陰の実力者(笑)の相棒にさせられて   作:嫉妬憤怒強欲

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アニメ2期制作決定!
でも展開があまり駆け足過ぎるとすぐに原作に追いついてしまいそうですね。
七陰列伝とかアニメ化しないかな。


エンガチョしたい

 ミツゴシ商会でアイリスの趣味を口止めされたり、クレアがシドの(アレクシアによる)傷を見てゼノンの息のかかった騎士団の残党をぶちのめしに行ったりと慌ただしい日常が過ぎ、初夏の季節に入った頃のこと。

 

「んで、アレクシア王女とはどうなったのよ?」

「どうなったんですか?」

 

 午後の実技科目の最中、オレの前でヒョロとジャガがシドに話しかけた。

 

「だから別れてそれっきりだって」

「チューもしてないんか?チューも?」

「ないない」

「「はぁ……もったいない」」

 

 素振りしながらしょうもない話が続く。

 

「ったく、仕方ねぇな。俺がいい店紹介してやるから元気出せよ」

「い、いい店ですか!?」

 

 鼻息荒くジャガが言う。

 

「そっちの店じゃねぇよ。最近話題のミツゴシ商会だ。何でも見たことない商品を扱ってるらしくて、中でもチョコレートだかって菓子が甘くてクソ旨いらしいんだ」

 

 それオレがこの前行ってガンマから貰ったな。

 

「甘いお菓子ですか、いいですねぇ」

「バッカ、自分で食ってどうすんだよ。女にプレゼントするんだよ。女なんて甘いもんやっとけばちょろいもんさ」

 

 相変わらず欲望に忠実だな。

 

「なるほど。さすがヒョロ君です、勉強になりますねぇ」

「だろだろ、放課後行こうぜ」

 

 またあそこに行くことになったな。この流れだとシドがガンマ達と再会することになるか。『陰の叡智』とやらでかなり儲けていることを知ったらシドは面食らうだろうな。

 

 放課後四人でミツゴシ商会に行くことが決まったところで、ジャガがあっと何かを思い出したかのように話題を変えた。

 

「そういえばそろそろ武神祭の季節ですねぇ。三人はもう選抜大会にエントリーしましたか?」

「あたり前だろ?大会でアピールすれば女子の2人や3人簡単に持ち帰れるんだぜ」

「むふふ、3人相手はちょっと大変ですねぇ」

 

 動機が不純だな。

 ジャガが言う武神祭とは、2年に1度行われる剣術大会のことである。ミドガル王国内だけでなく、各国から凄腕の剣士たちが集まる大きなイベント。この大会に優勝したものは地位や名誉だけでなく、富も名声も全てが手に入ると言っても過言ではない。ただの平民がいきなり貴族位を得られたりすることもあるそうだ。基本的に参加資格は誰にでもあるのだが、魔剣士学園の生徒はその限りではない。あらかじめ学園で行われる選抜大会で準決勝まで勝ち進んでおく必要があるのだ。

 

「シド、ヴァイス、お前らエントリーしてなかったよな?」

「ん?そうだけど……」

「ああ」

 

 当然オレもシドもそんなものに出場して注目を集めるつもりなど全くない。 シドの方は単に平凡なモブを演じたいからだが。

 

「俺が代わりにエントリーしといてやったから感謝し、ブフゥッ!!?」

「あ、すまん」

 

 オレはヒョロがとんでもないことをしでかしたのを聞いて思わず素振り中に木剣を放してしまった。そしてそれが見事にオレの前にいたヒョロの後頭部に直撃した。

 悪意があったかどうかは否定しない。

 

「ヒ、ヒョロ君ッ!!大丈夫ですか!?」

「だめだ、完全に気絶してるな。保健室に運ぶから手を貸してくれ。あ、選抜大会のエントリーってキャンセルできたっけ?」

「さあ、どうでしたっけ。あ、ヒョロ君頭から血を流してますね」

 

 シドがヒョロを介抱しながらこっそりとオレにだけ見えるようにサムズアップした。お前に感謝されても嬉しくないんだが。誰かあの親指をへし折ってほしい。

 素振り中の事故でヒョロが怪我をしたということで、先生に許可を貰って保健室に運ぶ。

 

