陰の実力者(笑)の相棒にさせられて   作:嫉妬憤怒強欲

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最近仕事が忙しいうえにスランプ気味な時、シャドウガーデンの味方側ではない可能性の話がふと浮かびました。


番外編
もしも、ホワイトルームの最高傑作がディアボロス・チルドレンになったら……?


 一度死んだ時の記憶は今でも鮮明に覚えている。

 ホワイトルームから抜け出して懐中電灯を片手に夜道を歩いていると、突然草むらから現れた全裸の男が「魔力!魔力!魔力!魔力魔力魔力魔力魔力!!!!」と叫びながらオレを追いかけてきた。当然オレは逃げたのだが、その変態は思いの外素早く追いつかれ、背中から悪質タックルを決められて車道に飛び出した。

 

──そこにトラック襲来。

 

 けたたましいブレーキ音と同時に衝撃が身体を貫いた。

 

 あれで死んだのは確実だ。

 

 オレを殺したあの変態は絶対許さん。

 

 森の中で騎士に保護された後、赤ん坊だったオレは教会に預けられた。

 オレを拾った騎士は田舎貴族の領主のようで、最初は使用人の1人として育て上げようという話があったがそこまでするほど余裕がなく、ちゃんとした児童保護施設で他の子供たちと過ごした方がオレの為になるだろうと思っての行動だったのだろう。

 

 だが現実は残酷なものだった。

 しばらくして笑顔を顔に貼り付かせた数人の男がやって来て、施設の子供達に何かの適正検査を受けさせた。その検査で陽性だったオレは何人かの子供と共に男たちに連れられ、別の施設に移された。

 そこでは最低限の質素な食事しか与えられず、予防接種と言いながら怪しげな薬を投与されたり、明らかに洗脳教育に近いものを受けさせられ、ある程度成長すると剣での戦闘訓練を受けさせられた。

 拒否した子供は鞭を打たれ、殴られ、蹴られ、拳で叩かれ、なぶり殺しにされる。逆らった時の見せしめとしてそれを他の子供に見せつけ、より訓練に打ち込むように促す。

 ある程度技量を身に付けたら、凶暴な怪物…魔獣というものと、共に訓練を受けた者同士と殺し合わされた。

 時間が経つにつれ、一人、また一人と脱落していき、十年くらい後に訓練を終えて施設から卒業した時には最初にいた時の一割しかいなかった。

 と言っても、その殆どが心が壊れて物言わぬ人形に成り果てており、精神の安定している者はごく少数なわけで、卒業後はそれぞれ異なる場所に配属されることに。

 

 洗脳教育の過程で分かったことだが、どうやらオレ達はディアボロス教団という大昔から世界を陰で支配する組織に買われ、無理矢理その教団の戦闘員”ディアボロス・チルドレン”にさせられたようだ。

 訓練で死人が出たり心が壊れるのは当たり前のことで、出来損ないの使い捨てを3rd、精神の安定化を図れた者を2nd、実を結んだ成功例を1stと分類している。

 教団に貢献すれば地位や名誉が約束されると言っていたが、明らかに胡散臭いうえにオレは興味がなかったため、2ndの中でも下の中くらいに分類されるまで手を抜いた。

 

 

「ちっ、こいつももう使えないな。おい新入り、このゴミを外に捨てろ」

「……はい」

 

 辺境にある教団の地下施設に配属されたオレは、警備という名の雑用をさせられた。

 雑用の主な内容は施設内の掃除や他の見張りの武器の手入れ、施設にある研究室の実験に使う機材や物質の荷運び、そして実験で使い物にならなくなった検体の処分だ。

 

「それ捨てたら実験室を清潔にしておけ。明日には補充の分が届くからな」

「わかりました」

 

 実験室といっても、中世ヨーロッパ時代のと同じ石造りで清潔性を保ていないが。

 オレは従順に振る舞いながら検体を袋に詰め、施設の外まで担いでいった。

 

 森に入り施設から目の届かない距離まで離れたのと周囲を確認して、下ろした袋から中身を取り出す。

 

 検体は腐った肉塊だ。

 はじめは普通の人間として産まれるが、ある日を境に肉体が腐り出し激痛に襲われる。進行が広まり原形をとどめずにやがて崩壊して死に至る。奇妙なことに発症するのは女性ばかりで、治療方はないとのこと。まるで悪魔に取り憑かれたかのような症状から、『悪魔憑き』と呼ばれている。

 

 そんな奇病に犯された彼女たちを教団は教会を経由して生きたまま買い取り、ここみたいな施設で密かに実験動物として利用している。

 腐敗の進行具合を観察したり、変な薬を打ち込んでからの反応を記録したり、サンプルとして血液を大量に抜き取ったりと色々だ。

 そして死にかけて使い物になら無くなれば、廃棄処分としてゴミのように捨てられる。

 

 大抵は人目につかないように深く掘った穴に埋めるかするだろうが、オレはそんなことはしなかった。

 

「ガ……ぁ……」

「今楽にしてやる」

 

 オレは瀕死状態に肉塊に触れ、この世界に転生してから得た力を流し込む。

 

