陰の実力者(笑)の相棒にさせられて   作:嫉妬憤怒強欲

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陰実では天才と凡人のワードが出てきて、試しによう実のを入れてみました。


無知な友人ほど危険なものはない―ラ・フォンテーヌ
転生


 寒い……。

 それが気が付いた時に感じた感想だ。

 

 意識が覚醒する前の記憶を辿る。

 ホワイトルームから抜け出して懐中電灯を片手に夜道を歩いていると、突然草むらから現れた全裸の男が「魔力!魔力!魔力!魔力魔力魔力魔力魔力!!!!」と叫びながらオレを追いかけてきた。当然オレは逃げたのだが、その変態は思いの外素早く追いつかれ、背中から悪質タックルを決められて車道に飛び出した。

 

──そこにトラック襲来。

 

 けたたましいブレーキ音と同時に衝撃が身体を貫いた。

 

 

 そこまでしか覚えていない。

 病院に運ばれたのかと考えたが、トラックの物量と速度を考えると生きている筈がない。

 色々と考えてみるが答えが出ない。

 体を動かそうとするが上手く動かない。

 目を開けようとするが、何故かそれも上手くいかない。

 これはいよいよマズイ状況だと思い声を出そうとするが

 

「あー」

 

 え?

 自分が出した声に驚く。

 まるで赤子の様な甲高い声。

 喋ろうとするが

 

「あうあうあー」

 

 舌が上手く動かず、喋るという行為が出来ない。

 

「あいあうおー」

 

 なんだこれ?

 そうして暫く喋ろうと試行錯誤していると足音がした。

 寒いと思ったのは雨が降っているらしく、聞こえてきた足音もピチャピチャという音を発していた。

 

「☆※◇◎□○△▽」

 

 助かったと思ったのも束の間だった。聞こえてきた言葉は全く理解出来なかったのだ。

 状況が飲み込めないまま周囲を見回して見ると、中世の鎧を着た若い男がこちらへやって来た。

 そして男はオレを温かい布に包みこみ、抱き上げる。

 

 その時、オレは自身の身体が赤ん坊サイズになっていることに気づいた。

 

 

 

♢♦♢

 

 転生という言葉がある。

 肉体が生物学的な死を迎えた後、魂は長い時を経て再び新しい肉体を持って現世に再生するという生まれ変わりの観念である。

 インドや古代ギリシアの単なる宗教概念にすぎないと思っていたが、どうやらオレはそれを体験したようだ。

 しかも元いた地球とは違い、エルフや獣人、魔獣といったものが存在するファンタジーの世界で。

 

 前世の最期は自由を掴もうとした代償にしてはあまりにも情けない死に方だった。

 

 その事に思うところが無いではないが、これであの男はオレをあそこへ連れ戻すことは完全にできなくなったのだ。そう考えると清々する。

 あの変態が死んだかは分からないが、オレがこうして転生している以上もしかしたらということもある。できれば会いたくないが

 

「……はぁ」

 

 一度死んだ時の事を思い出し、揺れる馬車の中で少し憂鬱になりかけたオレは読んでいた本を閉じる。

 

「どうしたヴァイス?溜息なんかついて、もしかして酔ったか?」

「いえ、大丈夫です義父さん」

 

 隣から話しかけてきた若々しい男は転生してすぐのオレを拾った人物で、名前はジャン・ネーベルという。下級貴族ネーベル男爵家の現当主であり、今のオレの養父である。

 あの雨の日、ジャンは領地の近くの森で発生した魔獣たちの討伐にあたったとき、人が乗っていた馬車が既に襲われた後だった。今世でのオレの実の両親と思しき人間の男女二人は魔獣達に無惨に喰われ、赤ん坊だったオレだけ奇跡的に魔獣に気付かれずに生き残ったようだ。

 そうしてオレを保護したジャンはオレを連れ帰り、そのまま養子に迎え入れてヴァイス・ネーベルという名前をオレに授けた。

 あれからもう9年くらい経つ。

 血も繋がっておらず、素性もわからないオレを、実の我が子のように育てたジャンと夫人アンナは前世のあれとは比べ物にならない程まともで良い人間だ。

 

「向こうに着いたら少し休憩して、それから剣の修行をするといい。魔剣士たるもの剣を振る時は常に無心であれというしな」

「…はい」

 

 ちなみにこの世界には魔力という力が存在する。

 この世界に生きる者の体内に宿っており、うまく制御すれば自身より重い岩を容易く持ち上げたり、馬の倍速で走れたり家より高く跳べたりと、基本的な身体能力の限界を軽く超えることが出来るのだ。

 ネーベル男爵家は魔剣士と呼ばれる魔力で身体を強化して戦う騎士を代々輩出する家系で、オレはこの家の一員として育っている。

 面倒ではあるが育ててくれている手前、ある程度腕を磨いていくしかない。

 

「ところで、今向かっているカゲノー男爵家にはどういう用件で?」 

「あれ?言ってなかったか?」

「なんの説明もないまま馬車に乗せられたので」

 

 ジャンは時々説明を省いてしまう時がある。その度に報連相がいかに大事か身をもって経験した。

 

「ああスマンスマン。実はカゲノー男爵家とうちの領地の間で商人たちが盗賊に襲われるようになったことを最近知ってな。両家でどう対応するか話し合うことになっているんだ」

「それオレ必要ないじゃないですか」

「そう言うな。向こうにはお前と同じくらいの歳の息子とその姉がいるんだ。友達をつくるいい機会かもしれんぞ?」

 

 つまり大人達で話し合っている間、その二人と友達になって遊んでいろということか。

 精神年齢は20代を越えているんだが…………。

 

 まあ、今は子供のため暇つぶし程度に適当に相手しておくか。

 

 

 

 このときそう考えていたオレは甘かった。

 

 

 カゲノー男爵家の屋敷に到着してすぐその姉弟に会った時思わず戦慄した。

 

 

 何故なら、

 

 

 弟の方はオレがこの世界に転生するきっかけをつくった変態によく似ていたからだ。





転生してクズ親から逃げることが叶ったが、変態からは逃げられないオリ主の設定

名前:ヴァイス・ネーベル(転生後)、清□綾■(転生前)
種族:人間
性別:男性
容姿:『ようこそ実力至上主義の教室へ』の綾小路清隆

ヴァイスはドイツ語で『白』、ネーベルは『霧』を意味します。
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