チャンプルジムリーダー見習い(仮)   作:ホネホネ

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反省点と関連性

 

「ガアァッッ!普通に負けたァ!!」

 

芝生の上にひっくり返ってバタバタと暴れるヤシオは全力で悔しそうだった。

……元気だな、とアオキは年若い少年を眺める。

 

結論から言うと、アオキが勝った。

過程はともかく初めからヤシオをボコボコにして勝つつもりで戦っていたのだからまあ当然の結果だ。

 

アオキは転がるヤシオのそばに歩み寄ると、そのまま芝生の上に胡座をかいて座り込んだ。

 

「では、反省会にしましょうか」

「ダァッッ!オネシャス!」

「素直…………」

 

「反省会」という言葉に跳ねるように起き上がったヤシオは素直にアオキの前に座って向き合う。向上心はしっかりとあるらしい。

2人向き合いながら、今の試合を振り返る。

 

 

──プクリンを倒されたヤシオが2体目に出したのはメスのイエッサンだった。

 

やはり可愛らしいポケモンを仲間にしているのだなと思いつつ、仮にもジムリーダーとしてノーマルタイプのエキスパートを名乗っているアオキとしてはその時点でなんとなく察しがついていた。

 

ヤシオが完全に下手を打ったであろうことに。

 

ボールから出てきたイエッサンが柔らかながら油断のない物腰で軽く一礼をすると、その特性によりサイコフィールドが広がった。

それから素早くリフレクターを貼って防御を固めつつ、ムクホークの動きを制限する。

そのまま距離を保ちつつ、タイプ一致とサイコフィールドによって強化されたサイコキネシスでムクホークへの攻撃を繰り出し続けた。

 

とはいえ、元よりスピードとパワーのあるムクホークだ。

繰り出される攻撃を避けつつ、ヒットアンドアウェイを繰り返すことでやがてイエッサンはダウン。

 

……というわけで、アオキの勝利である。

 

「自分の敗因はわかっていますか?」

「……プクリンを引かせるタイミング」

「その通りです」

 

ヤシオのイエッサンは完全にサポート型だった。

相手が物理特化ならリフレクターを、特殊特化なら光の壁を張って状況を整える。これは普通ならば先発のポケモンの役割である。

 

先に場を整えてからエースに暴れさせる。

そうするのが王道だが、あえてしていないということはそれこそが戦略の一部だったのだろう。

アオキは口を開いた。

 

「……間違っていたら指摘してください。自分が考察するに、ヤシオの本来の戦略としては先鋒のプクリンに散々暴れさせて瀕死になる前に一旦引かせ、次にイエッサンを出してリフレクターを張って場を整える。遠距離攻撃で削りつつ、壁の効果が消える前に「癒やしの願い」でプクリンを完全復活させて有利な状況にした上で相手に実質3対2の状況を押し付ける……そういう想定だったのではないですか」

「全部バレてんじゃねえか!そうだよ!」

「2体目にサポート型のイエッサンが出てきた時に流石に察しました……一応ノーマルタイプの専門なので……」

 

頭を抱えて呻くヤシオにアオキは追撃する。

 

「ネッコアラを倒した時点で一度プクリンを引かせていればよかったものを……調子づいてこのままいけると思ったんですね……」

「う、ぐぐぐ………」

 

図星だったらしく何も言えなくなるヤシオに、アオキも思わず肩を下げて小さく笑みをこぼす。

若さゆえの慢心には少なからず身に覚えがある。あまりにも懐かしく青い。眩しいくらいに。

 

「とはいえ結果はともかくきちんと練られた戦術は良いかと。ハイパーボイスも不意を突かれましたし」

「だろ?まあ、オレらもあの場であんな上手く決まると思ってなかったけどよ」

 

褒めると素直に嬉しがる。

 

「プクリンとの連携は良かったです。だからこそ、ヤシオの指示が冗長過ぎるのが目立ちます」

「……じょーちょーって何?」

「ダラダラ無駄に長い、という意味です」

「言い方ッ!」

 

弱点を指摘されると少しムッとする。

 

「あくびを打たれた時も、2体目を相手取る時も、プクリンはあなたの意図をちゃんと察しています。試合中にあくびなんかに流されないし、2体目が来たら自分から先手を打って主導権を握る、それくらいのことはわかっているでしょう」