 魔力。

 ファンタジー小説で定番の力だ。地球でなら空想の産物と笑うものだろうが、この世界ではそれが周囲に満ちていた。

 生物の身体から溢れ出す生命力、つまり体に元から流れているエネルギーを「原油」とするなら、そこから精製される「ガソリン」を魔力と呼んでいる。

 その魔力を知覚し、使いこなして身体や武器を強化して戦う者たちを人は「魔剣士」と呼称していた。そしてオレはその適正があったがために教団に買われたのだ。

 ただ、その魔力の使い方に関する説明がどうも雑だった。

 魔力を、全身に纏わせて、剣を振るう。ただそれだけ。

 陰で世界を支配していると豪語している連中に詳しい説明を求めても同じ単語しか返ってこなかったときは正直呆れるしかなかった。

 

 仕方なく、魔力の細かな操作については独学で学ぶことにした。

 

 以前施設にいた時に一度だけ体内の魔力の波長が乱れて全身に激痛が奔ったことがあり、その時は魔力を制御することでなんとか持ち直した。

 ただ、施設を出た後に気付いたことだが、その時の波長の乱れの感じが『悪魔憑き』の少女達のとよく似ていた。

 人目を盗んで何度も検体たちの様子を確認して確信した。

 『悪魔憑き』の原因は体内に蓄積されている魔力の暴走によるものであり、治療法は確かに存在すると。

 一度暴走を経験したのなら二度目、三度目もあるかもしれない。発症してるのは女性ばかりだが、自分がそうならないという確率はゼロではない。もしなれば実験台行きだ。冗談じゃない。

 

 以上の理由から、オレは仕事の合間に密かに魔力制御の鍛錬を行っている。

 一番効果的な方法として、用済みとなった悪魔憑きの少女達にこうして魔力を流し込んでいる。

 自分の身体を弄らない分他人の魔力を制御するのは難しいもので、対象の元々の波長を手探りで特定して調整しなければならない。

 イメージとしては濁流のように不安定だった流れを清らかなものへと変え、意のままに操作するのではなく、その魔力にとってもっとも自然な流れへと導いていくものだ。

 

 今回で6回目。

 最初はかなり難しかったが、3回目以降に感覚を掴んでいき思いのほか上手くいった。

 

「う、うぅっ………」

「今回は獣人か」

 

 しばらくして腐った肉塊は人の姿……ネコ科の獣特有の耳と尻尾を生やした獣人の少女へと姿を変えた。様々な実験で瀕死状態ではあったが、オレの魔力を流したことによる肉体活性で息を吹き返している。

 

「えっ、噓……治ってる!?」

「驚いているところ悪いが時間がない」

「わぷっ!?」

 

 一糸まとわぬ姿になっている彼女に用意しておいた服代わりのローブを被せる。

 

「少ないが水と食料、金をいくらか渡しておく。見つからないようにここからできるだけ遠くへ逃げろ」

「え?え?」

「それと一応言っておくが、悪魔憑きにかかっていたことは誰にも言わないのがお前の身のためだ。それじゃあな」

「えっ、ちょっ、ちょっと!?」

 

 傍においておくのはリスクが高すぎる。バレればオレは裏切り者として処分、彼女の方は捕まって最悪また実験動物にされる。今度こそ死ぬことは彼女もわかっているだろう。

 証拠隠滅に始末するという手もあったが、それは取らないことにした、

 

 練習のためとはいえ、結果的に死の淵から復活させた相手を都合が悪いからとそこで即刻切り捨てるのはもったいないと感じたから。

 だから二度目の人生を生きるチャンスを与えた。そこから先は本人次第。

 呼び止める声が聞こえたが無視して通った道を戻る。

 

 

 

「…どういうことだ?」

 

 施設の入り口にたどり着くと、見張りが血を流して地面に転がっていた。

 傷跡から剣で真正面から一撃、抵抗した痕がなく即死だったのだろう。

 死んでからそんなに時間が経っていない。

 

 

 息を潜めて中に入ると、慌ただしい足音と剣劇音、断末魔の悲鳴が施設内に木霊していた。

 

――――侵入者だ!

 

――――たかが二人だ!殺せ!

 

――――ぎゃあああ!

 

――――こ、こいつら強い――がはぁ!?

 

――――ま、まずい。応援を呼べ!

 

 魔力感知を使うと、知らない波長をしている大きな魔力が4つ確認した。

 二人組に分かれ、片方はホールで教団員の複数の魔力を消していっていき、もう片方は遭遇しないように避けながら検体が収容されてる区画に向かってる。ホールの方は陽動で収容区画に向かってる方が本命か。

 狙いは悪魔憑きの確保か?

 

 なんのために?検体の取り合い?いやたった4人でここまでのことをするのは効率が悪すぎる。助け出したとしても、治療法を知っていないとそのまま朽ちて死んでしまうだけ。

  

 

―――まさか

 

 

 ホールを避けて収容区画がある方へと向かう。しばらく走って向かうと、何人かの施設の教団員達が死体となって道端に転がっていた。総て一太刀。かなりの手練れだな。

 

「―――あら、まだ敵がいたようね」

 

 声がする方へ目を向けると、黒いボディスーツに身を包んだ二人組がいた。身体の膨らみから見て、いずれも小柄な少女。尖った耳からしてどちらもエルフか。

 

「お前たちが例の侵入者か。何者だ?」

 

 オレの質問に、金髪を腰まで伸ばした方のエルフの少女が前に出て答えた。

 

 

 

 

 

「――――我等はシャドウガーデン。陰に潜み、陰を狩る者。お前たちディアボロス教団を殲滅する者だ」

 




続く…?

時系列ではマスターオブガーデン七陰列伝第1部1章あたりですね。
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