陰の実力者(笑)の相棒にさせられて   作:嫉妬憤怒強欲

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私なりの四人の性格診断の結果……

ヒョロ・ガリ:お喋りのクズ
ジャガ・イモ:ストーカー気質のクズ
シド・カゲノー(シャドウ):末期の厨二病患者
ヴァイス・ネーベル(オリ主):サイコパス

……まともな奴がいない




プレゼント大作戦(成功率0)

 そこはかつていた白い部屋だった。

 白い机と、白い椅子と、そして白い簡素な服を着た多くの幼い子供たち。

 身寄りのない孤児、表には出せない隠し子など、皆訳ありでかき集められた者たちだ。

 

 ここではその訳ありの子供たちが教育を受けていた。

 あらゆる分野を担当する講師たちは表の世界で問題を起こした連中ばかりで、提示されるカリキュラムも普通の子供では耐えれそうもないものだった。

 

 行き過ぎた教育に音を上げて脱落するものが多く、無事に修了したとしても感情の欠如などの副作用が残る者が殆どだった。

 

 そんな異常な場所に生まれた時からいたオレは時が経つごとに次々と脱落していく子供達を見送った。

 

 一人オレに助けを求めるのがいたが、オレにはどうすることもできなかった。

 そして最後には白い空間にオレ以外誰もいなくなった。

 最後の1人になったとしてもオレがここから出ることは叶わない。生まれた時から生涯サンプルとしてここに留まることは決まっていた。

 

 オレは一人机の上にあるテスト用紙の解答欄に答えを書き込んでいく。

 すると机に影が出来る。誰かが内界に侵入してきたのだ。

 

「■■■」

「────」

 

 この窮屈な部屋で、オレの名前を呼ぶ者はたった一人だけ。

 だがオレは特に反応を返すことはしなかった。

 何故男がオレを呼んだのか、何を話そうとしているのか。その全てがどうでも良かったからだ。

 

「■■■、よく覚えておけ。『力』を持っていながらそれを使わないのは、愚か者のすることだ」

 

 

 

 

 

 

 ふと、目が覚めた。

 何故かと問われれば何となくと答えただろう。

 オレはベッドから身体を起こすことはせず、ゆっくりと目を開ける。

 

「やあ、お目覚めかいミスト?いや、今はヴァイスだったかな」

 

 オレはぱちくりと何度か瞬きしてから、声主を視認する。

 まだ日が昇っていなくて暗い部屋の中、一人のエルフ族の少女がいた。 

 若い娘だ。歳の頃は十代後半…オレとほぼ同じ年齢だろう。

 

 蒼銀の猫っ毛の髪を肩先まで伸ばし、前髪で左目を隠している。その相貌は非常に精緻で凛々しいが、満月の様な金の瞳を湛えた切れ長の半眼と口元に浮かべる薄い笑みから、どこか氷のような酷薄さを湛えている。

 透けるように白い肌をした華奢な身体を黒いマフラーとシャドウガーデン所有のスライムボディスーツで包み、ベッドに腰掛けながら流し目をオレに送ってくるそいつは――――

 

「……モニカか。いつ着いた?」

「だいたい夜中の1時くらいかな」

 

 モニカはミア同様ディアボロス教団フェンリル派のアジトの一つである教会で実験動物扱いされていた元悪魔憑きで、オレ直属の配下になった。二つ名は『大鴉(レイヴン)』。

 天才肌であらゆる技能に秀でるものの、やや不遜な自意識を抱えており、クールな態度を取ることが多く、オレや七陰を敬称をつけずに呼ぶ。

 

「というか何やってるんだ?」

「なにって、見ての通り暇つぶしにヴァイスの寝顔を眺めてたけど?」

 

 なに言ってんだこいつ。

 

「オレの寝顔を見てなにが面白いんだ?」

「面白かったよ。キミの寝顔、とても可愛かったし」

 

 見ていて飽きなかったと、ニヤニヤ笑うモニカは悪びれず言う。

 褒めているつもりなのかどうかは分からないが、可愛いと言われても正直男のオレとしては素直に喜べないな。

 

「それで、朝までまだ時間があるけど二度寝する?なんなら寝付くまでボクが添い寝してあげようか?」

「そういう冗談はいいから報告の方を聞きたい」

「………はぁ、君は真面目だね。からかい甲斐がないよ」

 

 ヒョロやジャガあたりなら即座にイエスと答えるだろうがオレは違う。

 

