ったのは初めてではないか、と。
パルデアに来たのは姉の判断で、トレーナーとしての指導はアオキの提案で、家事や調理はヤシオ本人の希望だったが少し意味合いが違う。
これまでのそれらとは異なる、誰かのためとか誰かからの提案とかじゃない、ヤシオ本人がしたいことを口にした。そんな気がする。
そのことに気がついたアオキはリビングに戻ってから床に両膝をついて、擦り寄ってくるノココッチを抱きしめた。なんとなく、そういう気分だった。
昼食としてうどんを茹でた。
卵と味噌を入れてから、卵雑炊と似たような味付けになっていることに気がつく。今作った分はさっさと自分で食べて、ヤシオ用に別の味付けのものを作ろうかと思ったが、「いい匂いしたから」とヤシオがプクリンと手を繋ぎながら2階から降りてくるほうが早かった。
「……腹減ったんですか」
「だってうまそうな匂いしたんだもん。なに?」
「うどんです。朝と同じ味付けですが」
「そういうのが好きなんだ?」
「……いえ、そういうわけでは」
ふとリビングのほうから視線を感じて、そちらへ目を向けるとアオキの手持ちたちが温かい目でこちらを見ていた。その視線にアオキは反論したくなる。
別に朝にヤシオが褒めてくれたからまた同じものを作っちゃった、とかそういうことではない。
ただ単に味付けがワンパターンなだけだ。食う専の独り身三十路の男の料理スキルの問題なので誤解しないでほしい。
まあ多分、手持ちたちはアオキがそう思っていることを理解した上であの目をしているのだろうが。そうであってほしい。
ヤシオは「熱下がった」と言い張りながらテーブルに腰掛けた。
念のため彼の額に掌を当ててみる。まだ熱はあるが、朝よりはマシになっている気がする。
部屋で1人寝続けていろ、というのは若い彼には酷な気もして、無理しないことを条件に午後はリビングで映画を見てもいいと許可した。
「寝てただけなんで腹は減ってないかもしれんのですが、食えるだけ食ってください」
「ん、いただきます」
そうしてダイニングテーブルで向かい合った2人は味噌煮込みもどきうどんを昼飯として食べる。ヤシオはうまいと笑って完食した。
食後、イエッサンが着せた厚手のカーディガンを着て、プクリンが持ってきた毛布に包まって、ワッカネズミを頭に乗せたヤシオはソファの端に座っている。
毛布の中にはプクリンも潜り込んでいて、ヤシオは当たり前のように彼女を膝の上に置いて抱きしめている。彼らはくすくすと顔を寄せ合っては楽しげに笑って何かを話していた。
ダイニングで皿を洗っているアオキは、手伝いをしてくれるイエッサンになんとなく「ヤシオとプクリンは本当に仲が良いですね」と口にする。
するとイエッサンはアオキを見上げてから、ニコー!と笑うと「でしょー!」とばかりに腕をぶんぶん振った。
「んきゅ!きゅるる?」
「え?すみません、なんか質問されてます?」
「きゅるきゅきゅるきゅるるんきゅきゅんきゅきゅきゅんるるきゅるんるるきゅるるるきゅっきゅうんきゅるんきゅるる」
「何を言っているのかわからないですけどすごい早口……」
「きゅわっきゅわっきゅっきゅきゅるるんんんきゅるるきゅ〜〜?きゅきゅるんきゅるるんわんわうわんわんわんきゅんきゅん」
「ずっと喋る……」
イエッサンはニコニコしながらハイテンション身振り手振りで何かを伝えてくれる。多分、彼らの可愛いエピソードを語ってくれているんだなと思った。ちょっとアオキには何を言っているのかわからなかったが。
言っていることがアオキに伝わっていないと気がついたイエッサンが「じゃあ脳に直で送る?」というジェスチャーをしたので流石に断った。エスパータイプはそういうところがある。
しかしこれがO・SHI・KA・TSUか……。
軽い気持ちで話題を振って申し訳なかった、とアオキは反省する。
──さて、これは余談だが、イエッサンはヤシオとプクリンのにっぴきコンビのガチ勢だった。
彼女はイエッサンという種族特有の世話焼き属性が強めな上、妙に薄幸オーラのある少年と彼の守護神をしているプクリンの関係性に脳を焼かれて、自ら手持ちになることを志願したタイプの
本人は「CPの可能性を考慮しつつも現状はコンビとしての関係性に美しさを見出している。未来は無限大であり、どうであれ2人のより良い未来を心から祈っている。それはそれとして間に入ってこようとする輩は私がこの手で息の根を止める」と玄人の顔で供述している。
閑話休題。
アオキはイエッサンに握手を求められたが、自分はまだその格には至っていないので丁重にお断りした。
が、無理やり握手させられた。強制的になかよしにされる。イエッサンが生まれながらに覚えている『なかよくする』という技の真髄を見た。
……これ、プクリンとヤシオが仲良くしているところに割って入った生命体をブチ殺す同盟ではないですよね?