「いちいち言わなくても伝わってるっつーこと?」

 

キョトンと小首を傾げるヤシオに、アオキはなんだかんだ案外素直にアドバイスを受け止めるものだな、と思った。

 

「時と場合によります。でもハイパーボイスの時はあなたがタイミングを取ってやるだけで上手くいっていました。細かい指示はなくともプクリンに伝わっている。そうでしょう?」

 

芝生に座り込むヤシオの隣で、回復させたプクリンが少年にくっついてニコニコと笑っていて、イエッサンは遠慮することなく彼の腿を枕にして寝ている。ヤシオもまた寄ってきた2匹の頭を慣れた手つきで撫でていた。

反抗期の彼と一緒になってガラル中を回っていたのだというのだからこの3人の信頼は強いだろう。

 

だからこそ、指示は端的でいい。

バトル外でしっかりコミュニケーションを取っていれば、それはきちんとバトルの中でも生かされるのだから。

 

「あとは単純にあなたのメンタルの問題です。相手がどんな行動をしても動揺しないこと」

「でもさあ、それムリじゃねえ?だって想定外なことされたらビビるじゃん」

「バトルの相手はあなたではないので、相手が想定外のことをしてくるのはむしろ想定内だと考えましょう。というか、ネッコアラが距離詰めてきたくらいでビビってたらどうするんですか」

「ムギギ、だってマジシャ打ってんのに無理やり距離詰めてきたヤツ初めてだったんだもん……」

 

指摘されたところは彼としても図星なのだろう。もごもごと言い訳をしながらも反省した様子を見せる。

そんな様子にフォローするように付け加えた。

 

「ビビってもいいですが、それを表に出さないようにしてください。自分のポケモンにも動揺は伝播しますし、相手トレーナーにも付け入られるだけなので」

「理屈はわかるけどよ……。じゃあアンタはビビった時どうやって顔に出さないようにしてんの?」

「特別何かをしていたりはしないですね……あまり顔に出ないと言われるので……」

「なんだよ、参考になんねえなあ……」

「敢えて口に出すのもいいかもしれませんね。「ああ追い詰められた。でも意外と気持ちの余裕はあるな」とか」

「あー、わざと声に出して気持ちを切り替えるってわけか」

「そうですね。それから……」

 

と、アオキはさらに言葉を続けようとして、ふと自分がヤシオへの指導に微かに熱が入っていることに気がついた。

 

打てば響くようにヤシオが反応してくれるということもあるだろうが、それにしたって熱心なジムチャレンジャー相手にだってここまで話をしたことはない。

 

……何故だろう、と自問自答する。

 

別に彼とこんな話をしなくたっていい。

バトルが終わったのだから、それで終わり。放っておいたっていい。

彼が強くなろうがなるまいが、バトルをしようがしまいが、アオキの人生には一切関係がない。

 

けれど、楽しかった。

実力が拮抗した相手とするギリギリのバトルとはまた別の、どこか導くような、同じ方向を向いて歩くような、そんな楽しさ。

 

今だって思っているのだ。

彼が今よりもっと強くなったらどうなるのだろうか、と。

 

……なんか、思考がオッサンくさいなとは自分でも思うが。

 

「アオキさん?……アオキさーん?」

「……これが、年齢……」

「は?」

「あ、いえ、なんでもないです」

「じゃあなんだよ……」

「…………」

「…………」

「…………」

「また動かなくなったよ、このオッサン……」

 

顎に手を当てて考えながらアオキは思った。

 

……多分彼はもっと強くなれるだろう。

彼も彼のポケモンも戦略もパーティ構成の面でも。

何よりも彼本人に強くなりたいという意志を感じる。

それに、複合タイプとはいえノーマルポケモンばかりを連れているところに親近感もあった。

 

とまで考えたその瞬間、アオキはハッとする。

 

「ヤシオ」

「お、おお、なんだよ……再起動繰り返すのやめろよな、怖えから……」

 

長考して固まっていた相手から不意打ちで名前を呼ばれて肩を跳ねさせるヤシオ。

その反応を気にすることなく、アオキは少年へ問いかけた。

 

「ノーマルタイプの専門トレーナーになる気はありませんか?」

 

 






前回からバトル描写がありますが、筆者は非対戦勢です……
実際の対戦環境の事を考えてはいけない……
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