 その途中。

 

「あれは……」

 

 オレは校舎に入っていく物々しい集団に気づいた。

 その集団の先頭をアイリスとアレクシアが歩いている。ということはあれが『紅の騎士団』という奴か。

 集団を率いているアイリスと一瞬目が合い、オレは軽く会釈しておく。

 この前のことを他言してないか確認しに来たわけではなさそうだな。

 

「そういえば、アイリス王女からミドガル学術学園の方に何か調査の依頼をしているとか聞きましたね」

 

 相変わらずの情報通だなジャガは。

 この学園には魔剣士育成を専門とするミドガル魔剣士学園とは別に、学問と研究を専門とするミドガル学術学園が存在する。

 そっちに調査を依頼するということは、あっち関係の厄介事を持ち込んできたという事か。

 

 

♢♦♢

 

 夕方、授業が終わったオレとシドは学生課のところに行って選抜大会のキャンセルを頼みにいったが、残念ながらトーナメントの組み合わせが既に決まっていて無理だと言われた。

 ヒョロと対戦することになったらバレない程度に過剰攻撃(オーバーアタック)するとしよう。

 

 仕方ないと諦めたオレ達はヒョロとジャガに連れられミツゴシ商会に来ていた。

 

「うわぁ、すごいですねぇ」

 

 先週来た時と違い入口には長蛇の列ができている。並んでいる客も全て貴族かその関係者。一目でわかる上客ばかりだ。

 

「楽しみだね」

「珍しいなシド。お前が興味を持つなんて」

「まあね。この世界のチョコとやらも気になってるんだ」

 

 いや。この世界のチョコと言ってもお前の適当な説明からガンマが上手く再現しただけだからな。

 

「入店は八十分待ちでーす!」

 

 最後尾にはプラカードを持ったニューが立っていた。

 

「ど、どうします? 寮の門限にはギリギリ間に合いますけど……最近は辻斬りも出るって噂ですし」

「バーカ!ジャガバーカ!こっちには魔剣士が四人も居るんだぞ」

 

 多ければいいってものじゃないぞ。騎士団の方にも犠牲者が出たって話だからヒョロとジャガは確実に死ぬな。

 

「おーい、早く並ぼうぜ。門限過ぎちまうだろ」

 

 オレ達はヒョロに急かされて、列の最後尾に並んだ。

 

「お、お、お姉さん。き、綺麗ですね、ご、ご、ご趣味は?」

 

 早速プラカードを持つニューに声をかけるヒョロだったが、微笑みで軽く流される。ナンパの相手が変装と尋問(拷問)が専門の奴だと知ったらヒョロは絶対腰を抜かすな。

 オレはニューにアイコンタクトを取る。それを受け取ったニューはオレとシドに声を掛けた。

 

「あのー、すいません。そこの御二方、失礼ですが少しお時間よろしいでしょうか?」

「なにか用ですか?」

「はい、実はミツゴシ商店では現在学生を対象としたアンケートを実施しておりまして、少しだけお店の方で調査にご協力して貰えないでしょうか?」

「構いませんよ。行くぞ、シド」

「えっ? なんで僕?」

「良いから来い。ヒョロ、ジャガ。お前達は中に入っててくれ」

 

 困惑するシドの首根っこを掴み、笑顔で建物内へ案内してくるニューについていく。

 

「ぉ、お、俺も協力します!」

「じ、自分もです!」

「お二人様で結構ですので」

 

 ヒョロとジャガも引っ付いてこようとしていたが、ニューの怖い笑顔で黙らされていた。

 

「……どういうこと?」

「すぐに分かる」

 

 

 それからオレ達は以前使ったのは別の通路から屋上に向かい、一週間ぶりにガンマと会った(シドにとっては二年ぶりだが)。シドがあの広間の玉座にドカッと座って満足したり、ガンマが既に10億ゼニ―運用可能なほど儲けているのを知って動揺してる様を見た時は気分が少しスカッとした。

 門限も近いという事で、アンケートへの協力による報酬という体でチョコを四人分貰ってその場を退散した。

 

「急げって!」

「門限に間に合わなくなりますよっ!」

「分かってるって」

「結構ギリギリだな」

 