「それじゃあ簡単に言うよ。”先方との取引は成立、こっちの要求を全て吞む”だよ」

「そりゃあ良かった」

 

 オレはシャドウガーデンが今後ディアボロス教団対策で、より動き易くなるよう、モニカをある要人との交渉人として、ミドガル王国の同盟国である芸術の国『オリアナ王国』に派遣させていた。

 その交渉が上手くいった事はオレにとっても組織にとっても大きな前進だ。

 

「よくやった………後はこっちの問題をなんとかしないとな」

「ひょっとして例の通り魔のこと?」

 

 モニカもシャドウガーデンの名を騙る偽者のことを耳にしてるようだ。

 

「そういえばここに来る前に大通りで新入りのナンバーズがそれらしい奴の死体を吊るしてたよ」

「え?」

 

 新入りのナンバーズ?

 

「ひょっとして茶色の長い髪をした奴か?」

「そうそう。確かニューって名乗ってて、なんかキミの新しい連絡係とか抜かしてたけど……もしかして本当なの?」

「……あくまで一時的なものだ。それで、ニューは死体に他になにかしてなかったか?」

「うん。口で説明するより見てもらった方が早いか」

 

 モニカはどこからか一枚の写真を取り出してオレに見せた。

 写っている場所は王都の大通りで、凄惨な死体が吊されている。その死体の腹には血で文字が書かれていた。

 

『愚者の末路』

 

 死体の顔は苦痛と恐怖に歪んでいた。

 

「…………どう見ても見せしめだなこれは」

 

 尋問は任せるとは言ったがここまでしろとは言っていない。

 

 元悪魔憑きだからか、メンバーは私怨で過激になりがちなところがある。普段ならどう殺そうと問題ないが、今回は気を使ってほしかった。

 表の連中にはこの死体が通り魔本人とは知らないから、これを見てシャドウガーデンの仕業に見えてしまう。

 

「一応死体はボクが処分しておいたよ」

「悪い。助かった」

「良いってことよ」

 

 モニカが通りかかってくれたおかげで対処できたが、危うくこっちのプランに綻びが生じるところだった。今度本人を呼びつけて注意しておくか。あとガンマにも他の奴らに余計なことをしないように言っておく。

 

「ご苦労だったな。次の指示を出すまでゆっくりしておくといい」

「そう?じゃあお言葉に甘えるとするよ……………ところでずっと気になってることがあるんだけどさ」

 

 気になること?

 

「なんだ?」

「机に置いてあるチョコの箱…………あれ、一体何なの?」

 

 ああ、あれか。

 特に隠すこともないため、ヒョロ考案のプレゼント作戦について説明する。それを聞いてモニカは『馬鹿じゃないの?』と呆れていた。

 

「それで、キミは二箱もあげるの?一箱はもう開いてるみたいだけど」

「いや、開封されたやつはガンマから貰った」

「ふーん…あの七陰のドジっ子が?」

「なんでも商品とは別につくったのを味見して欲しいってことだ。きっと次の商品に向けて意見を聞きたいんだろ」

「……鈍感」

「ん?何か言ったか?」

「別に、なんでもないよ」

 

 そう言うが、何故かモニカはジト目でオレを見てくる。

 

「…まあいい、話が終わりならオレはもう寝る」

 

 シドの奴は修行のために魔力による超回復と瞑想を組み合わせた独自の睡眠法で睡眠時間を削っていたが、オレはできるだけ普通に眠っていたい。

 

「そう、じゃあゆっくりお休み」

「ああ、お休み」

 

 目を閉じて眠りにつくことにする。

 

 

………。

 

………………。

 

………………………。

 

………………………………。

 

「って、まだいるのか?」

「ん?ボクはもう少し休んだら出ていくけど、ひょっとして誰かいると眠れないタイプ?」

「いや」

 

………まあいいか。

 

 

♢♦♢

 

 

 早朝、蒸気機関車に乗車して学園に登校している最中、同じく乗車していた学園の生徒達がシドを見てヒソヒソと話し始めた。

 

『ほら、あいつが』

『走りながら○ンコ垂れ流した……』

『路上で見せつけたって聞いたぜ』

『えぇ~…』

 

 友情とは儚いものだな。

 予想通りヒョロとジャガはシドとの約束をあっさりと破った。

 