アオキは怖くなったので話を変える意味も込めて、リビングのヤシオへ声をかける。
「……ヤシオ、アイス食べますか」
「え、なんで?デザート?」
「なぜと言われても……風邪引いた時ってアイスじゃないですか?」
「なにそれ、しらん……パルデアルール?」
「……やめておきますか」
「んーん、食べる」
前に買った業務用アイスを器に入れてスプーンと共に手渡す。そうすれば素直に喜ぶ子供の姿になんとなくホッとした。
……本来は大人の自分がこうやって食事とかの世話をしないといけないんだよなあ……と反省する。
ヤシオはアイスを数口食べると、羨ましそうな顔をするプクリンに顔を寄せた。
「プゥ……」
「プクリンもアイス食べてえの?」
「プリ!」
「ん、あーん」
「プー……」
「あむ」
「プリ!プリリィ!」
「あはは!ごめんって、ほら!」
「……ムー?」
「今度は嘘じゃねえって、な?ほら、あーん」
「……プー……リ!プリリ!」
「うまいなー?」
「プリー!」
ヤシオがあーんしてあげるふりをして、プクリンが食べようとした瞬間にスプーンを引っ込めて自分がアイスを食べてしまう……けれどその後に怒ったプクリンを宥めつつ今度こそ本当にあーんしてあげている……というじゃれあいをしている。
それを見ていたアオキの視界の端で、イエッサンが笑顔のまま静かに自身の心臓を押さえているのが見えた。
それからアオキの脚をぺしぺし叩いて「これ、これだよ、これ……」と表情でアピールしてくる。彼女はこういうのが好きらしい。
ところがイエッサンは、アイスに気がついて自分たちも食べたいとヤシオの肩にワッカネズミが降りてきたのを確認した瞬間、真顔で素早く移動し、ワッカネズミを確保、2匹へ自分が持っていたアイスを与える。
ふぅ、間に合った……みたいな顔をしているイエッサンにアオキは気がついた。
……イエッサンがよくワッカネズミの世話をしているから、両者は仲がいいのかと思っていたがそれは違う。
これはただ単にイエッサンが、手持ち仲間でさえもプクリンとヤシオの間に入れたくないくらい強火ガチ勢なだけだ。
え?自分はこのイエッサンに同志認定されてしまったんですか?
もしうっかり自分がプクリンとヤシオの邪魔をしたらどうなるんですか?
背後から銃を突きつけられている気持ちになりながらも、ヤシオの「アオキさん、映画始まんぞ」という声を無視することもできず、若干居心地の悪い気持ちになりながらアオキは彼の隣に腰掛けた。
◇更新とかについてのおしらせ
話のストックが溜まってない+私生活で舞踏会(暗喩)に出なくてはならなくなった+ソシャゲのバレンタインイベントに毎年命をかけている、という理由から2/14くらいまで更新が多分出来なくなります。
今までほぼ毎日更新してたのは頑張ってたからじゃなくて、溢れ出る創作へのパッションを早く外に出さないとしんどいからでした。気持ち悪いから早くゲロ吐きたい、と同じ感じです。更新できない期間はゲロ我慢大会時期ですね。
あとストックがめちゃ減ったため執筆優先にして、後でコメント返信しようと思ってたらもう何もかもが間に合わなくなってました。
今回の更新分のコメントから返信再開させてください。
それまでにもらったコメントはスルーする形になっちゃって申し訳ないんですが、ちゃんと読んでます!ありがとうございます!