 すっかり日の落ちた時間帯、オレ達は寮に向かって走っていた。

 

「シド君とヴァイス君が悪いんですよ!アンケートで美人のお姉様とイチャコラしてっ!」

「してない」

「悪かったってチョコあげたじゃん」

 

 確かにオレ達が遅かったのも理由の一つだが、ヒョロとジャガがニューの事をしつこく聞いてきたせいもある。

 

「そういえばヴァイスはガンマのこと知ってたんだね」

「ああ」

「なんで教えてくれなかったのさ」

「興味ないと思ってな」

 

 陰の実力者を演じることしか頭にないこいつに教えてやる義務も義理もない。

 

「そんなに金が欲しいならまた王女の犬になったらどうなんだ?ポチ」

「その呼び方やめてって……あの人斬り性悪王女の相手はもう御免だよ」

 

 ちなみにガンマから辻斬りの話を聞いて、シドは辻斬りの犯人がアレクシアだと思い込んでいるようだ。馬鹿の発想は短絡的すぎる。

 

「まだ王女が通り魔だって決まったわけじゃないだろ。いつも思うがお前はその確認もせずに勝手に決めつける癖を――ん?」

 

 いい加減に治せと言いかけたところで、剣と剣がぶつかる音が聞こえた。シドも気付いたらしく、表情を切り替えている。

 

 遠くで、誰かが戦っている。 この魔力の波長パターンは………。

 

「ヴァイス、後は頼むよ」

「え?」

 

 シドは突然足を止めた。

 

「おい、どうしたシド!?」

「門限過ぎちゃいますよ!」

 

 少し遅れてヒョロとジャガが止まる。

 急に立ち止まったシドが路地裏を指差しながら二人に返した言葉は…………。

 

ウ○コ……してくる

「「!?!」」

 

 ………ええ。

 予想を上回るとんでもなく下品な発言にオレは思わず固まってしまった。

 

「限界なんだ………今すぐしないと、僕は走りながら垂れ流すことになる」

 

 馬鹿のあまりの演技力にすっかり騙されているヒョロとジャガは『マジかこいつ』という顔をした。

 

「そ、それはたしかに大事だな」

「門限か尊厳かの問題ですね」

 

 2人は真剣な顔になった。

 

「僕を置いて先に行け。誰にも見られたくないんだ……」

「で、でも!」

「ッ!分かった、お前が野グソして遅れたことは誰にも話さねぇ!」

「シド君の選択は、誰が何と言おうと正しかった……自分はそう思います!」

「もうもたないッ、早く……早く行ってくれッ!」

「シドッ……お前のことは忘れねぇ!」

「シド君ッ……たとえ野グソしてもずっと友達ですよ!」

「行け、行くんだああぁぁぁぁぁあ!!」

 

 2人は踵を返し、涙を流しながら走り出した。

 なんだこの茶番…………。会話の内容が文字通り糞過ぎる。

 

 シドが別行動を取った理由はこの路地裏の先で行われている戦闘に関してなのはわかる。

 わかるが、もっとマシな噓思いつかなかったのか。

 

 

 アレクシアの一件であの二人の口が軽いのは分かっている。明日にはシドが走りながらウ○コ垂れ流したという噂が流れるだろう。

 

 ここでオレがとるべき道は、馬鹿の噂にオレが加わってしまう前にここから離れることだ。

 

「じゃあな」

 

 オレはシドにそれだけ言い残して二人の後を追いかけたのだった。

 

 

 確か前世の日本における民俗風習のひとつに『えんがちょ』というのがあった。主に児童の遊びとして取り入れられた風習で、ある種の穢れの感染を防ぐために囃したてる子供による口遊びだ。

 

 オレにとってシド・カゲノーは穢れそのものかもしれない。これ以上長くいるとこっちまでとばっちりを受けるとなれば、あいつとは本気でえんがちょしたい………永遠に。

 




そういえばミリアは原作でクレア(15歳)が誘拐されたときには魔剣士学園に入学した後に悪魔憑きを発症してディアボロス教団に人質兼実験動物になっていたのを考えると、年齢はクレアより上になりますね。
おそらくアイリス様と歳は近いと思います。
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