「よ、よう、昨日は災難だったな」

「お、おはようございます、昨日は大変でしたね」

「ああ、おはよう。今日の方がよっぽど試練の日になりそうだよ」

 

 引きつった笑顔の二人はシドにそう言われても目を泳がせるだけだ。

 悪い奴等ではないと思いたいが、間違いなくクズだ。

 

「と、ところで昨日のチョコは持ってきたか?」

「持ってきましたよ」

「一応持ってきたよ」

「同じく」

「よし、じゃあ昼休みにプレゼント大作戦だ」

「むふふ、楽しみですねぇ」

「……なあ、本当にやるのか?」

「たりめーだろ!なんだよヴァイス、今更怖気づいたのか?」

「いや、そもそもオレプレゼントする相手いないし、第一渡しても受け取ってくれる保証ないだろ」

「バーカ、だからこそ面白いんだろ。とにかく他人がこっぴどく振られる情けない姿を見れたらいいんだ俺は」

「……ゲスの極みだな」

 

 ヒョロがとんでもない本音をぶっちゃけた。

 まあいい。ヒョロとジャガ、シドは楽しそうだがオレは適当にやらせてもらうことにする。

 

 

 午前の授業が終わり昼休みに入った頃に作戦は開始された。

 まず手本を見せてやる、とヒョロが先陣を切り、二年生の女子に廊下でチョコを差し出すが、

 

「おい、俺の婚約者に何か用か?」

「あ、いや、その」

「ちょっと話聞かせてくれや」

「チョコは貰っとくわねー」

「えっ、あ……助けてッ!」

 

 どうやらその女子には筋骨隆々の婚約者がいたようで、ヒョロは肩を掴まれてどこかへ連行される。 チョコはプレゼントできたが自分が真っ先に情けない姿をしてるな。

 オレたちは助けを求めるヒョロの視線を無視して踵を返した。

 

「ダメだな。あれはどうしようもない」

「ヴァイス君の言う通りですね。行きましょう」

「だね」

 

 背後からヒョロの絶叫が聞こえてきたがオレ達は振り返らなかった。

 

 

 

 次鋒のジャガが向かった先は図書館だった。

 学園の図書館は学術学園と共同で、館内には相当な規模の蔵書が保存格納されているだけにスペースが広い。

 平日暇な時間大体図書館か寮で過ごしているオレ以外、魔剣士学園の生徒はほとんど利用していない。

 

「学術学園の生徒が相手か」

「はい。自分はヒョロ君と同じ轍は踏みません。相手のことは全て調査済みです。交友関係から好きな食べ物登下校時間に、歩幅に歩数。さらには寮の部屋番号、いつも利用するトイレにスカート丈!それから下着の色とスリーサイズまで調査済みです!」

 

 なにそれ怖いんだけど。

 殆どストーカーじゃん。流石のオレもジャガの行き過ぎた情報通にドン引きだ。

 

「このジャガ・イモの勝利をご覧あれ!」

「そうか、(豚箱行きになっても)頑張れよ」

「頑張ってね」

 

 オレとシドは意気揚々に駆け出したジャガにエールを送り、結果を見ることなく立ち去る 。

 

『マイ!フェア!!レディ~~!!』

『キャアアァァァァァ!! この人、ストーカーです!』

 

 すぐに背後から叫び声が聞こえてきた。

 

『え、あ、自分は……シド君!?ヴァイス君!?』

『ストーカーだと!』

『この芋顔が!』

『二人共ぉおおおお!』

 

 とばっちりを回避するため、オレ達は他人の振りをしておく。

 

 クズ2人が脱落し、二人になったところでオレは気になっていたことをシドに聞く。

 

「そういえばシド、お前そのチョコ誰にあげるんだ?」

「うーん……最初にすれ違った相手にでも渡してモブイベントは終わりかな」

「そんな適当な……一応それ高級チョコなんだぞ」

 

 いきなりこの変態に渡された女子が気の毒だ。

 

「というか王女かクレアに渡したらどうなんだ?」

「え~…あの性悪王女ともう関わりたくないよ。それに姉さんに渡したら後が面倒臭いし、この間だって――――」

 

「誰が面倒臭い姉ですって?」

 

 

「「ッ!?」」

 

 突如背後から聞き覚えのある声が聞こえてきた。思わず体を強張らせずにはいられない威圧的な声に、シドはまるで油の差してないブリキのおもちゃのような不自然にゆっくりとした動きで振り返った。

 オレも振り返る。そこにはシドの姉のクレアがいた。

 

「や、やあ姉さん……ど、どうしてここに?」 

「シドに関してまた変な噂を聞いたから確認を取りに来たのよ。教室にも食堂にもいなくてヴァイスがよくいる図書館に行ってみたら大当たりだったわ」

 

 なんでこのブラコンはオレがここを使ってることを知ってるんだよ。

 

「それよりシド、さっきお姉ちゃんのこと面倒臭いとかどうとか言ってたみたいだけどどういう意味なのかしら?」

「いや、その……えっと……」

 

 目を泳がせるシドが視線でオレに助けを求めるが無視する。

 

「シド――――ちょっと向こうでオハナシしましょうか?

「そ、それじゃあね!」

「あ、こら!待ちなさいシド!」

 

 全速力(モブっぽく)で駆け出すシドをクレアが追いかける。係員に『図書館で走るな!』と注意される前に二人は館内から出ていた。

 

 

 

 

「……せっかくだから何か借りていくか」

 

 馬鹿三人が消えたことで自由に動けるようになったオレは、昼休みが終わる前になにか面白そうなのがないかいくつものコーナーを巡っていく。

 考古学コーナーに辿り着くと、学術学園の制服を着た桃色の髪の女子生徒を見かけた。

 懸命に手を伸ばし、自分の背より高い本棚にある本を取ろうとしている。本の位置が絶妙で、届きそうで届かないようだ。あと僅かで届きそうだからこそステップ台を使うことに抵抗している。男でも女でも起こる、あるあるだな。

 

 掴もうとしている本は、以前オレも読んだことのある古代のアーティファクトに関する文献だった。

 オレは横入りし、女子生徒が手を伸ばしている本を手に取った。

 

「余計なことかもしれないが」

 

 その瞬間、見知らぬ女子生徒だと思っていた人物に見覚えがあったことを知る。

 

「お前、この前の……」

 

 お下げにしているが頭の上で一房の毛が跳ねてそれがトレードマークになっている小柄な可愛らしい顔つき……。

 シドが自業自得な理由でアレクシアに斬られ、代わりの服を取りに行こうとした時にぶつかった生徒だ。

 向こうはこちらの顔を見つめた後、同じようにオレのことを思い出したのだろう。

 

「あ、あの時の……」

「あの時は悪かったなこっちの不注意だった。とりあえずこれ」

 

 本を手渡す。

 

「あ、ありがとうございます」

「その本……アーティファクトに興味あるのか?」

「え?あ、はい。ちょっと調べ物がありまして……まだ始めたばかりで他の文献も見なきゃならないんですけど」

 

 前世での考古学と似たようなものか。論文で考察を書くにも文献調査で蔵書に記された事実が多ければ多いほど答えに近付ける。 

 この間も大量の本を抱えていたがあれも全部研究用だったんだろう。 

 

「……他にどんなのが必要だ?」

「はい?」

「ここの本はどれも分厚いからな。全部調べるにしても時間がかかる。最初に当たりを付けておけば調べる範囲が絞られるだろう」

「は、はぁ…確かに。あの、手伝ってくれるんですか?」

「単なる気まぐれだ。それで、その調べてるアーティファクトの特徴は?」

「え、えっと……古代文字で、それも暗号で書かれていました」

「古代文字となると約千年前くらいか。それなら……」

 

 棚に置かれていた中から該当する書物を取り出して渡す。 

 

「オレもこれを読んだからオススメする。暗号の方は自力でなんとかして欲しい」

「あ、ありがとうございます……あの、魔剣士学園の生徒ですよね?」

「ああ、ただし剣を振るよりも読書が好きな、だけどな」

 

 図書館に設置された時計に目を向けると、昼休みの終わりまで刻一刻と迫っていた。

 仕方ない。本はまた今度別の日に借りるか。

 

「じゃあ、オレはこれで」

「は、はい……」

 

 女子生徒に別れを告げて、図書館を後にする。

 

 結局チョコは誰にも渡さず、おやつに食べたのだった。

 




アニメでヒョロとジャガのあれはまじワロタ


オリキャラ紹介

モニカ
種族:エルフ
性別:女
一人称:ボク
所属:シャドウガーデン、ミスト親衛隊
二つ名:『大鴉』
外見:『スパイ教室』のモニカを参考。でも引っ込んでるところは引っ込んで、でるところはでて――プギャ!?
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